NAPPOS PRODUCE『かがみの孤城』半年ぶりの観劇

NAPPOS PRODUCE『かがみの孤城』半年ぶりの観劇

かがみの孤独

半年ぶりに劇場でお芝居を観てきました。
生の演劇は2月に参加したすゞひ企画の『9月31日の花嫁』ぶり、「劇場」で「演劇」になると1月に劇団レトルト内閣の『モダン・ガールはネコを探して』を観て以来と……自分で調べてみてちょっと怖くなってしまいました。

そんな久しぶりの観劇はNAPPOS PRODUCEの『かがみの孤独』、大好きな辻村深月さんの小説を、大好きなキャラメルボックスの成井豊さんが脚本・演出するという、私にとっては「はい、発表と同時にチケット買うやつ」だった訳ですが、久しぶりにサンケイホールブリーゼに行って、なんだかそれだけで幸せになっちゃいました。

間違いのない再現度の舞台化

中学校進学とともにいじめの対象になり学校に行くことができなくなったこころ。
ある日、自分の部屋にある鏡が白く光り、手を伸ばすとその手を捕まれたこころは鏡の中に引きずり込まれてしまう。
目の前には狼の面をかぶった少女「オオカミさま」、そしてそこはお城の中だった。

冒頭、原作とは異なりこころが中学に行かなくなった理由が、短いながらも強烈に演じられます。
その重さは小説同様で、同級生がこころの家の玄関を叩く音が場内に響くのが本当に怖い。
こころと同様に観ている側も心を重くして見守っていると、鏡が白く光り「オオカミさま」とそして他の6人との出会いへと一気に物語の世界へ引きずり込まれてしまいます。

キャラメルボックスの成井豊さんが演出していることもあって、それぞれのシーンの転換には暗転がなく、終盤になるとスピード感が増して2時間があっという間。

原作は550ページを超える長編作品。上演時間2時間でギュッと絞り込んでいるのに、削られている感がほとんどありません。
成井豊さんはとにかくそのチョイスがうまい。読書家で、何よりも多分その著者が描く世界を楽しむプロなんだろうなぁと感じます。この台詞をカットしたら、このシーンをカットしたら「あぁ」と思ってしまいそうな大切なシーンは必ずと言って良いほど丁寧に描かれています

辻村深月さんの作品は舞台化された『スロウハイツの神様』もそうですが、ラストの「うわぁ!」と叫んでしまいそうな、心に光の差し込む瞬間が本当に素敵です。
原作小説を読んでいなかったとしても、舞台を観ることでこの「うわぁ!」を最大限感じることができます。

いじめが理由で学校に行かなくなったこころを演じたのは生駒里奈さん。
自身の経験があるからと伝えることができることがあるというこころは、その心の動きが実に自然で痛々しさもありながら、意志の強さが感じられます。

孤城に招かれた7人を演じた他の6人もそれぞれが魅力的。

特に伝えたいのが、マサムネを演じた山本沙羅さん。
当初出演を予定していた木津つばささんがコロナ禍に巻き込まれて降板になり、東京公演の初日直前に代役としてマサムネを演じることになりました。男性から女性へのキャスト変更、しかも明らかにタイプが違う。
そうでありながら、舞台上のマサムネは堂々とゲーム好きでちょっとクセのある男子中学生を演じていました。

劇場の最前列は閉鎖されビニールシートが貼られている、2列目以降は1席おきの観劇、出演者はフェイスガードをしており、普段なら混み合うホールには人はまばら。
こんな観劇は最初で最後になればいい
それでも、半年ぶりの観劇は心から楽しめました。

「かつて中学生だった」自分は、中学生の私にこの物語をみせてあげたい、あのとき「頑張って、大人になって」と言ってもらえたら、あのとき何かが変わっただろうか
そういうことがないから、今の私がいる。小説をやまほど読んで、キャラメルボックスのお芝居を知って、辻村深月さんの作品に心を打ち抜かれたから今の私がいる。

あーーーーー、やっぱりいいなぁ。明日からも頑張ろう。

公演名 NAPPOS PRODUCE『かがみの孤城』
 公演期間 [東京]2020.8.28(金)~9.6(日)
[大阪]2020.9.18(金)~20(日)
[愛知]2020.9.22(火・祝)
 会場 [東京]サンシャイン劇場
[大阪]サンケイホールブリーゼ
[愛知]刈谷市総合文化センター

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があ

大阪生まれ・育ち・勤めの雑食系公務員。 福祉職だと勘違いしている人が大多数ですが下っ端事務職。濃い顔付きから沖縄人やらトルコ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ~

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