写真(パンフ)

彗星マジック「詩と再生」生きる、生きろ

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写真(パンフ)移転したin→dependent theatre 1stで初観劇、彗星マジック「詩と再生」。

言葉で変えられるものは……

元受刑者や被害者。こころに深い澱をもつ人たちが働く工場施設。
彼ら彼女らはコミュニケーションも自己表現もままならず、
感情の正体に名前もつけられないまま、まるで、
穏やかに追い詰められたような生活を送っていました。
育ってきた環境も常識も異なる彼ら彼女らに、
「先生」はひとつ提案をします。

「みんなで【詩】を書きませんか」

おびえるように拙く幼い【詩】を通しやがて見えてくる、彼ら彼女らの、再生を、再生する物語。

どこの国の、いつの時代かも分からないある鉱石の加工場。
ワケありの6人の工女を指導するため、班長待遇で「街」から一人の女性がやってくる。
その加工場で働く妹・志摩(上田あやみ)を案じ、皆の先生として。

自らを言葉で表現することを知らない彼女たちは、【詩】を紡ぎ出すことをきっかけに、緩やかに澱む生活を少しずつ変えていく。

乱暴な工場長と、自らの存在を自分たちで位置づけられていない工女たち、そこに登場する「先生」という異分子。
澱みが、急に流れだし、そして思わぬ方向に溢れてしまう物語です。

休憩10分ありの120分、圧力を感じるほどの重いストーリーを支えるのは、登場人物を演じる俳優さんたちの圧倒的な存在感

「先生」であり、物語の語り手である伊勢(福田恵)の膨大な言葉がマリンバの演奏のように響き続け、工場長・大隅(田米カツヒロ)の強欲な暴力は力ませに叩いたドラムのように強烈な不快感と物語における「現実」を否応なく思い知らされます。
6人の工女、そして加工工場に鉱石を運ぶ丹波(小谷地希)が抱える問題は、音が外れていたり大きすぎたり、小さすぎたりするようで、不用意に触れることを拒みます。

物語が進むにすれ工女がそれぞれ抱えるものの重さと、彼女たちが向かう先の不透明感に幸があらんことを願うばかり。
【詩】が彼女らにもたらしたもの、言葉が何かを変えられたのか、伊勢の部屋を訪れた「誰か」のシルエットの先にある物語に心がとらわれたまま終幕となります。

あー、なかなかキツい物語、でも「すげーな、おい」という物語でした。

前回公演「ポストグラフ」が本当にいい作品だったので、期待して観に行ったのですが、期待以上の作品でした。
登場人物のそれぞれが舞台上で正に「生きている」、単なる記号になっていない存在で、観ていると手を伸ばしたくなる、抱きしめたくなる存在感でした。

河内を演じた池山ユラリさんの格好良さ、伊予を演じた米山真里さんお抑制しながらも素敵な演技で、彗星マジック、これからも追いたくなりました。

公演名 彗星マジック23景「詩と再生」
公演期間 2019.10.25(金)~27(日)
公演場所 in→dependent theatre 1st
サイト 公式サイト(公演情報) / 公式Twitter / 公式Facebook