- 2012年9月23日
観劇雑記:Caramelbox「広くてすてきな宇宙じゃないか」
"もしも一人になったなら、まずは空を見上げることだ。" 演劇集団キャラメルボックスのサポーターズクラブ結成20周……
“あの時の回答は、あなたの人生にとって、役に立ったでしょうか?”
今年は「ガリレオ」でまた注目を浴びている東野圭吾さん原作の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の舞台化作品を新神戸オリエンタル劇場で観劇してきました。
東野圭吾さんの作品をキャラメルボックスが舞台化するのは「容疑者Xの献身」に続いて、2作品目。しかも、今回は手紙を媒介にしたタイムトラベル物。
タイムトラベル物の作品を数多く作られているキャラメルボックスなので、本当に楽しみにしていました。
しかも……実は今回、珍しく私、舞台を観るまで原作を読んでいなかったのです。
物語の舞台はかつて雑貨店として営業していた廃屋。
同じ児童養護施設で育った3人、敦也、翔子、幸平はコソ泥に入った逃亡中に、この廃屋「ナミヤ雑貨店」で一晩を過ごすことになる。
その時、店内に小さな物音が。店舗のシャッターに付いた郵便口から、誰かが封筒を入れたようだった。
中には悩み事が書かれた便箋が入っていた。かつての店主が悩み事相談を受け付けていたことを知った3人は、遊び半分で答えを書き、牛乳箱に入れる。
その瞬間、また郵便口から封筒が……店の表には誰もいない。そして、その手紙はどうやら過去から届いたらしい。
ジャック・フィニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」という短編集の中に、「愛の手紙」という短編があります。
ウチがこの作品に触れたのは高校生の時。本屋さんでジャケ買いならぬ、タイトル買いした一冊でした。(不思議と10代後半にこうやって偶然手に取った作品はは当たりが多いなぁ……)
「愛の手紙」という作品は、ある青年が骨董品として手に入れた古い机の引き出しに、かつての持ち主だった女性の手紙を見つけ、その女性に手紙を出したら時間を越えてその女性に手紙が届いてしまうという話。
その机には引き出しが3つしかなく、女性から青年に手紙を送るチャンスは2回しかないという切ないラブストーリーです。
ウチ、昔も今もこういう切なすぎるラブストーリー大好きです。
手紙が時間を越えるという作品は、他にも韓国映画の「イルマーレ」(この作品も大好きです。「猟奇的な彼女」で有名なチョン・ジヒョンさんが可愛いんですよ)がありますが、キャラメルボックスの脚本・演出をされている成井豊さんは、オリジナルでこれらを超える作品をいつか作りたいと考えてたとのこと。
成井さんは、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を「アイデアとしては本当にやりたかったもので、東野さんが最高の形でやってくれたので、人のアイデアだけど僕がやりたかったもの」と、舞台化のきっかけをそのように話しておられます。
上演時間は2時間ちょっと。上演時間内に納めるため、原作にある5つの悩みのうち2つはカットされているのですが、全くそんなことを感じさせない濃密な「ナミヤ雑貨店の一夜」が繰り広げられます。
登場人物では、ナミヤ雑貨店に逃げ込む3人、敦也(多田直人さん)、翔子(渡邊安理さん)、幸平(筒井俊作さん)のチームワークと原作よりも元気な演技が素敵ですが、それにも増してもう一人の主役・浪矢雄治を演じる西川浩幸さんの抑えめで実直な演技が3人と対比されてとても印象的です。
原作が連作短編ということもあり、主要な4人の俳優さん以外の方は何役もこなされ、またその一つ一つが魅力的。
普段の作品以上に、一つ一つの物語が”濃い”ので、開演から30分もすると胸が詰まって、危うく泣きそうになってしまいました。
…………結局最後には泣かされちゃうんですけどね。
この日は平日昼の公演だったので、ウチ一人で観劇……だったんですが、偶然、以前からTwitterで絡んで頂いていた美女も来られていることを知り、観劇後にちょっとお話。
彼女、訳あってこれからしばらくキャラメルボックスを観に来ることができなくなるのですが、新しい一歩を踏み出そうとする時に、本当に素晴らしい舞台を観ることができたと感激していました。
浪矢さんの手紙が、また一人を背中をそっと押した瞬間でした。
神戸公演は今週末の日曜日(6/16)まで。
も一回は観たいんだけど、今回は時間(と財布の中身)を用意できなさそう。
あ、そうそう。
今回のCSC(キャラメル サポーターズ クラブ)の来場記念品。
来場記念品は「役に立ちそうで役に立たない」ものがいつも配られるのですが、今回は物語にちなんでレターセットが。
ん? 役に立つやんと思ってたら、中に自筆の悩み相談が……笑っちゃいました。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=wVZr3snJx8E[/youtube]
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