観劇雑記:Caramelbox「容疑者Xの献身」

「容疑者Xの献身」パンフ

梅田のシアター・ドラマシティで上演されていた演劇集団キャラメルボックス「容疑者Xの献身」千秋楽を観劇してきました。

こちらの作品の初演は2009年。
東野圭吾氏の原作は直木賞、本格ミステリ大賞など数多くの賞を受賞。今年にはアメリカのミステリー界で最も権威のあると言われているエドガー賞の候補作にもノミネートされるほどの名作ミステリです。

初演時、この小説を舞台化すると聞いた時、不安で一杯でした。
本格ミステリ作品で、なにより天才物理学者ガリレオこと湯川学と石神の思考を2時間でどう表現するのか想像できませんでした。

が、その初演は本当に素晴らしいものでした。
原作を読んだ時の感情が浮かび、石神の慟哭が心に響きました。

そんな作品の再演。しかも、演出の成井豊氏が「強い思い残しがある」と決めた再演とのことで、楽しみでなりませんでした。

東京での公演の舞台写真を観た瞬間、成井氏が言う「強い思い残し」が分かりました。

初演の舞台と同じ”盆”と呼ばれる回り舞台。ですが、背景にいくつもの「歯車」が配置されていました。
歯車越しに光が差し込み、舞台装置の隅々に「歯車」の影が浮かんでいました。

「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけだ、ということをいいたかったんだ」

たった一言の台詞ですが、ガリレオ・湯川と石神が置かれた立場と考え方を象徴するもの原作の台詞です。
成井氏がこだわった「歯車」が本当に嬉しく感じました。

 

今回のみき丸はガリレオ風
持っているドリルは(笑)

 

 

 

 

 

 

ガリレオ・湯川准教授は初演と同じ岡田達也さん。
ほとんどの役柄は初演時と同じ方が務められましたが、石神役は初演時の西川浩幸さんが演じることが困難なため、元劇団員の近江谷太朗さんが演じました。

原作では石神は「攻め達磨」と称される どちらかというと「ずんぐりとしていながらガッチリ」としたイメージがあり、初演の西川浩幸さんでも、映画版の堤真一さんでも「ちょっとイメージと違うよね」と思っていました(実際にお二人とも演じているのを見ると「石神」にしか見えなかったんですが)。
今回のキャスティングが発表された時に、「いやいや、近江谷太朗さんはもっとちゃうやろ?」と感じたのですが、元々この作品お大ファンだという近江谷太朗さんは、増量して短髪にしていつもの伊達男とは違いすぎる石神として舞台に立っていました。
全編を通して、過去のキャラメルボックスでの出演作では見たことのない抑えめの正に「石神でしかない」演技でした。

ラストの慟哭はしばらく忘れられそうにありません。

終演後は千秋楽名物の出演者全員の一言挨拶と三本締め。

さらに、近江谷太朗さんの「とっとと帰って下さい」を頂きました(笑)

湯川のインスタント珈琲(笑)

客席をたって、ロビーに戻ると、劇中で湯川准教授が草薙刑事たちに振る舞うインスタントコーヒーの販売が。
ツイッターのTLではウチがフォローしている人のつぶやきで「腰が砕けそうになった」と呟かれてました。

その名も「自分で淹れる湯川のコーヒー。」(笑)

もちろん、単なるインスタントコーヒーですが、東京公演と比べて大阪公演では売れ行きが10倍だったとか。さすが大阪ってとこでしょうか。

シリアスな舞台の中でも、笑いを欠かさず、たっぷり堪能してきました。

次は「アルジャーノンに花束を」。今作以上の難敵にキャラメルボックスがどう挑むのかもう夏が楽しみになってきました。