考察・妄想 キャラメルボックス「クロノス」吹原が跳ぶ未来

クリスマスの夜にキャラメルボックス『クロノス』の大千穐楽が終わって、出演者さんや観劇された方のツイートを見ていたら、お友だちのkikiさんのこんなツイートを見つけました。

そう、これ、語りたくなるんですよね……このkikiさんの考察、ものすごく好きで、特に館長の海老名さんの言動から、描かれていないエンディングを妄想してるくだりは最高です。

7年前の再演時に、私も一定の考察を終えていたので、今回はそれを踏まえたうえでの観劇でしたが、kikiさんの考察を読んで、更にもう一歩深まった感じがするので、ここで妄想をダダ漏れにしてみようかと思います。

ここから先は、キャラメルボックス『クロノス』及び関連のクロノスシリーズ、梶尾真治さん原作の『クロノス・ジョウンターの伝説』の各作品の大きなネタバレが含まれます。
未読の方はぜひ梶尾真治さんの原作をお読みいただけると嬉しいです。
 

吹原は四千年以上先の未来に弾き飛ばされない

舞台上で表現される『クロノス』のラストシーンは、5度目の跳躍で2078年の科幻博物館からやってきた吹原が、来美子の手を握って救い出し見つめ合った瞬間に暗転、というもの。

クロノス・ジョウンターの欠点から、吹原はこのあと四千年以上先の未来に弾き飛ばされるとして描かれているため、その視点で物語を見たとき、この暗転は切なさが残ります。
原作小説では、このあとどうなったかは描かれていません。『野方耕市の軌跡』で吹原が登場しますが、ここで登場する吹原は『吹原和彦の軌跡(=クロノス)』の旅路の途中なので、来美子が救われた後は描かれていません。

一方で、キャラメルボックスでは『クロノス』で、他のクロノスシリーズの登場人物である鈴原樹里、枢月圭を登場させ、同じ世界線で描いていることから、吹原がこの後どうなったかということが示唆される演出が『クロノス』シリーズの各作品でちらほらと見受けられます。
この辺り、ずっとキャラメルボックスの作品を見続けているご褒美だったりするんですが。

で、あのラストシーンの暗転のあと、吹原がどうなるか……ですが、私の結論は『吹原は未来に弾き飛ばされる。ただし四千年以上先じゃない』です。

『クロノス』は、来美子が事故にあい、それを救いに吹原が何度もクロノス・ジョウンターで時間を跳躍する世界線で描かれています。仮にこの「来美子が死んでいる」世界線をAとします。
それが「吹原が来美子を救い出した」世界線Bに変わるというのが『クロノス』という物語だと私は解釈しました。

キャラメルボックスで描かれている他のクロノスシリーズは、Bの世界線の延長上にある物語です。

『クロノス』の物語は、吹原が来美子を救った瞬間にBの世界線に切り替わるので、ラストシーンの暗転後、世界線Aの吹原は来美子の目の前からやはりクロノス・ジョウンターによる時間流の反発を受けて未来に弾き飛ばされると考えます。

で、そういう考えの元に、私が妄想する吹原の未来、『クロノス』の妄想エンディングはこの2つ。

まずは世界線Bに移行した来美子視点の物語世界

助かった来美子を前に笑みを浮かべる吹原、その姿が消える。
炎に包まれるシック・ブーケを前に、消えた吹原を思い何も考えられない来美子。
そこへ全速力で駆けてくる吹原の姿が見え、来美子はカエルのブローチを握りしめる。

ここの吹原は、来美子が死ぬ世界を知らない世界線Bの吹原ですね。だから吹原を描くよりもここからは来美子を描いた方が良いなぁと。
この後、来年5月の次回公演『あしたあなたあいたい』での野方への来美子の行動に繋がります。

さて、問題の世界線Aの吹原視点の物語世界ですが、

強い風が吹原を吹き付ける、もう抵抗はしない。
目の前の来美子の顔を目に焼き付けて吹原は風にその身を任せた。
目を覚ますとそこには一人の女性が美しい笑みを浮かべている。
「お帰りなさい、吹原くん」

ここは結構願望が入っちゃうんですが、2078年の科幻博物館に戻ってくる。Aの世界線上でも吹原が来美子を救ったことにより、Aの世界線上でも吹原が過去に飛んだ2078年以降は「来美子が生きていた世界線」A’に再構築されるわけです。
原作の『野方耕市の軌跡』で片倉珠貴が生きていたので、そうなるんじゃないかと。とは言え、野方はパーソナル・ボグを付けていたとか諸要件が違うので、ちょっと強引なところは拭えませんが、kikiさんの妄想を取り入れて、元の時間に戻れるようになっていたと思いたいところ。
この後、二人でさちえのいる病院に行って、吹原はさちえと海老名と再会する、と。

ちなみに野方耕市さんですが、キャラメルボックスの『南十字星駅で』は世界線B、原作『野方耕市の軌跡』は世界線Aの物語と考察しています。

どちらの吹原にも、来美子にも幸せになって欲しいよなぁ……と、そんな妄想でした。