空晴「ここにあるはずの、」続く、続ける思い

空晴の1年ぶりの本公演「ここにあるはずの、」を観てきました。客演で出演される太田清伸さんを観たかったのです。

太田清伸さんという舞台俳優を知ったのは、モニター越しの舞台作品です。

、人狼ゲームを題材にしたアドリブ芝居。娘の友人に勧められて観た舞台が面白くて、何十本も配信される舞台を見続けました。

太田清伸さんは、その舞台でヒーロー……と言うわけではなく、墓守や管理作業員といった配役、名前をフランクというおじさんを演じていました。地味なおじさん(ごめん、ウチより若い)で、ゲームから外れた時に楽しい役者さんだなぁと思っていました。
しかし、人狼TLPTという舞台は人狼ゲームをベースにしているので、その展開次第では誰よりも舞台の上に立ち続けることができます。あるとき、FLAGという海賊を舞台にした演目で船医を演じていた太田さんが最後まで生き残ってエンディングを迎えました。そのステージの主役でした。

……え、こんな演技しはるんや……太田清伸さんを「観たい俳優」さんとして認識したきっかけでした。

コロナをきっかけに仕事を失った人がいます。生活が変わった人がいます。
以前と同じでいられない中で、変わることを決めるのも一つの道です。だから、太田清伸さんの今の舞台を観ないと……と思いました。

閉店を決めた古い喫茶店を舞台に、常連の一人・清水がサプライズパーティをしかけます。
相手は姪っ子のヒナ、結婚を祝うはずの席にはかつての夫・田村も姪に呼ばれてやってきていますが、当然にそれを受け入れられる訳もなく……

常連の清水として出演もする岡部尚子さんが書く空晴の物語は、いつもウエットな質感をもっています。大阪のどこかで今、本当に進んでいる話をちらっと覗いているような、そんな気にさせられます。

すれ違いや勘違い、大切に思ったり、憎んだり、寂しかったり、楽しかったり、そんな感情を揺さぶるではなく、つついてくるのが実に絶妙で、見おわった後には、なんだかほっとして帰る事ができます。

店をやめようと思ったマスター、ヒナを送ろうとした清水や田村、あるきっかけでヒナに関わることになるピカソ、そしてそこに巻き込まれて感情をぐるぐるとかき混ぜられて感じる先生。一人一人はハッピーエンドじゃないかもしれないけれど、「続ける」という言葉がすっとそれぞれの登場人物にもにじむ舞台でした。

岡部さんから、役者を辞めるかもしれない太田さんへのラブレターのように感じたお芝居でもありました。続ける、という言葉を口にした清水とマスター、岡部さんと太田さんの関係性も本当に素敵でした。

これからも続く、続ける、変わる、変わらない、空晴の舞台を来年も観たいな……いいお芝居なんですよ。本当に。なんだか、色々と疲れている人にそっと背中を押す……違うな、背中をツンツンとつついてくれるのが空晴のお芝居、火曜日まで日本橋のin→dependent theatre 2ndでやってます。結構おすすめです。