ハミダス#03「出張財政出前講座+SIMふくおか2030」開催しました

ハミダス#03「出張財政出前講座+SIMふくおか2030」開催しました
2023年現在、こちらの記事で紹介している『SIMふくおか2030』は『SIMULATIONふくおか2030』に名称変更しています。写真などは当時の名称です。

一歩はみ出す公務員を応援する「ハミダス」、#03 町の未来はみんなで描く「出張財政出前講座+SIMふくおか2030」を開催しました。

昨年、私はこの講座を神戸で参加させていただいたのですが、その内容が素晴らしく、そしてその時に私の所属する大阪市の参加者がほとんどいなかったので、「次は大阪でやります!」と勢いで言ってしまったことをきっかけに開催することになりました。

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結果的に当初の定員は72名。60名集められたら良いなと思っていたらキャンセル待ちも発生して、増席のうえ最終的には、遠くは千葉県や埼玉県からもお越し頂いて81名もの参加を頂きました。
当日、参加いただいた方には伝わったと確信しているのですが、参加できなかった方、参加するまでの興味を持てなかった方にも、次に近隣で開催するときにはぜひ参加して欲しいので、当日の模様も含め振り返りレポートします。

自治体財政は本当に厳しいのか?

今回の講師、福岡市の経済観光文化局の総務部長兼中小企業振興部長を務める今村寛さんは、元財政課長。福岡市の職員向けにSIMふくおか2030を組み合わせた財政講座をおこなったところ、あまりにも好評で今も全国を飛び回っています。

その今村さんの財政講座は三部構成。第一部のスタートは参加者に「財政のこと、何が知りたい?わからない?」と問いかけます。
そもそも財政、予算って何? というところから、民間企業に勤めておられる参加者からは「自治体が公表している予算がよく分からない」などの質問、そして「財政状況が厳しいと何年も聞き続けているけど、本当に厳しいの? 何が厳しいの?」というところまで様々な質問が上がります。

それに対して、今村さんは軽妙に「自治体財政は本当に厳しい、お先真っ暗ってことを昼まで喋って、それからSIMを体験して頂きます」と告げ、まずは座学の「財政健全化ってなんだろう?」前半戦です。

今村さんが財政を語る時には、自治体の収入である「歳入」から。福岡市の平成28年度予算における歳入額は7,845億円。大きな額ですが、そのうち半分は「特定財源」と呼ばれる使用用途が定められているお金。

では、歳出(支出)を見てみると、使用用途が定められていない一般財源ベースで見たときに大きな割合を占めているのが公債費、人件費、扶助費。
公債費は自治体の借金、扶助費は生活保護費など自治体の裁量で減らすことのできない経費の最たるものです。
福岡市を例にあげていますが、この構造は全国どこの自治体も似通っています

こうして自治体のお財布事情を大きく示した時には、もう参加者全員が前のめりになって今村さんの話に聞き入っています
「一人当たりの借金」はあまり意味がない、人口が増えても地方自治体の歳入は増えない仕組み、人件費は民間企業と違ってほぼ義務的経費、市債の発行を減らしてもその効果がでるのは遙か先の未来、高齢化社会の進展により扶助費は増え続ける……一つ一つの事実の確認から「自治体財政の厳しさの本質とは何か?」に迫ります。

そして、今村さんから参加者に伝えられるのは、「重要施策の推進や新たな課題の対応に要する経費・政策的経費が減少している」という事実。それを知って、参加者は第二部の「SIMふくおか2030」に移ります。

白熱の議論と、そのあとの笑顔「SIMふくおか2030」

昼休みを挟んで午後は「SIMふくおか2030」。自治体財政をシミュレーションするこのゲームは、熊本県職員の有志団体「くまもとSMILEネット」が制作した「SIM熊本2030」が元になっています。

1チーム6名は架空の自治体「えふ市」の幹部職員(局長)になり、それぞれ所管する事業カードを3枚ずつ渡されます。
今村寛・えふ市長から新任局長への訓示のあと、6名に課されるのは2025年の予算案作成。ゲームでは高齢化社会の進展に伴う社会補償費の増額2億円、そして、新たな社会課題に対応する施策1億円×2の費用の捻出が求められます。

費用を捻出する方法は2つ。1ターン2億まで認められている赤字地方債(実際には存在しない)の発行か、既存事業の廃止のみ。新たな社会課題に対応しないという選択肢もありますが、その場合はその課題に対してどういった代替案で対応するのかが問われます。

ゲーム開始時に名刺交換を禁止しているので、同じテーブルに集まった局長6名は互いを知りません。
お互いの手札(自身が所管する事業)をオープンにして「この事業はいるorいらない」を議論の端初にロールプレイを進めていきます。

1ターンは25分、1年を5分として2020~2024年の議論を進めるのですが、議論は徐々に白熱。
各局長が持っている事業カードは、今まさに「えふ市」がやっている事業なので、その事業に支えられている市民がなんらかの形でいる訳です。新たな政策課題と天秤にかけて、「いる・いらない」を決めるのは容易なことではありません

ほとんどのテーブルが5年(25分)では予算書(ワークシート)が書き上がらずタイムアップ。今村さんの声で「泣きの2分」が追加されて、全テーブルの予算書が完成。

予算書が完成すると議会ターン。今まで「えふ市」の局長だった6名は、「えふ市」の新人議員となって、別のテーブルで作成された予算書の審議を行います。

「○○の社会課題に対応しないということですが、それについてどう考えているんですか?」「△△の事業を廃止するということですが、その影響をどう考えているんですか?」「赤字地方債を発行するということですが、将来世代に負担を先送りするんですか?」
議員の質問に対して、各局長は答弁を行わなければなりません。

お互いのテーブルの審議が終われば、予算案の承認の議決が取られ、反対多数の場合は予算庵の修正が行われます。今回は一つの「えふ市」の予算が通らず、廃止するとしていた事業が取りやめられ、赤字地方債を発行で費用を賄うことになってしまいました。

同様の議論をもう1ターン(2025~2029年)繰り返して、迎えた第3ターンの2030年。

赤字地方債を繰上償還するための事業廃止を課せられたあと、各局長に与えられた課題は、「えふ市」からの改名と新たな市のキャッチコピーの作成。
廃止されることなく残された事業と社会課題に対応して生まれた資産から見つめる町の姿は、テーブルごとで違っています。

第1ターン、第2ターンと違って、この第3ターンの議論を行う各テーブルの局長たちの顔には笑顔が浮かびます。難局をメンバーで乗り越えてきた信頼感からか会話が弾みます。
そして、お互いに名刺交換を行って、その正体に驚きながらゲーム終了。

休憩を挟んで第三部、財政講座の後半戦で今村さんは「SIMふくおか2030」で何が難しかったかを振り返ります。
事業を廃止するかしないのか色々な選択が難しかった、議会への答弁(市民への説明)が難しかった、どう議論を進めていけば良いか対話が難しかった……そんなそれぞれの感想に、ゲームを進めていく中で生じたシチュエーションを解説し、必要なのは「情報共有と立場を超えた対話」だと伝えます。そして、自治体職員に向けて、今ではなく「未来からの視点」を持って欲しいというメッセージで講義をまとめました。

SIMはこれからも広がっていく

「SIMふくおか2030」の体験が終わって、今回は特別講座として「SIMふくおか2030ができるまで」を今村さんに語っていただきました。

「SIMふくおか2030」を体験すると、ほとんどの自治体職員が「ウチの自治体でもやりたい」「○○版を作りたい」と思ってしまいます。
今回、ちょうどシナリオをリニューアルしたということもあって、今村さんには「SIM熊本2030」から「SIMふくおか2030」を作ったときにやったこと、盛り込んだこと、これからご当地版を作るときの注意事項など、駆け足の講座でしたが、参加者は自身のノートなどにペンを走らせていました

すでに、千葉石川などご当地版が登場しており、山形県酒田市では総合計画(マスタープラン)策定の過程で、市民の方にSIM2030を体験してもらうということまで行われています。

今回、参加した中から「SIMふくおか2030をやってみよう」「ご当地版を作ってみよう」と思うメンバーがまた出てくるかもしれません。

興味をもった方は近くで開催される機会があれば、ぜひ参加してみてください。自分たちの町を知って自分たちの町の未来を描くのは自分たちだということがきっと分かっていただけるんじゃないかと思います。

私がこの記事を書いたよ!

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があ 男性

大阪生まれ・育ち・勤めの雑食系公務員。 福祉職だと勘違いしている人が大多数ですが下っ端事務職。濃い顔付きから沖縄人やらトルコ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ~

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