- 2017年9月13日
美しさ際立つ料理が衝撃的な大人イタリアン@北新地「Ristorante Pinocchio」
「まだあまり知られていないすっごいイタリアンのお店あるんですよ。」そんな友人の言葉にそそられて、仕事が一段落ついた日に予……
……レビューを書くこと自体、緊張します。
facebookで繋がっている食べ友だちからお誘いを受けて、今年一番の贅沢な夕食を楽しませていただきました。
場所は北新地「湯木 新店」
新店は宴会も可能とのことで、通して頂いたのは2階の個室。お店の方に食後に伺うと、1階にはテーブル和室も備えていて、ご高齢の方でも楽に食事を楽しんで頂けるとのこと。
この日は誘って頂いた友人に完全にお任せ。「錦秋の湯木コース」として特別な献立で頂きました。
座付膳として、最初に花籠で提供。すでに同行者の女性からは歓声が……。お料理の前に、目で楽しませていただけます。
そして、お皿は菊。花籠にぴったりのお皿には蒸しアワビに渡り蟹。オクラや細やかな細工を施したキュウリに生姜と卵黄がちょこんと。どうやって食べようと迷っていたら店主の湯木さんから、醤油をかけちゃって混ぜてしまってください、と。
え、そんなことして良いんですか?? と思いながらも、その通りにさせて頂いて、渡り蟹のほぐし身や菊花、卵黄をまぶして口に運ぶと…………もうね、一品目から息が止まりそうになりますよ。
蒸しアワビは驚くほどに柔らかく、醤油も丁寧にとった出汁醤油なんですね。ふぅ。
煮物椀は輪島塗のお椀。蓋を開けると稲穂と雀の絵付けがされています。その絵付けに合わせるようにお椀の中には稲穂を模した三輪素麺に、月を模したスッポンの丸残月。スッポンは食べやすいように一口サイズにされており、出汁は生姜がツンと効いていながらもスッポンの旨味が強調される主役を殺さない抑えどころがしっかりとした椀。
造里(お造り)は、紅葉の絵皿に萩の簀巻に包まれて登場。この絵皿、半分が秋の紅葉のモミジに、半面がまだ紅葉していない青いモミジになっているので、季節の深まり具合に応じて手前側を変えて提供するんですって。もちろん、今日は手前が紅葉したモミジ。
お造りは鯛、イカ、カンパチ。新鮮で素晴らしいお造りなんですが、湯木さんが特にお薦め頂いたのが、自家製のこのわた。実は私、このわた、それほど好きではありませんでした。塩辛くて食べられないものが多かったのですが、頂いたこのこのわた……信じられない位、磯の香りが豊かで、塩辛すぎない、まさに絶品。イカに合わせて食べてみてくださいとお薦めいただいたので、その通りにしてみると……イヤだ、こんなの食べたら日常に戻れなくなる!!
この日は、ちょっと風邪気味だったのでお酒は控えておこうと思っていたのですが、このわたに完全にノックアウトされて、同行者と同様に日本酒を。
合わせて頂いた日本酒は宮城の「伯楽星」。すっきりとした軽さと、フルーツのような香味を感じる日本酒。お造りに合う!
続いて石焼。本店のランチでも提供されていて、もの凄く好評とのこと。松かさの深皿に車海老、帆立。浸かっているのは酒盗と秋ということでトリュフオイル。蓋を開けると良い香りがするのですが、熱々の石に乗せた瞬間、その数十倍も香ばしく心躍らせる香りが!
海老や帆立に移ったトリュフオイルの香りで口の中が一杯になります。
同行者からは「があさん、顔が惚けてる。」と言われましたが、そら、惚けますよ。食べながら、日本酒をぐびりっ。
「このオイル、凄く良い香りなんで、コレだけでも他の料理に使いたくなりますね。」と言うと、オイルもかけてしまって良いですよと、またまた湯木さんの悪魔……違う、天使の一言が。
うぎゃあ。この香りが、香りがっ!
九谷の染付皿で提供されたのは寒鰤。刺身でも絶対に美味しい鰤は、しゃぶしゃぶで。
湯木さん自ら調理していただき、自家製のちり酢で頂きます。脂の乗った上品な寒鰤に菊菜、出汁の効いたちり酢がたまりません。
白子は口の中でとれけそうになめらかで、もうため息しかでません。
と、ここで次のお酒……ええっ!
獺祭のスパークリングやないですかっ! 人気が出すぎて、手に入れるのが困難すぎるので、いつかは飲んでみたいんだけど……まぁ、その機会はないやろうなぁと思っていたんですが、こんなところで味わえるとは。
にごり酒ですが、見た目は結構澄んでいます。口にすると本当にワインのようなほのかな甘み。アルコール度数は高めの15度くらいなんですが、すっと飲めてしまいます、恐ろしい。天然の酵母から生まれている炭酸なので、さっぱりとした飲み心地で、本当に美味しいです。
輪島塗の丸盆に飾られた八寸。色々と教えて頂いていたんですが、実はこの辺りで、ワタクシかなり酔っ払っており結構曖昧。写真はぶれた写真が増えていて、申し訳ない限り。
手前にかぼす釜のいくら、檸檬釜の肝煮こごり。鴨のロースに焼茄子。かます寿司に生麩。
目にも美しい料理の数々に目移りしますが、特に素敵だったのが柿の器に収められた白和えとかつお胡桃。白和えは生クリームのようになめらかで、小さな角切りの果実が隠れていたり、かつおをまぶした胡桃は甘さと渋さのバランスの妙に惚れてしまいそうになります。
揚物は「実成金」と書かれたちょっとお茶目な器で登場。重みがあって、温かい蓋を開けると、太刀魚の天ぷらにマイタケ、翡翠銀杏、栗。うーん、秋ですねぇ。
太刀魚の天ぷらは肉厚でふんわりとしており、身はほくっとしています。天出汁と山椒塩で頂くのですが、先ほどのちり酢が美味しかったので、そちらも頂いてみるとこれまた美味。銀杏と栗は山椒塩で。栗はデザートのような甘みで、つい顔が笑ってしまうのですが氷砂糖で甘みをつけているとのこと。
焚合は焼き穴子とほうれん草、蕪、海老芋の煮物。蓋を開けると柚子の香りが拡がります。
焼き穴子のふんわりとした蒸し具合に、蕪の優しい甘み、海老芋のねっとりとした舌触り。味わいとしては他のお料理に比べれば濃いめなんですが、抑制の効いた濃さと言いますか、それぞれの具材の優しさに寄り添うような穏やかな味なんですよね。
たっぷりの柚子の香りとともに、野菜の甘みを素直に味わえる一品です。
強肴、メインになるのは織部の小鍋で、黒毛和牛のサーロイン寿㐂鍋。
もう、何も言えません。卵黄をたっぷりまぶして、最高のお肉を楽しみます。
土鍋炊きのつやっつやの白御飯に合わせるのは、自家製の明太子に白菜漬。お味噌汁は鯛のカマ身が入った西京仕立て。同行者はお正月のお雑煮も白味噌らしいのですが、私はお吸い物の人。白味噌のお味噌汁は甘ったるい感じがして、あまり得意じゃないのですが、このお味噌汁は甘さがくどすぎず、それでいて濃厚。旨味の詰まりきった凄いお味噌汁でした。
自家製の明太子は昆布にあごだし、大吟醸のお酒にオリジナルブレンドの唐辛子でつけ込んでおり、これまたすんごい旨味の明太子。いやぁ……妻が苦手じゃ無ければ、すぐにネットで購入してしまいそう……
最後はフルーツゼリーとアイスクリームで〆……ですが、このフルーツゼリーもまた凄いです。写真では絶対に分かりませんが、かなりの種類のフルーツが隠されています。ゼリーよりもフルーツの方が絶対に多いはず。木のスプーンですくう度に違ってフルーツが現れて、最後まで楽しめます。
今回のコースはサービス料、飲み物代を除いて20,000円。ちょっと贅沢しすぎて、同行者も含めてお腹一杯で、大食いのウチですら動けなくなりそうになりました。
同じ料理の提供は可能とのことですが、もう少し品数を抑えてもらった方が楽しめるかもしれません。
全体を通して、季節感を大事にして目にも口にも美しい本当に和食の神髄を味合わせて頂いたという実感です。
昔、中学1年生の時、料理人の親父が母に黙ってウチを吉兆に連れて行ってくれたことがありました。……あとで、母に親父は思いっきり怒られたらしいのですが。
すぐには無理ですが、一度親父を連れて行きたいな、と思う一夜でした。
本当にごちそうさまでした。
店名 | 北新地 湯木 新店 |
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ジャンル | 懐石、和食 |
住所 | 大阪市北区堂島1-5-39 マルタビル 1F |
電話番号 | 06-6348-2777 |
交通手段 | JR東西線・北新地駅より徒歩5分 |
営業時間 | 11:30~14:30 / 17:30~22:00 |
定休日 | 日曜日・祝日 |
サイト | ホームページ |
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