

同業の生活保護査察指導員からおすすめされ読んでみたところ、全国のケースワーカーにも読んで欲しくなったので、熱量バグり気味でご紹介したいと思います。
タイトルは『きれいごと抜きの対人援助術』、精神科医の春日武彦さんが、本当に現場で日々悩みながらクライエントに関わっている援助者のための書籍です。
実用的なスキルガイド本
私たちケースワーカーが日々頭を悩ませるのは精神疾患を抱えたまたは抱えていると疑われる人への対応です。
ケースワーカーは一般の人よりも病気に対しての知識や理解もある方ですが、それでも理解が追いつかず、対処法が分からず追い込まれ「詰んだ」状況に直面します。
とにかく話が通じない、攻撃的、予測不能……私が研修に行って、個別の質問を受けると、こういった「詰んだ」状況への正解を教えてほしいという質問が頻出します。
この本はそんな質問に対して、私が提示できる答えの一つです。
精神科医のカスガ先生は、うつ病、パーソナリティ障害、種々の依存症といった病気や症状から解説するのではなく、「話が長い人」『コミュニケーションが難しい人」「怒鳴ったり机を叩いたりと威圧的な人」「非協力的な家族」など、ケースワーカーが直面する事象から、どういった病気のどういった特性が現れていてどう対処すべきかを解説しています。
この「どちら側から解説するのか」というのは、学ぶ側にとっては本当に大切なことで、多くの類書ではこの視点が軽視されています。
解説されている事象が、現場の人間にとっては「あるある」なので、精神科医が持つスキルを易しく解説しているこの本の内容で救われるケースワーカーは多いはずです。
援助者のメンタルケア本
ケースワーカーも一人の人間です。
ちょっとばかり人に親切だったり、社会福祉の知識や精神を蓄えていたりしますが、決して特別な人ではありません。
職業柄、「詰んだ」状況に対しての対処を任される、悪く言えば押し付けられることも多く、自身の特性や経験を駆使して対処しますが、ほとんどの場合は解決とはいかず、時にはその「解決できなかったこと」を胸の内に抱えて、次の「詰んだ」状況に臨んでいきます。
ケースワーカーは多職種・他職種との連携が必要だと、私は研修などの際に伝えています。それは、役割分担という意味もあるんですが、一つの悩みを皆で背負うことでもあります。
私が大好きな漫画版の『機動警察パトレイバー』で、後藤隊長は警察の仕事をこんな風に言っています。
「おれたちの仕事は本質的にいつも手おくれなんだ。」
ケースワーカーが接する人々は、様々な事情で生活に困り窓口にたどり着きます。警察と同じようにケースワーカーにとって、「予防」は本来の役割ではありません。後藤隊長曰く「こいつは覚悟がいるぞ。」というところ。
問題は、苦い経験や自己嫌悪――そうした感情のみならず、そのような状況に至った経緯を振り返り、きちんと言語化し、分析してみるという作業が容易ではないことでしょう。それにはそれなりの手助けやガイドが必要になる。 (「はじめに」より)
ケースワーカーの覚悟に対して、「何もできない」状況をケース検討で共有する、責任を分散し皆で背負うことを伝え、時には「保身」に走ることを厭わない、そんな姿勢で書かれた本書は最良のメンタルケア本と言って良いと思います。
援助者へのエール本
著者の春日先生は、東京都の都立精神保健福祉センターで働いておられた経験をお持ちです。
ケースワーカーにとって、医師はある種、近く見えながらも遠い存在ですが、本書のカスガ先生は、私たちの視点を理解してアドバイスしてくださっている印象を受けます。
実のところ、援助者、ケースワーカーが抱える悩みはかなり根深く、有り体に言えば援助者・ケースワーカーの味方は、庁内外を見渡しても少なすぎるのが現状です。
援助者に求められることは幅広く、ゴールの位置も距離も分からないまま走り続ける仕事に対して、正論でぶん殴られることも多いことも多いわけですが、ケースワーカーからしたら「そんなこたぁ分かってるわ」という言葉を飲み込みつつ、日々奮闘しています。
本書は全体的に書名の通り「きれいごと抜き」で書かれていますが、第8章「カスガ先生、もう少し教えてください」で書かれた15のQ&Aはさらに現場の現実に沿ったものになっています。答えがないことが答えなんですが、答えがないことを知る、そしてそこからの援助者の成長を促す、そんな姿勢がうかがえていいなぁと感じました。
本書はカスガ先生と援助者のトリイさんとの会話を通じて、現場の援助者にエールを送っています。
この本を読んで、うまく書けませんが、すごく力をもらえた気がします。
あぁ、ウチも自分の立場でこんな現場の人に伝えられる本を書いてみたいものです。
ケースワーカーの皆さんはぜひご一読を。
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