立川浦々さんが書くライトノベル『公務員、中田忍の悪徳』、現在発刊されている6巻まで追いつきました。
ラノベをデジタル書籍でなく、紙書籍で買ったのはホント久しぶり。購入のきっかけは、ラノベ仲間?のこのツイートから。
ん? 生活保護とか関係しているの?
ということで、買ってみて読んだのですが、
いや、これおもろいやん。
物語の主人公である中田忍は私と同じ地方公務員。区役所福祉生活課の支援第一係長。生活保護現場の最前線で働く彼の自宅に突然現れるエルフ(と思わしき「異世界エルフの常在菌」)・アリエル。
ある意味、逆異世界転生とも言える設定と、「公務員」のイメージをまぁ見事に?具現化した中田忍の「悪徳」が小気味よいスマッシュヒットな作品です。
中田忍の思考を極端と思う人が大半だと思うのですが、1巻、特に冒頭のエピソード、生活保護の不正受給者に対して部下の堀内茜が見せる対応と、それに退治する忍の姿勢は「あ、これ、ウチの考えに近い」と思ってしまいました。
いやぁ、生活保護現場にいる人がラノベに登場するなんて、すごいなぁ。ウチがこの話書いたらすぐ炎上だな……とか思いながら読んでました。
ということで、世間のイメージに恐らくある「公務員」の異質とエルフ(らしき生命体)との交流からくる純粋に面白いライトノベル作品。ケースワーカーにもそうでない人にもおすすめです。
さて、ここまでだったらX(旧Twitter……めんどいな、これ)やブクログに感想を書いておしまいと思っていたのですが、この作品には著者が「同人誌」という作品が別にあります。
それが『非正規公務員、丸山千尋の悪徳』という作品。
著者曰く「商業作品『公務員、中田忍の悪徳』から削ぎ落とされた、不要なリアリティの残りカス」という作品ですが、私にはこれがズドーーンとハマりました。
いや、立川浦々さん、あなた元ケースワーカーでしょ? (勝手な推測)
私は「ナンバー」とは呼ばないですが、「ケース」は普通に現場で使います。中田忍の思考の大半はトレースできるし、丸山千尋は先輩ですが、私はそんな後輩と一緒に仕事をしていた日々を思い出します。
本編を読んでいたときに、中田忍やその部下たちがやけにリアルだなとは思っていたのですが、この同人誌では、さらに鮮明に描かれています。
本編の少し前の中田忍と、本編ではさらっと流されている丸山千尋、そしてそれぞれの「悪徳」。
これねぇ、確かに本編の物語としては「不要なリアリティの残りカス」かもしれないけれど、生活保護現場で仕事をしているケースワーカーに、本気で読んで欲しい作品の一つだなぁ。
ケースワーカーそれぞれ「悪徳」を抱えて仕事をしていること、多分、その質感を実際に感じられる読者はケースワーカーだと思うので。
……やられたなぁ。自身ががっつりとケースワーカーで仕事をしていたとき、何度かケースワーカーや生活保護現場を舞台にした小説を書こうとして途中で断念していた過去を思い出しました。30代半ばまではやっぱり作家志望だったんです、私。
ケースワーカーが登場する作品はいくつかあるんですが、表層的なものでなく「悪徳」を突かれるのはなかなかに厳しく、色々と考えさせられました。そして、その一方でこの作品のおかげで『公務員、中田忍の悪徳』がさらに面白く読めるようになりました。
くそー、おもろいなぁ、これ。
ケースワーカー経験者に『非正規公務員、丸山千尋の悪徳』をおすすめしたいのですが、本編『公務員、中田忍の悪徳』を読んでこその丸山千尋という気持ちもあるので、両方読んでください。はい。
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