劇団ショウダウン「錆色の瞳、黄金の海」少年はゴーレムとともに目覚める

「錆色の瞳、黄金の海」パンフ

初体験はどんなことでも経験するまでの戸惑いが大きいもの。

某演劇関係者Kさんが、facebookで「このお芝居気になるんですよ」と呟いたのを見て、つい検索。運良く2週間後に大阪公演……うーん、これは行ってみろというこっちゃなと勝手に解釈してチケットを即購入。
その後で、いくつか別のお芝居が気になって、「うーん、財布が薄い状態なので、できる限り月1本にしとうこうと思っているしなぁ」と悩みながら今日を迎えました。向かうは長堀橋の船場サザンシアター。劇場まで初体験です。

おっと、チラシの写真。堀川高志さんじゃないですか……DOORSでワンコインの写真講座を受けたことがあるわ。不思議な縁もあるもんだ。

~君は、神の、左足から生まれた~

僕の村には木の人形がいた イハナと名付けられたその人形は 90年村を守って 30年眠り続けて そしてまた動き出す
朽ち果て、錆び付き、崩壊をとどめることもできず、誰もその行動を理解できぬまま、イハナは石を集め出す。
心を持たぬゴーレムが、その錆色の瞳に映すのは、灰色の奈落か、黄金の海か、

物語は王国の北方にある辺境の村ジェミに住む少年ミルキの一日から始まります。
かつて、王国の方針で一つの村に一体のゴーレムをとジェミに配備されたゴーレムはイハナと名付けられ、村人たちに決められたたった一つの願い「村の平和」のために黙々と働いていました。そして30年前、盗賊の襲撃から村を守ったイハナは眠りにつきました。

ミルキは風車小屋に住む男・シェバにイハナの話を聞き、そしてイハナに出会いますが、村の人間は眠り続けているゴーレムではなく、今役に立つゴーレムをと望みます。
豪雨の夜、ミルキは町を飛び出し、イハナの元へ。そしてイハナは再び動き始めます。
大きな石を抱えて、村の外れの川に向かって運び続けるイハナの行動に、村の誰もがその意図を掴めぬまま、そしてミルキを除いた誰もがイハナを必要ないと考えたその日、新しいゴーレム、美しさを備え、話すことのできるホムンルクス、カウニスが村にやってくるのです。

いやぁ~めっちゃ好みのお芝居でした!

心を持たないというゴーレムを信じて突っ走る子どものミルキ。自分の中の正義を大人に伝えられないために目一杯もどかしさが募るのですが、こういう子どもが持っている目線、自分だってかつては持っていたはず。それでいて、今は大人の目線も理解したうえで愛おしく思ってしまうのです。

ミルキを演じた林遊民さん。女性の少年役は、ウチの演劇初体験がキャラメルボックスだったこともあって、その配役だけでついつい注目してしまうんですが、林遊民さんの演技は本当に理想的。ちょっと生意気で、ちょっと背伸びしていて、ちょっと寂しげで、物語が進むにつれて少しずつ成長していく感じがたまらなく素敵
一人芝居でやってはる時もあるのか、それは観たい。

風車小屋に住むシェバを演じるナツメクニオさん。脚本・演出もされている座長さんですが、演技のイメージは大泉洋さんのような奥が深そうな感じ。観てて安心できる俳優さんでした。

ミルキの母親・ミーシャと、ホムンルクス・カウニスを演じた小野村優さんは、とにかく立ち方、舞台での動きが美しい。人間のように見えるホムンルクス、「排除します」の声にゾクゾクしちゃって、終演後のお見送りでついつい声かけちゃいました。
そうか、ツイッターを覗いてみるとそうかダンサーさんなんだ。なるほど。
「また来ます」って言っちゃいましたが、14日までに空きはなし。嘘ついてゴメンなさい。でも、他の舞台に出演する時はチェックするからっ!

他の4人のメンバーもそれぞれ個性的で、たった7人で回していたとは思えないほどの「表現する世界が目に浮かぶお芝居」でした。
ファンタジーの世界設定が好きな人にお薦め、そうじゃなくても生意気で、でもかわいい少年に会いたい人にはお薦め。いや、とにかくお薦め。

いやぁ、改めて良いお芝居を楽しませていただきました。Kさん、ありがと。

船場サザンシアター

公演名 劇団ショウダウン「錆色の瞳、黄金の海」
公演期間 [東京]2016年1月21日(木)~24日(日)
[大阪]2016年2月11日(木・祝)~14日(日)
場所 [東京]シアターグリーン
[大阪]船場サザンシアター
サイト 劇団公式ホームページ / 劇団ブログ