- 2016年8月20日
キャラメルボックス「彼女は雨の音がする」 胸にチクりとくるラブストーリー
「彼女は雨の音がする」の脚本の第一校を書いたという真柴あずきさんは男前な女性です。坂口理恵さん、緒方恵美さんとのユニット……
キャラメルボックスの代表作「TRUTH」のサイドストーリー。登場人物の一人長谷川鏡吾の9年前を描いた作品。
「TRUTH」の再々演にあたって制作された新作なんですが、東京のみの公演だったので正直な所、「観たいなぁ」と思いつつもあきらめていました。
それを、公式のニコ生で月額540円の会員なら無料で千秋楽を放送というのは嬉しい限り。
なんたって通常は7,300円(S席)の芝居ですから、「生で観たい」の代替としては安すぎます。
カーテンコールは放送しないとか、タイムシフト放送はなしとか制限はあるものの、色々と権利関係をクリアして、より多くの人に観て欲しいと挑戦する姿というのは尊敬に値します。本当にありがたい限りです。
と、そういう中でニコニコ生放送という形で、一度きりの観劇となった「涙を数える」の感想をば
物語の舞台は1859年(安政6年)の上田藩、そして江戸。
公金横領の疑いで自害した父をもつ長谷川鏡吾はそれから13年、母とともに貧しい暮らしをしていた。そんなある日、江戸から友人である舟橋明一郎が帰郷する。
黒船が現れ、時代が変わろうとしている中、明一郎は鏡吾にともに日本を動かして行きたいと告げる。
半年後、鏡吾は明一郎を追って江戸にいた。父親を斬った明一郎の討ち手として……
「TRUTH」に繋がる本当に切ない物語。貧しい武士の鏡吾と、勘定方の子としてエリートの明一郎。
お互いを友としていながら、一つの事件を通して追う身と追われる身になった二人
「事実」と「真実」が鏡のように合わさって、登場人物の一人一人の台詞一つ一つがビリビリと突き刺さります。
長谷川鏡吾を演じるのは多田直人さん。
初演、再演の「TRUTH」で鏡吾を演じた上川隆也さんを意識しているのかどうかは分かりませんが、9年後にあの鏡吾に成長するのが感じられる凄まじい演じ方です。
実は、「TRUTH」を初めて見たとき、なぜ鏡吾がああいうことをしたのか(ネタバレにならないように書くのって本当に難しいですね……)というのがどうしても理解できませんでした。面白い、面白くないというのよりも「分からない」舞台だったんです。
何度も映像を繰り返して見て、最近ではなんとなく鏡吾にも彼なりの考えがあるんだろうなという感じが掴んでいたのですが、この「涙を数える」を映像で観て、彼の姿にようやく厚みを持って感じられるようになったような気がします。
鏡吾の友、舟橋明一郎を演じた客演の辻本祐樹さんは、どちらかというとTVでの活躍が有名な美青年なので、同じく客演の池岡亮介さんとともに舞台でどう映るんだろうと思っていたのですが、いやいや本当に失礼な思いを持ってしまっていたもんです、申し訳ない。
それぞれ、多田さんにも負けないほどの爽やかな存在感で物語の終盤にはもう前のめりに演技を観てしまうほど。
父を斬った理由を鏡吾に話す時の感情を爆発させながら迫る姿がたまらないです。
池岡亮介さんが演じた大佛聞多は、物語の中では比較的ユーモアに富んだシーンが多いのですが、物語のトーンを崩さずそれを演じられるのは本当に凄いとしか言いようがありません。
もちろん、主演の二人を支える周りの俳優さんも素敵な方が多く、特に南条役の岡田達也さんや、鏡吾の母役の坂口さんはゾクッとさせられる演技がたくさんありますし、明一郎の妹役の原田樹里さんはキャラメルボックスの時代劇に出演されるのが初めてとは思えないほど美しかったです。
「涙を数える」を観ると、「TRUTH」が観たくなる……関係者から何度も呟かれるその言葉に、全く同感。ついつい、2005年版の「TRUTH」の映像を引っ張ってきましたよ。
さて、2014年版の「TRUTH」、大阪で待ってますよ~
コメントを書く