- 2020年3月17日
阿部広太郎「コピーライターじゃなくても知っておきたい心をつかむ超言葉術」受けたボールは投げ返す
こんな風景を想像した。 コピーライターの阿部広太郎さんが、すっごく澄んだ色のボールを僕に投げてきた。 なんとかそのボール……
1990年代に続けて本格推理小説を書き続けていた有栖川有栖さんの「学生アリス」シリーズ初の短編集。
著者のデビュー作「月光ゲーム」は、学生時代に読んでのめり込んだのですが、「孤島パズル」、「双頭の悪魔」と執筆されたあとは、犯罪心理学者・火村英生が探偵役をつとめる「作家アリス」シリーズが中心でなかなか続編が出ず寂しく思っていました。
「女王国の城」が2011年に出版され、ちょっと乾きは癒やされたのですが、この短編集のおかげでやっぱり好きな学生ミステリを堪能です。
この短編集は、「月光ゲーム」の事件に遭遇する前、英都大学に入学したばかりのアリスが、推理小説研究会の3人、江神、望月、織田に出会うところから、新しい年に研究会のヒロイン、有馬麻里亜が入部するまでの9つの物語が収録されています。
執筆された時期は1986年から2010年と時期にも出来にもばらつきがあり、他の長編作品と比べると殺人事件の発生しない、いわゆる「日常の謎」系の物語のためどうしてもサイドストーリー的な仕上がりですが、「学生アリス」シリーズにハマった経験のある方には必読の一冊になるものと思われます。
9編の短編のうち、「学生アリス」シリーズ好きとして一番良いなと思ったのは、大晦日に望月が書いた小説をネタにアリスと江神がやり合う「除夜を歩く」。素人が書いた探偵小説のトリックを題材に、ミステリ考察が繰り広げられ、ミステリマニアに書かれた話といった感じ。
「ミステリの世界では、トリックはロジックに優先すんぞ」という台詞についついニヤリとしてしまったり。
一般のミステリマニア向けには最後の作品「蕩尽に関する一考察」かな。
高台にある古本屋の店主が近頃おかしい。売り物の本を「只にする」といったり、レストランで居合わせた客におごったり、古本屋の土地を二束三文で売り払ったり。どうしてそんな行為に走るのか……。
シャーロック・ホームズの「赤毛連盟」のような、「不自然な行動に隠された謎」がするりと解かれるときの快感はミステリの醍醐味。
「学生アリス」シリーズは長編5作、短編集2作で完結するとのこと。完結するのはもうしばらく先でしょうが、もうちょっとたくさん読んでみたいなぁ。
そうそう、「学生アリス」シリーズの有栖川有栖が成長した姿が、「作家アリス」シリーズだと思っていたら、「学生アリス」のアリスが書く小説が「作家アリス」、「作家アリス」のアリスが書く小説が「学生アリス」という構造なんだって。知らなんだ。
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