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観劇雑記:Caramelbox「あなたがここにいればよかったのに」

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http://www.caramelbox.com/stage/acoustic2014/you.html
今年のキャラメルボックスは春から二本立て。

と、いうことで「ヒトミ」に続いて、新作「あなたがここにいればよかったのに」の大阪千秋楽(2/25)に行ってきました。

普段、二本立てで上演される場合は、ハーフタイムシアターという1時間ものの短編演劇をよくやっておられるんですが、今回は通常の2時間もの。
さらに、お得意のタイムトラベル物ということで、それだけで期待感を煽られてしまいます。

大阪公演がスタートで、この後、名古屋、東京と公演は続くので、ネタバレにならない程度にお薦めをば。

書店で働きながら翻訳家を目指す日高まひろ。
付き合って半年の恋人、森岡にカフェでプロポーズされ喜んでいたところ、見知らぬ男性がやってきてこう告げる。
「彼と結婚してはならない。不幸になる。」
とんでもない言いがかりに憤慨するまひろだったが、その男性はなぜかやけにまひろの事に詳しく、友人の恵菜の妊娠までも言い当ててしまう。
男性の真意を「なぜそんなデタラメを言うのか?」と尋ねるまひろに、彼は言った。
「僕は君の未来を知っている。」

キャラメルボックスはオリジナル作品の「銀河旋律」をはじめ、北村薫さんの「スキップ」、梶尾真治さんの「クロノス・ジョウンターの伝説」など様々なタイムトラベル物を上演されています。
今回の「あなたがここにいればよかったのに」は、ケン・グリムウッドが1987年に発表したSF小説「リプレイ」に着想を得ています。

物語の主人公は桜花大学付属病院の医師・天野大志……なんですが、一般的なタイムトラベル物の作品と違うのは、物語の視点が主人公であるタイムトラベラーに無いところ
今を生きるヒロイン・日高まひろの視点から物語を組み立てるため、天野の発言や行動はあまりにむちゃくちゃに思えてしまいます。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」であれば、マーティではなく父親のジョージや母親のロレインから見るような感じ。

まひろの結婚をどうしても阻止したい天野と、恋人を信じようとしながらも天野の言葉に揺れるまひろ。お互いの強い思いがぶつかり合う中、まひろを見つめ支える周囲の人物たちの思いも包まれ物語は進んでいきます。

主人公の天野大志を演じるのは入団12年目の中堅・筒井俊作さん。主演は昨年夏の「ジャングル・ジャンクション」に続いて2回目なんですが、ちょっと丸め(でも体脂肪率は1桁でガチムチ)の体型で、二枚目と言うわけではないので、どちらかというと物語の脇を固める役どころが多かった俳優です。
そんな筒井さんでしたので、どうなんだろ? と物語が始まるまでは不安に思っていたのですが……いや、失礼なことを言ってしまいました。この物語の天野大志という男性は筒井さんしか考えられません。
実直で、不器用で、まっすぐにまひろ(と、彼女を包む周りの人々)の幸せを願って、一生懸命走り続ける姿には強烈な共感を覚えます。

恋人を信じるまひろの思い、娘を大事に思う父の思い、友人を支える恵菜の思い、才能を信じる英子の思い……「人が人を想う気持ち」を描くキャラメルボックスのメインテーマをはっきりと写しています。
それぞれにとっての”幸せ”の行方は誰にも見えませんが、幸せを探し続けて一生懸命、愚直に生きる大切さを改めて感じさせる物語です。

20140225Caramelbox02大阪公演は終了しましたが、3月1日(土)、2日(日)は名古屋・名鉄ホールで、3月6日(木)から3月23日まではホームグラウンドの東京・サンシャイン劇場で上演されます。
キャラメルボックス版「リプレイ」お薦めです。

 

個人的な蛇足(ちょっとネタバレ)を二つ。
「観終わってからよんでください」(公演パンフからパクってみました)

来場記念品
来場記念品

サポーターズクラブ(ファンクラブ)会員は、公演ごとに来場記念品を頂けるのですが、基本的には「もらっても役にたたないもの」が選ばれています。
今回は「ヒトミ」が物語に登場する下田あじさいホテルの歯ブラシと歯磨き粉。「あなたがここにいればよかったのに」は、天野が勤務する桜花大学付属病院からのお薬(ラムネ)。

……アホや。「ヒトミ」は2004年の公演でも同じ来場記念品だったらしいです……このセンス大好き。

も一つ。「あなたがここにいればよかったのに」の元ネタとなった小説「リプレイ」。この小説を読んでいる人は知っていると思うのですが、主人公は「何度も××××!」。と、なると……天野の未来が不安に思えて……ちょっと怖い気持ちにもなります。
もちろん、まひろに接している天野は精一杯「今を生きている」ので良いのですが。この物語のアフターストーリーを見てみたような見たくないような……いや、こういう見方をしない方が良いんだろうなぁ……役者さんたちは「リプレイ」を読んでいたら、どう考えて演じておられるのか気になったりします。