タイムトラベルな日々:K.グリムウッド「リプレイ」

infoこの記事は2014年3月5日に書いたものです。
現在とは紹介させていただいている内容が異なる可能性がありますのでご注意ください。

先日、キャラメルボックスの「あなたがここにいればよかったのに」を観劇してきました。

劇団お得意のタイムトラベルを題材にした作品だったのですが、改めてタイムトラベル物が好きやなぁと思った訳でして。
で、ちょっと自己満足的に「タイムトラベルな日々」と称して、好きなタイムトラベル物を紹介してみようかなと思った次第。

まずは、「あなたがここにいればよかったのに」の元ネタと言いますか、アイデアの出発点になったというケン・グリムウッド「リプレイ」をご紹介。

リプレイ」は1987年にアメリカで出版されたSF小説。翌1988年には世界幻想文学大賞を受賞している名作です。

物語はニューヨークの小さなラジオ局でニュース・ディレクターとして勤めているジェフが43歳の秋に心臓麻痺で突然死する所から始まります。
ところが、彼は死んだと認識すると同時に、再び目覚めます。場所は自身が過ごしていた大学寮のベッド、そして気づきます。
彼は18歳からの人生を”リプレイ”することになったということを。

一方通行型のタイムトラベル物です。
主人公のジェフは43歳までの経験と知識を持ったまま、18歳にタイムスリップしてしまいます。
人生の”リプレイ”で、未来の記憶を頼りにお金を儲けて……

過去に遡られるなら、試してみたいと思えるそんなシチュエーションから物語は転がっていくのですが、もちろんそんなに「うまい話」がある訳がありません。
大金持ちになり、音楽の才能を持った娘と幸せな日々を迎えていたジェフは、43歳の秋に再び命を失います。そして、目覚めると再度18歳……

怖くなってしまいます。
2度目の”リプレイ”が始まる時にジェフが感じた喪失感を、読んでいる自分も存分に抱え、そこからはジェフの物語にどっぷりとはまり込んでしまいます。
SF作品と言うよりある意味、ホラーに近い恐怖を覚えてズンズンと読み進めるのですが、終盤になっても心に感じる痛みは強くなるばかり。
最後までジェフの苦しさを感じ続けながら、それでも最後の最後に微かな「救い」がもたらされます。

爽快なストーリーではありませんが、ジェフが最後に「知った」ことを読んでいる私に刻んで物語が閉じられます。
そのあとエピローグが続くのですが、これがまた秀逸なんです。

ウチがこの小説を読んだのは22歳の時。
好きだった女性に木っ端みじんに振られて、自暴自棄になっていた時期でした。
「リプレイ」を読み始めた時には、ジェフと同じように18歳に戻れたらなぁと思ったのですが、小説を読み終える頃には、元気に……とはならなかったのですが、それでも「うんうん、前を向こうね」とは思えたのでした。

さて、ジェフが命を失って”リプレイ”を開始した年齢にウチも近づいてきました。
18歳に戻りたいかと言うと……いや、いいかな。戻らなくても。

ABOUTこの記事をかいた人

があ

大阪生まれ・育ち・勤めの闘う(?)公務員。 一般事務職で採用されたのに、今や福祉職だと勘違いしている人が大多数。濃い顔付きから沖縄人やらアラブ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ-