P.T企画「奇巌城の白昼夢」メタな極上体験型ミステリ

memo以前、「ネタバレしないように」とレビューを書いたのですが、主催者側と「ネタバレ」の認識に差異があったので、公演期間中は本当にネタバレしない程度で書いて、公演期間終了後にちゃんと感想を書きたいと思います。

(2016.9.25追記しました)

奇巌城の白昼夢

P.T企画がプロデュースするロールプレイング・ミステリー。
主に「ミステリ名作選」と題して、古今東西の”名探偵物”のミステリを観客参加型のお芝居を様々な舞台で公開しています。今回の舞台は西区にあるレトロな細野ビルヂング

そして今回はそのスペシャル版。「4年ごと」というので、嘘やろ? と思ってたら、本当に前回のスペシャル版は確かに4年前でした。前回の「インディアン島の白昼夢」も素晴らしかったので、今回も期待していたのですが……やっぱり良かったよ!

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名探偵と話せる!

名探偵諸君、、突然の無礼を許して欲しい。
私は宣言する! フランス史に葬られた宝を手に入れると。
そう、あの奇巌城の宝「エギーユ・クルーズの秘密」を取り戻すのだ!
しかし、ただ奪還するのでは面白くない。
是非、名探偵諸君との知恵比べを楽しみたいと思う。諸君が勝てば、宝は諦めよう。
諸君が負ければ、私は宝と共に、名探偵を屈服させたと言う名声をも手に入れるのだ。
どうだ? なかなか面白い趣向だろう?

この招待を受けてくれるのならば、エトルタにある私の館に来てくれたまえ。
私は大いなる歓待と共に、魅惑の謎の森へと、諸君を迎え入れるであろう!
なお。この趣向には古今東西の著名な名探偵達も招待してある。
我が友・ホームズ君を始め、ポアロ君、ミス・マープル、エラリー君、明智君、そして火村君だ。
彼らと共に、是非とも私の招待を受けてくれたまえ。
そして彼らと力を合わせながら、時空を越えた知恵比べを楽しんで頂きたい。

~怪盗アルセーヌ・ルパンより愛を込めて~

エトルタにある館に集められた名探偵(=観客であるウチら)とシャーロック・ホームズをはじめとする著名すぎる名探偵がエトルタの館(=細野ビルヂング)に集まり、正体の分からない怪盗アルセーヌ・ルパンとの対決をするという物語。「ロールプレイング・ミステリー」とのとおり、物語の導入部のお芝居をみたあと、60名の観客は館の中を名探偵と一緒に歩いて、推理して、怪盗アルセーヌ・ルパンと対決します。

それって、いわゆる「脱出ゲーム」とかと同じやんって言われそうですが……いや、ちゃうねん。「本格ミステリ」やねん。推理時間中は、6人の名探偵とも館内で話せる機会があるので、ものすごく楽しいです。6人ともちゃんとホームズだったり、火村だったりするので。もちろん、ホームズもミス・マープルも、ポワロもエラリーも日本語で喋るんですよ、うん。でも、それは子どもの頃から読んでいる翻訳されたミステリ本から飛び出してきたようにしか思えない楽しさなんです。

スペシャル版は、時代背景の違う名探偵が集まっているので、物語もオリジナルで、お芝居の中身も「メタ」な会話が満載なんですが、ミステリマニアにはその「濃さ」もたまりません。
何より、そのオリジナルストーリーがミステリマニアには「結構刺さる」んです。

脱出ゲームの中にも原作物など、設定が作られていたり、映像などでその世界観が作り込まれているものもありますが、本格ミステリというニッチな世界で、役者の演技も含めて楽しめるものはそうありません。
個人的には今回も大惨敗だったのですが、6人の名探偵を知っている人には間違いなく楽しめると思います。

とにかく、ミステリが好きならこの3連休に、ぜひこの舞台を味わって欲しいです。19日はまだ座席空いているみたいですよ!

マニアックな超展開から、本格推理に移行するのがたまらない

と、いうことで公演も終了したので、ネタバレ込みで追記。

細野ビルヂングに集まった観客は、ホームズらと同じ「ルパンに集められた名探偵」という設定(日本人だけなのはご愛敬)。開演時間になると前触れもなく順々に本物の名探偵たちが部屋に。
私たちより先にここに着いて、館を見て回っていたという話からスタートします。

そして展開されるのが、ミステリマニア向けの名探偵同士の会話劇。物語のベースになっている奇巌城事件との関わりが唯一あるホームズをネタに、「あの事件に登場した私は、別人だ!」と言わせた(奇巌城事件を書いたのはルパンの作者のモーリス・ルブランで、ホームズの作者は関わっていない)り、同じ作者のミス・マープルとポワロはどちらが作者に愛されていたかと話したり、火村はその他の名探偵には通じない最近の言葉でツッコんだりと、マニアにはたまらない超展開が続きます。えーと、歴代ライダー大集合とかスーパーロボット大戦とか、分かる人には分かると思いますがそんな感じの楽しさです。

そんな中でルパンに雇われているメイドから、ルパンからのメッセージとして手紙が渡されて館内の7つの部屋の説明、そして今回の目的が「誰がルパンなのか?」という謎かけがされます。
名探偵達は自身が見ていない部屋へ連れだって行ってみたり、引き続きマニアックな会話を続けています。

この問題編の名探偵の行動や会話がヒントになるのはいつものとおり。この段階で、6人の名探偵のうち2人はルパンじゃないこと分かりましたよ。うんうん。順調順調。

そして、問題編が終了すると行動パート。7つの部屋を回って、それぞれの部屋に置かれたお宝などを確認します。ルパンから提示された「部屋にばらまかれている金の粒と暗号をセットにしたら、名探偵にヒントをもらえる」というルールにそって、名探偵とも話をすることができます。

ここで、もう一つ違和感が……部屋がおかしいんです。青いお宝が設置されている「紺碧の間」に赤いソファーが、赤いお宝が設置されている「薔薇の間」には赤いドレスに白い薔薇が、ルパンからの手紙と明らかに状況が一致していないんです。なんだ、この違和感は。

そんな部屋の状況を確認してから、推理開始。……うーん、分からん。ポアロとミス・マープルが宝の位置を動かしたことが会話で示していたので、「誰かが宝の位置を変えた」という理解で推理を進めていくんだけ、「なぜ、そんなことをしなきゃいけないのか?」の説明が……と、いうところで最後はエイやで推理を書き上げてスタッフに提出。

オリジナルストーリーが「刺さる」

解答編。名探偵の推理が始まります。
エラリー・クィーン曰く「全ての情報を正しい位置へ」。論理的な帰結で、ルパンが誰なのかがあぶり出されます。

やられた……

その人がルパンという可能性は排除していなかったんですが、部屋の状況が「なぜそうなのか?」という点を推理に繋げられなかった……私の推理は惨敗です。

推理ゲームとしてはルパンが誰か分かった時点でおしまいなんですが、これはお芝居。実はルパンが誰か分かった後のお芝居が凄かった。ルパンが名探偵と対峙しながら、奇巌城事件との関連から緊迫の直接対決。推理ゲームを忘れて見入ってしまいました。

その後は、名探偵がそれぞれ退場……自らの世界に帰って行くのですが、それぞれ「あぁ、この人ならそう言いそう」な台詞がミステリマニアにはびしばし刺さります。最後に退場する火村なんて「またアリスの(ホームズらの名探偵の)話を聞いてやるか」なんて言ったりして。痺れますね、この台詞をチョイスするなんて。

いや~本当に楽しいお芝居でした。4年に1回なんて言わないで、1年に1回くらいこのスペシャル見てみたいなぁ。

公演名 ルパンからの挑戦状「奇巌城の白昼夢」
公演期間 2016年9月15日(木)~19日(月・祝)
場所 細野ビルヂング
サイト 公演ホームページ(ブログ) / 劇団公式Facebook / 劇団公式Twitter

ABOUTこの記事をかいた人

があ

大阪生まれ・育ち・勤めの闘う(?)公務員。 一般事務職で採用されたのに、今や福祉職だと勘違いしている人が大多数。濃い顔付きから沖縄人やらアラブ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ-