二階堂黎人「クロノ・モザイク」

クロノ・モザイク

中学生の上条友介は突然、時間を飛び越える現象に見舞われるようになる。五年後に恋人の菱村美沙緒が惨殺されることを知った友介は、現在と未来を行き来しながら、恐怖の運命を変えるべく知力と体力の限りを尽くす。

本格推理小説の書き手である著者が物に挑んだ作品。

導入部から、中学生の上条が未来に跳んで、いきなり目の前で付き合いのない同級生が殺されるシーンからスタート。らしい展開を絡めたタイムトラベル物かと思いきや、謎の生物が登場したり、幼なじみの女の子との恋があったりと詰め込み感が物凄くあって、どうにも消化不良。

タイムトラベル物の面白さって、過去の行動が未来に影響したりタイムパラドックスに悩んだりといった時間の流れを題材にしたミステリチックなところだと思うので、ミステリ作家がどう料理するのかと思ったんですが、どうにも題材が二階堂黎人さんに合わなかったような気がします。
時間旅行の法則が曖昧だったり、過去の行動のツケが未来でほとんど見えなかったり、一番残念だったのは幼なじみの女の子が持った能力……いや、その後出しはミステリ作家としては無しでしょ。

タイムトラベル物は様々な作家さんが、様々な手法で物語にしているので、ミステリとの相性は決して悪くないとは思うのですが、高畑京一郎さんの「タイム・リープのようにきちっきちっと、どの時間帯がどうなってるというところがすっきりとしていたらもう少し印象も変わったかもしれません。

ちょっと残念でした。