話して伝える技術がある@加藤昌史「10秒で人の心をつかむ話し方」

32年間、総数4,000回以上

製作総指揮、代表取締役、劇団のトップでありながらお芝居の開演前、「ちょっとした注意事項としつこくて長い宣伝」のために前説に立ち続けるのが、この本の著者・加藤昌史さんです。

加藤昌史「人の前に出る仕事の人へ。」常に上機嫌であれ

2015.12.06

以前、このブログでもご紹介した「人の前に出る仕事の人へ。」では、加藤さんがTwitterで呟いたツイートを中心に「人に思いを伝え、人と気持ちを通わせるヒント」を記したものでした。いかにも加藤さんらしい読者への配慮が行き届いた本で、今でも自分が普段座っている場所から手が届く本棚において、不意に思いついてパラパラと読み返して見る一冊です。

今回は、その「人の前に出る仕事の人へ。」から一歩進めて、「話して届ける技術」という加藤さん自身の仕事の本質をギュッと搾った一冊になっています。

最初の10秒に込めるものはなにか

畑中:キャラメルボックスの公演を観に行ったら、開演前に加藤さんが前説でしゃべっているのを見ましたけど、よくまぁあんなに隙間なくしゃべれますねぇ。
加藤:うるさかったですか?
畑中:それが、最初は“なんだコイツ?”と思ったんですけど、あ、すみません、悪い意味じゃないです、でも、気がついたらスマホの電源もちゃんと切ってたし、“さぁ、観るぞ”っていう気持ちになってました。

社会人3年目の営業マン・畑中トモユキが、前説のプロ・加藤さんにそのコツを聞くという形で全編が構成されています。

私が加藤さんを意識して見るようになったのは2001年に新神戸オリエンタル劇場で上演された「ブリザード・ミュージック」という舞台だったように思います。その時の印象は、まさにこの引用させていただいている通りで、開演前数分前に走りながら舞台に出てきてまくし立てるようにアシスタントの劇団員(畑中智行さんだったような気がするんだけど、当時のキャスト表見てるとグリーンチームで出演してるんだよなぁ。記憶が曖昧)と、前説を繰り広げていました。

もう15年以上経ちますが、色々なお芝居やエンターテインメントの舞台を見に行く度に色々な前説を見ていますが、改めて加藤さんの前説を思い起こすと、そのどれらよりも「伝わってくる」感が強いように感じます。では、その差は何か? ということが「最初の10秒間」に凝縮されているというのです。

この本ではその「最初の10秒間」に必要なものを「声」「顔」「姿」という3つの視点でどういう所に気を遣えば良いかということを語った上で、テクニックに入って行きます
自分自身の「いい声」の見つけ方、大きい声と「通る声」の違い、自然に見せる視線の位置……などなど、実践者だからこそ分かる視点のアドバイスは適切で分かりやすく、「プレゼンって苦手やねん」という人にもすっと心に入ってくるんじゃないでしょうか。

また、章と章の間には実践編のコラムとして、劇団の俳優で「COUNT DOWN TV」のアビー君などの声を担当している声優の石川寛美さんが、プロとしての声の出し方を一般の人でもできるような形で紹介しているので、「おぉ、やってみよう」という気にさせられます。

第5章の「自己紹介を必殺技にする」ってのは、私自身が広報担当になった今やから凄く影響を受けそうなところでした。
メシコレさんで、私は「45分のランチタイムに命をかける「食の都」大阪の闘う公務員」というキャッチコピーでやっているんですが、仕事の場ではなかなか使いにくいキャッチコピーなので、ちょっとビジネスの場で使えるキャッチコピー考えてみたいと思います。

加藤さんに次に会えるのは秋の公演ですね。お会いして話したい気持ちが益々高まりました。