劇中撮影OKタイムあり。息つく暇ない逃走劇。/Caramelbox「ゴールデンスランバー」

劇中撮影OKタイムあり。息つく暇ない逃走劇。/Caramelbox「ゴールデンスランバー」

ゴールデンスランバー バナー

伊坂幸太郎さんが書いて、その後、堺雅人さん主演で映画化された「ゴールデンスランバー」。めっちゃめちゃ面白い作品です。
それを舞台化と言われると「おいおい、あのシーンどうやって再現するのよ」と思うのが常。ところが、舞台化するのがキャラメルボックスになると、それほど心配しなくて大丈夫。北村薫さんの「スキップ」や東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」、さらには普及の名作SFであるロバート・A・ハインラインの「夏への扉」までことごとく舞台化して、それどれもが原作ファンを満足させ続けてきた同劇団。
期待感で一杯にして、神戸公演の千穐楽に行ってきました。

シンプルだからこそ浮かぶ景色

その日、杜の都・仙台では、地元出身の総理大臣の凱旋パレードが行われていた。宅配便ドライバーの青柳雅春は、大学時代の友人・森田森吾に呼び出される。森田は青柳に「おまえは首相暗殺犯に仕立てられる」と言った。ちょうどその時、近くで大きな爆発音。ラジコンヘリが首相を直撃して、爆発したのだ。驚く青柳の目の前に警官が現れ、拳銃を向けた。青柳が逃げ出すと、背中から打ってきた……。
やがてテレビでは、青柳が現場付近にいたこと、ラジコンヘリを購入したことが次々と報道されていく。はたして青柳は逃げ切れるのか?

金田首相の凱旋パレード、そして暗殺から始まるストーリー。仙台市を舞台に青柳が走り回る劇団の芝居では最大の41カット、演じる役者さんは二役、三役は当たり前。
冒頭から金田首相の暗殺や、森田と乗っていた車の爆発など「映像にするならこうですよね」というシーンが続くのですが、そのそれぞれをシンプルな舞台構造で次々と表現していきます。
キャラメルボックスのお芝居は基本的に暗転でシーンチェンジをすることはないので、今回の舞台構造は大正解。まるで集団行動のような定められた動きが、ごく自然にシーンチェンジを促して、またそれが逃亡劇という息をつく暇もない展開にバッチリあっています。

それに合わせて凄いなあというのが「見えないものを映し出す力」。目の前には見えない車が、花火が、役者の台詞や身体表現で観ている側に想像させるというのがいかにも演劇で素敵ですよ。
個人的には主人公の青柳が階段を走り上がるシーンが好き。あ、もちろん舞台上には階段なんてありませんよ。

キャラメルボックスのお芝居は、どんな内容であってもクスッとさせる緊張と緩和のバランスが良いのですが、今回はかなり控えめ。と、いうよりはぶち込む間もないテンポの良さなのかな。

ありえない劇中撮影OKタイム

ゴールデンスランバー 劇中写真

映画、お芝居を観るときはスマホの電源OFFは当たり前。
キャラメルボックスではカーテンコールで撮影OKタイムを用意することもあったのですが、今回、凄いのは劇中に撮影OKタイムを設定していること。

ゴールデンスランバー 劇中写真

原作を知っている方は「あぁ、あのシーンかぁ」と思うかも。観客までもこのお芝居の登場人物になって、演出に組み込むというなかなか凄い話。普段は「音を出しちゃダメ」が、シャッター音をガンガン出してくださいというのは演劇ではあまり考えられないですよ。めっちゃ楽しいです。

ちなみに今回は取れてた座席が舞台下手だったんですが、舞台上手へのサービスがうらやましかったなあ。

ゲスト出演の二人があり得ない

ゲスト出演の一色洋平さんは、一つ前の公演「嵐になるまで待ってから続いての出演。映画版では濱田岳さんが演じたキルオ役なんですが、これがドはまりしています。まぁ、とにかく躍動感が凄くて、それでいてあのキルオらしい飄々とした雰囲気がきちんと表現されています。「びっくりした?」、ええ、びっくりしましたとも。

そうそう、一色洋平さんと言えば明日の開演時間を教えちゃうよ刑事」。毎日楽しみにしています。これからちょっと他の舞台でもおっかけてみたくなっちゃいました。

もう一人のゲスト出演は悪い芝居の作・演出をされている山崎彬さん。キャラメルボックスのお芝居では良くある物語を語るストーリーテラーの役割。ほぼ出ずっぱりなんですが、要所要所できちっと締める台詞があって格好良すぎます。
悪い芝居」の舞台、まだ観たこと無いんやけど、これは観に行かなきゃなぁ……関西の劇団ですし。

もちろんゲスト以外の劇団員のお芝居はとても素敵。
悪役が似合う黒い岡田達也さんも、テレビや映画の出演も増えた阿部丈二さんの見事すぎる演じ分けも、青柳じゃ無くても好きになっちゃうよと思ってしまう魅力的な声の持ち主の渡邉安理さんも、どれもこれもが「おお」と思ってしまいます。

千穐楽のお楽しみ

キャラメルボックスのクリスマス公演の千穐楽のお楽しみと言えば、役者さんからのキャラメル配り。
山崎彬さんから頂きました。いやぁ、カッコいい、ホントに。
この日のステージには主演の畑中智行さんのお母様も来場していて、岡田達也さんにいじられてましたが、そういうのも含めて大盛り上がり。

そして、何より今回の神戸公演千穐楽のトピックスはその後の三本締め。締め職人と呼ばれる役者さんが無き今、今回は阿部丈二さんが担当したんですが、これがあり得ないほどの大爆笑。
東京公演で同じことをするとは思わないのですが、詳細は当日劇場に来た皆だけの秘密ということで。
っていうか、どこまでが仕込みで、どこまでがアドリブなんやよ!

終演後には、劇場の外にちょっとしたサービスが。
ですよね、このお芝居観たら、絶対にこれやりたくなっちゃう。とっても楽しいお芝居でした。

今日から東京公演。クリスマスまで突っ走っちゃってください。

公演名 キャラメルボックス2016クリスマスツアー「ゴールデンスランバー」
公演期間 [神戸]2016.11.30(水)~12.4(日)
[東京]2016.12.10(土)~25(日)
場所 [神戸]新神戸オリエンタル劇場
[東京]サンシャイン劇場
サイト 公演詳細ページ

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があ

大阪生まれ・育ち・勤めの雑食系公務員。 福祉職だと勘違いしている人が大多数ですが下っ端事務職。濃い顔付きから沖縄人やらトルコ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ~

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