- 2017年12月31日
キャラメルボックス「ティアーズライン」年末なのにクリスマス
今年最後の観劇は、いつものキャラメルボックス。とはいっても、いつもならそろそろクリスマスソングが聞こえるかなという11月……
キャラメルボックスの得意技、60分の短編演劇2本だて。ハーフタイムシアター「君をおくる/水平線の歩き方」の大阪千穐楽に行って参りました。
なんたってキャラメルボックスのオリジナル作品の中でも大好きな「水平線の歩き方」が2008年の初演から7年で早くも再再演なのも嬉しいのですが、「君をおくる」の脚本が大阪を拠点にしている劇団「空晴(からっぱれ)」の岡部尚子さんが書いているのも嬉しいところ。やっぱりね、地元に応援したい劇団があるってのは良いもんです。
アパートの一室。
大阪から帰ってきたキミエは、「先輩から頼まれた」というキミジマと一緒に荷ほどきをしていた。
そこに、引っ越し屋さんの領収書を持って松尾がやって来て……
「水平線の歩き方」の舞台であるアパートの別の部屋で起こる物語。
引っ越しの荷ほどき中ということで、部屋には段ボールの山。この舞台設定だけで、もう空晴らしいなぁと思いながら見始めます。
物語は、母を残して飛び出すように年の離れた夫について大阪へ行っていたキミエが帰京した理由を軸に展開しますが、部屋の主であるキミエも含めて登場人物が入れ替わり立ち替わり部屋に登場して、それぞれがそれぞれに勘違い。
言葉のやり取りの中から生まれる勘違いや人違いが、物語の中盤で次々と明らかになって爆笑に変わるのは空晴ではお馴染みの光景。
中盤を過ぎると、そんな大爆笑の中から、キミエを中心にしたそれぞれの登場人物の「思い」が明らかになっていきます。その「思い」は重たかったり、強かったり、苦かったりするんですが、それぞれがそれぞれに「人が人を思う気持ち」に溢れていて、気がつくと前のめりになって物語に入り込んでしまいます。
そして沢山のきっかけの後に、キミエも心を揺さぶられて、自分の「思い」を大事に駆けだしていきます。
「行ってらっしゃい!」
たったそれだけの言葉のラストシーンに、観ているこちらもガツンと心を揺さぶられます。
終演後、ロビーで制作総指揮の加藤昌史さんを見つけたので、「思いっきり空晴でしたね。」というと、「ウチの役者、空晴好きですからね。」と。
いつものキャラメルボックスのお芝居とはまた違う空晴の俳優さんは一人も出演していないのに、キャラメルボックスの俳優さんが客演しているかのような不思議な雰囲気のお芝居でした。
キミエが駆けだしていくシーンで、キミエにある思いを持っているキミジマの「行け行け~!」って言葉なんて、本当に空晴らしくて、胸が一杯になっている時につい笑っちゃいますよ。
そのうち、二つの劇団がそれぞれガッツリと組んだお芝居も観てみたいなぁ……
そうそう、こちらのお芝居の段ボールを使ったダンスシーンももの凄く素敵でした。ついついYouTubeで反芻中。
岡崎幸一は35歳。社会人ラグビーの選手。
ある夜自分のアパートに帰ると、部屋の中に女がいた。
どこかで見た顔。彼女はアサミと名乗った。
それは、幸一が小学6年の時に病気で亡くなった、母だった。親子二人で暮らした日々が、幸一の脳裏に鮮やかに蘇る。
あの頃、母は大人に見えた。
が、今、目の前にいる母は、明らかに自分より年下だった……。
「水平線の歩き方」はラグビー選手の岡崎幸一と23年前に死んでしまった母とのゴーストストーリー。
個人的には、ここ10年にキャラメルボックスが製作したオリジナル作品の中で一番大好きな作品。2008年の初演時は、劇団の代表作の一つ「ハックルベリーにさよならを」とのカップリングで、どちらかというと「水平線の歩き方」はおまけくらいの気持ちだったんですが、終演後は目が真っ赤に。
ちょうど初演時に主人公の岡崎幸一と同じくらいの年齢だったのが一番大きかったんだと思うんですが、母親のいない23年間を語り「一人で生きてきた」という幸一に、自分よりも年下になってしまった母親が一直線に思いを伝える言葉にガツンとやられてしまいました。
しかもその次のシーンで、幸一が23年間で繋がってきた人たちの言葉が次々と降りそそいでくるので、もうね、たまらないですよ。
自分自身の母親は看護師でもなければ、今も元気に暮らしていますし、両親兄弟にも恵まれて幸一と同じ年まで暮らしているのに、なんなんでしょうこの思いは。
3回目の再演になる今回。2011年の再演時と演出的には大きく変わっている感じはしないのですが、なにしろ岡崎幸一とアサミ、幸一の彼女のアベチカコ、そして育ての父親になる叔父の勇治が再演時と同一キャストなので、もう実在する人物にしか思えないくらいの存在感。
あっという間に初演時、再演時、自宅でDVDを見返してきた時と同じように物語に入り込んで、やっぱり涙が溢れてしまいました。
ダンスシーンに流れるメレンゲの「君に春を思う」を聞くだけでスイッチ入っちゃいますけどね。
大阪の公演は終わっちゃっいましたけど、今回は「水平線の歩き方」をグリーティングツアーとして大阪のあと仙台、山形、岐阜、愛知、岡山と回るので、お近くの方はぜひにとお薦めしたいなぁ。
次の公演はすぐ一ヶ月後に新神戸オリエンタル劇場で。
30周年のラストを飾る作品なので、気合いが入っているのか既に舞台模型や一部キャスト名が公開されています。
ん?? シアタームーンライトって「ブリザード・ミュージック」の舞台ですやん。柿本光介に久里子って「銀河旋律」シリーズの二人やないですかっ!
なんか過去のキャラメルボックスの作品を観ている人には尚楽しいという感じになりそう。加藤さんが前説で唾を飛ばしてしまいながら言うてた「これ観なあかんやつ」の言葉、信じちゃって良いんですかね。
あ、クリスマスツアーと言いながらもキャラメルボックスさんは12月は東京に帰っちゃうので、ぜひその後は「君をおくる」で脚本を書いた岡部さんの空晴も。
ウチは空晴さんで今年の芝居納めをするつもり……
お芝居って本当に良いですよ~。大阪にも素敵な劇団があるのでぜひ一度お試しを。。
公演名 | キャラメルボックス2015ハーフタイムシアター「君をおくる/水平線の歩き方」 |
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公演期間 | [東京]2015年10月8日(木)~12日(月) [大阪]2015年10月16日(金)~18日(日) ※以下はグリーティングツアーとして「水平線の歩き方」を上演 [仙台]2015年10月20日(火) [山形]2015年10月22日(木) [岐阜]2015年10月25日(日) [愛知]2015年10月28日(水) [岡山]2015年10月31日(土)・11月1日(日) |
場所 | [東京]東京グローブ座 [大阪]サンケイホールブリーゼ [仙台]電力ホール [山形]シベールアリーナ [岐阜]大垣市民会館 [愛知]穂の国とよはし芸術劇場PLAT [岡山]おかやま未来ホール |
サイト | 公演情報ホームページ |
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