- 2015年3月6日
キャラメルボックス「パスファインダー」新作のクロノスシリーズ
キャラメルボックスの30周年・第1弾の隠し球はなんとクロノス・シリーズの新作でした。梶尾真治さんが書いた短編集「クロノス……
キャラメルボックス30周年公演の第3弾は、筒井康隆さん原作のタイムトラベル小説の名作「時をかける少女」。
時をかける少女と言うと、ウチなんかは原田知世さんが主演した1983年の映画版で、ついついタイトルを聞いた瞬間に「と~き~を~♪」と歌ってしまうんですが、4度も映画化(一つは細田守さんのアニメ映画)されているんですね……
キャラメルボックスを率いる加藤昌史さんや脚本・演出の成井豊さんは、ウチからするともう少し上の世代なので、映画よりも1972年にNHKで放送された「タイムトラベラー」から原作という流れで「時をかける少女」に接したとのことですが、30周年にあたってやってみたい原作物ということでこのチョイスになっています。
札幌に暮らす高校2年生の尾道マナツ。伯母の芳山和子が目の病気で入院することになって、両親に頼まれて夏休みに5年ぶりに東京へ。
幼なじみの竹原三奈やその兄の輝彦と再開し、輝彦が伯母の教え子になっていることをしったマナツは、翌日、伯母に付き添って大学へ行くのだが、怪しい人影を追って入った実験室でラベンダーの香りのする白い煙を吸い込んでしまい……
筒井康隆さんの原作「時をかける少女」の32年後を描いた作品。
アニメ版の「時をかける少女」から、さらに時間が経って原作の主人公・芳山和子はこちらでは大学で教壇に立っています
新しい主人公の尾道マナツは、タイム・リープの能力を得て、その謎を解こうとしている内に伯母も高校生の時にタイム・リープを経験していたことを知ります。伯母のタイム・リープのきっかけになった深町一夫が関わっているのではと思いタイム・リープをくり返すのですが……
原作の「時をかける少女」が刊行されたのは1967年。ほぼ半世紀前の作品ですので、細田守さんのアニメ版同様、キャラメルボックス版では原作を踏まえた現代の「時をかける少女」になっています。
じゃあ別物? というと、そうではなくて、原作での芳山和子と深町一夫の関係がこの作品で描かれており、原作やウチも見た原田知世さんの「時をかける少女」を知っている人にも「うわぁ」と思う内容です。
キャラメルボックスの原作物は原作を忠実に舞台化するものと、原作を尊重してアレンジするものがあるのですが、今回の「時をかける少女」は後者。原作、映画の「時をかける少女」の芳山和子と深町一夫のそれからを描きながら、全く前知識のない人にも今回の主人公・尾道マナツを中心にした「時をかける少女」を楽しめるようになっています。
キャラメルボックス「時をかける少女」ようやく観ることができました。
たっぷり笑って、笑って泣かされて。くそーっ、泣くつもりなんてなかったのに。キャラメルボックスらしさの詰まった素敵な時かけでしたっ! #キャラメルボックス pic.twitter.com/Wvq2U2pzP6
— 山中正則(があ)@大阪 (@gar_osaka) 2015, 8月 21
マナツが気ままにタイム・リープをくり返して、同じ日をくり返す中で少しずつ異なる時間を過ごしていく物語そのものの面白さと、登場人物それぞれのクスッとさせられる言動で物語にのめり込んでいく前半、ラベンダーの煙の秘密と伯母の記憶が蘇る終盤の構成は本当に見事としか言いようがありません。
芳山和子と神石雄三の物語にグッと来て、つい泣きそうになってなんとか我慢したのに、輝彦が大学の人や家族、そしてマナツに取った行動でとうとう涙腺崩壊。くそーっ、本当に泣くつもりなかったんですよ。
ちょっとしんみりしていたら、マナツのラストの台詞についまた笑みが漏れてしまいました。そうだった、キャラメルボックスの舞台はそうだった、と泣き笑いの顔で終演。
シンプルな舞台装置の演出や、タイム・リープ時の時が逆回転するフラッシュのような演技も、ウチらよりもっとオールドファンになると、物語のオープニングを飾るダンスシーンに使用されている原田真二さんの「タイムトラベラー」にやられたっ! という人もいる模様。本当に目一杯楽しませていただける2時間でした。
それにしても尾道マナツを演じた劇団史上最年少ヒロインの木村玲衣さんは本当に素敵だった。
劇団のニコ生で先輩にも物怖じせず笑顔を振りまいている女優さんなんですが、とても初主演とは思えないほどの堂々とした魅力ある姿を見せています。
主人公の尾道マナツの言動や雰囲気は、細田守さんのアニメ版の主人公・紺野真琴を感じさせるところがあって、あ、そうか親戚なんだよなと思ったり、2時間一度も舞台脇に消えることなく、演じ続けている姿をみているだけでこちらまで元気になれそうな気がします。
もう一人の主人公といって良いマナツの伯母、初代時をかけた少女の芳山和子さんを演じたのは劇団の魔女、坂口理恵さん。マナツと同じ経験をしていて、今は円熟した大人の女性という対照的な立場なんですが、やっぱり凄いです。
封じられた記憶が蘇った瞬間の表情は本当に必見です。
二人の時をかける少女を支える男性、客演のD-BOYS・池岡亮介さん、劇団OBの近江谷太朗さんはやはり物語のキーになる役割があるのですが、それぞれ大人の神石(近江谷)、大学生の輝彦(池岡)と世代の違うスタンスが対照的で面白いですし、それを活かす物語になっています。
特にラストシーンに至る過程でそれぞれのヒロインへの思いや立ち居振る舞いが印象的でした。
あー、素敵な「時をかける少女」でした。
公演は8月24日(月)まで。仕事無ければ千穐楽に行きたいんだけどなぁ……
公演名 | キャラメルボックス30th vol.3 時をかける少女 |
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公演期間 | [東京]平成27年7月28日(火)から8月9日(日) [大阪]平成27年8月20日(木)~8月24日(月) |
場所 | [東京]サンシャイン劇場 [大阪]サンケイホールブリーゼ |
サイト | 公演情報ホームページ |
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