キャラメルボックス「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」家族と風を感じる物語

カレッジ・オブ・ザ・ウィンド バナー

8年ぶりの再演になった「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」を観に神戸へ。
天気も良かったので、を連れて観劇前に港に行ってみることに。

ダンボー カレッジ仕様

この日のダンボーは「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」に合わせて、風をイメージした涼やかな印象で。
「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」って、夏の物語なので青空とか、爽やかな風景に似合いそうな気がするんですよね。

たっぷりと神戸の海を感じて、劇場へ。

8月、大学生の高梨ほしみは、家族6人でキャンプに出かける。それは、年に一度の家族の行事。ところが、キャンプ場に向かう途中で、事故が起こり、家族全員を失ってしまう。ほしみだけは軽傷で済んだが、直ちに病院へ運ばれる。すると、亡くなったはずの家族もついてくる。その姿は、ほしみにしか見えない。なぜなら、彼らは幽霊だから。バラバラだった家族が、ほしみを見守ることで一つになる。しかし、いつかは別れなければならない。ほしみが家族と過ごす、最後の夏……。

カレッジ・オブ・ザ・ウィンド

「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」はがお得意の
初演は1992年で20年以上前に作られた物語でありながら全く古くさくなく、家族の中で唯一生き残ってしまったほしみが、幽霊として付いてきた家族と向き合いながら再び歩き出す物語が鮮やかに描かれます。

年に一回の家族旅行という場でしかまとまることの出来ない家族、しかも実はそれも見た目ばかりで本当の所はバラバラなまま……そんな不安定な家族関係が、生き残ったほしみを見つめる中で少しずつ再生していきます。勿論、既に死んでしまった家族の繋がりが深くなっても「遅すぎる」んですが、そんなやるせない環境の中でほしみの目一杯の明るさに救われます。

主人公のほしみを演じるのは入団7年目の原田樹里さん。
入団前からこのほしみを演じたかったという樹里さんの明るさは歴代のほしみの中でも随一。特に家族との別れのシーン、2007年の高部あいさんが演じたほしみとの違いにはびっくりさせられます。
このほしみだからこそ家族が一つになったんだ、新しく歩きはじめるんだという晴れ晴れしい気持ちで物語を閉じることができました。

そして、ほしみの家族の物語として平行して描かれるのが、ほしみの叔父である鉄平とその妻であるあやめの関係。
菊川はあやめが鉄平に出会う前からの同僚で、あやめ「が」好きな人。あやめ「を」好きな人である鉄平は、あやめと結ばれたあとも菊川との関係にジリジリと胸を焦がされます。そんな中、鉄平はある事件に巻き込まれて……と、いう話なんですが、片思い体質のワタクシ、この嫉妬心が物凄く共感できるんですよね。
鉄平を演じる畑中智行さんは、どちらかというとこういう嫉妬に苦しむ男性というイメージのない男優さんなんですが、この作品ではほしみを前に軽口を叩く姿とあやめへの思いを苦しく吐き出す姿の対比が本当に凄くてついつい目で追っちゃいます。

カレッジ舞台

物語も魅力ですが、このお芝居は他にも注目できるところが山盛り倍盛り。

開演前から目に入る部隊セットは、故キヤマ晃二がしたもので、初演時から大きく変わらず幻想的な雰囲気を醸しています。
窓が割れていたり、冬枯れのような枝が入り込んでいたり、病院の病室としてはあり得ない風景なのに、幽霊と生きているほしみが交わる場所としての不思議さに目が吸い込まれていきます。

家族写真

ほしみの家族も客演のラッパ屋の福本伸一さんがお父さん、西牟田恵さんがお母さん、ベテランの真柴あずきさんがおばあちゃんとがっしりと支え、若手の小林世さん、次回作の主演の木村玲衣さんが元気に暴れています。
実は、死んでしまった家族の衣装はモノトーンになっているんですよね。そんな仕掛けも楽しいところ。

ほしみと同じ病室の入院患者との掛け合いや、物語に絡んでくる刑事の二人のやりすぎなサイドストーリーも暗くなりがちな物語の清涼剤となっています。

名場面集

終演後のカーテンコールでは、昨冬からのお楽しみ撮影OKタイム。
今回は劇団創設30周年記念と言うことで、これまでの作品の名場面集を出演者で再現。
第一作、1986年の「地図屋と銀ライオン」は当時から出演されていた大森美喜子さんが登場。そこからドンドンと、過去の名作のワンシーンを再現。

ナツヤスミ語視点
また遭おうと龍馬は言った

「銀河旋律」のあとは、私が大好きな「ナツヤスミ語辞典」。客演の福本伸一さんが初演時に出演していたウラシマ役で登場し、その後には「また遭おうと竜馬は言った」「さよならノーチラス号」。本当に劇団の代表作が続いて、ついつい写真を撮るのも忘れて見入ってしまいます。

TRUTHTRUTH

なぜか大爆笑だった「TRUTH」では、衣装もカツラもありませんが迫力の殺陣を見せていただき、そして、出演者全員で「SKIP」で印象的だった「扉を開こう」を合唱。

作品を知っていれば知っているほど、目まぐるしく登場する名シーンに大興奮です。そして、最後は

時をかける少女

次回作「時をかける少女」のチラ見せ予告。本当に素敵なプレゼントでした。

相変わらずサービス精神旺盛なキャラメルボックス。

また会おうね。また来年の夏に。

……違った。夏は「時をかける少女」です。

「また会おうね。また今年の夏に。」
また会おうね

公演名 キャラメルボックス 30th vol.2「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」
公演期間 神戸公演:平成27年5月9日(土)~14日(木)
東京公演:平成27年5月30日(土)~6月14日(日)
場所 神戸公演:新神戸オリエンタル劇場
東京公演:サンシャイン劇場
サイト 公演詳細ページ