北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」油断した……これミステリだった。

私たちが星座を盗んだ理由

「私たちが星座を盗んだ理由」、書籍のタイトルを見た瞬間に気持ちが入ってつい手に取ってしまいました。

駅の反対側のホームに見える同じ高校の先輩にアキは恋をした。
幼なじみのシュンとトーコにはそのことは内緒。
二人がくっつけばいいなと思いながら、アキは自身の恋の成就を願ってトーコらに聞いたおまじないを試して見ることに……

短編集、最初の作品は「恋煩い」。アキは、トーコに教えてもらった「放課後に誰にも見られずに後ろ向きに12段、階段を降りると片思いの相手と両思いになる」というおまじないをやってみたところ、名前も知らなかった先輩の生徒を拾って知り合うことに成功する。

もっと近づきたいという思いが強くなっても、なかなかその思いは通じず、アキは他のおまじないを試していくことになって……という微笑ましい物語にまったりとした気分で読み進めていくと

油断した……これ、だった。

北山猛邦さんがミステリ作家だということを完全に忘れてました。あぁ、びっくりした。

表題作も合わせて、全部で6編の短編小説。
「妖精の学校」記憶を失った子どもたちが集まる妖精候補生として暮らす絶海の孤島の謎を描く。
「嘘つき紳士」借金まみれの男が拾った携帯電話の主は交通事故で死んでいた。死んだ彼になりすまして、故郷に残してきた彼女とメールのやり取りをする内に、男は穏やかな感情を抱き始める。
「終の童話」村に現れた怪物に石化させられた幼なじみ。12年の年月が経った村に現れた石化を解く技能を持った呪術師を前に、石像が次々に破壊される。

どの作品もミステリなの? と思わせておいて、終盤にがらっと風景を変えてしまうような描写が見事で、楽しい作品。

個人的には表題作の「私たちが星座を盗んだ理由」の展開が好き。難病を患った姉を喜ばせるために、星座を一つ消してしまった夕兄ちゃん。十数年ぶりの再会で姫子が姉にも夕兄ちゃんにも隠していたことは……。
天空に88ある星座に対して、1930年に国際天文学連合で定められた星座の区画は89。足りない一つの星座は「盗んだ」という前振りから、「首飾り座」が消えてしまうという謎を魅力的に提示しています。
ラストはちょっと個人的には蛇足かなぁと思うんですが、そこまでの展開は良いなぁ。

年明けから楽しい作品を読ませて頂きました。さて、次は何を読もうかなぁ。