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タイムトラベルな日々:「クロノス・ジョウンターの伝説」

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タイムトラベルな日々。
2冊目は梶尾真治さんの「クロノス・ジョウンターの伝説」です。

梶尾真治さんは映画化もされた「黄泉がえり」や、地球が生まれてから現在までの記憶を持つ女性を描いた「エマノン」シリーズなど多数のSF作品を生み出しています。

いくつか時間旅行をテーマにした作品もあるのですが、今回は魅力的なタイムマシンが登場するこの作品をご紹介。

住島重工の開発子会社P .フレックで開発が進められている「クロノス・ジョウンター」は時間軸圧縮理論を採用したタイムマシン。
時間の流れの中から過去の時点をたぐり寄せ、その地点に物質を放り込む。
カエルを飛ばした実験が成功し、ようやく実用化に向けて目処がたったかというその時、事件が起こる。
三課に所属している吹原和彦が無断でクロノス・ジョウンターで過去へ飛ぼうとしていた。

「クロノス・ジョウンターの伝説」は、未完成のタイムマシン、クロノス・ジョウンター(開発二課、四課が開発した別のタイムマシンもありますが)を巡る連作短編集。
どの作品も興味深いのですが、ウチが一番好きなのは一作目の「吹原和彦の軌跡」

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=2j16GaFX1VE[/youtube]

2005年にキャラメルボックスが「クロノス」と題して舞台化した作品で、千秋楽をCSで放送しているのを観て、不覚にも泣いてしまいました。

突然の交通事故で命を失った片思いの女性の命を救うために、未完成のクロノス・ジョウンターに乗り込んで過去へと飛ぶ吹原。
しかし、クロノス・ジョウンターには致命的な欠陥があるのです。

  • 過去にしか時間旅行ができない。しかも過去には10分ほどしかとどまれない
  • 時間が来ると強制的に元の時間ではなく未来へとはね飛ばされてしまう。
  • 時間旅行を繰り返すたびに遠い未来にはね飛ばされる

 

交通事故が起こる時間よりも前にタイムトラベルし、彼女に事故が起こることを伝えようとする吹原ですが、その思いは届かず未来へとはじき飛ばされてしまいます。
吹原はあきらめずに再度のタイムトラベルを試みるのですが……

片思いの女性の命を救うという思いだけで走り続ける吹原の愚直な姿に、いつのまにか自己投影してしまいます。
モテない男子(もうおっさんですが)のウチとしては、こういう一直線でアホな主人公が大好きで、ついつい応援してしまうんですよね。

吹原は片思いの彼女を救うことができるのか、余韻の残るラストが本当に素敵な作品です。