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infoこの記事は2011年5月20日に書いたものです。
現在とは紹介させていただいている内容が異なる可能性がありますのでご注意ください。

水平線の歩き方/ヒア・カムズ・ザ・サン

「大阪に来て、明るいな、と思った。」

 世界初の舞台化でSFファンにも大きな注目を集めることになった「夏への扉」の公演中に被災し、公演を再開したものの集客は壊滅状態。それにも関わらず、再開した公演では450万円以上の義援金を集め、さっと被災地の自治体に寄付
 おかげで、夏を越せるかも分からない経営危機に陥っている劇団……演劇集団キャラメルボックスの震災後初の公演「水平線の歩き方/ヒア・カムズ・ザ・サン」の初日を観劇してきました。

 ここ数回の公演はTwitterで呟くことはあっても、感想をガッツリ書くというところまでは行っていませんでした。ですが、今回はどうしても書きたいという衝動に駆られて、まとめて見ようと思います。
 と、同時にもしもこの文章に目をとめてくださった方には、大阪でも東京でも、是非この作品を観ていただければと思うのです。

 では、行きます!

水平線の歩き方

 35歳の社会人ラグビー選手・岡崎幸一が帰宅すると、そこには23年前に死んでしまった母がいた。
 あの頃、若くて美しくて、目一杯大人だった母はいつのまにか年下になってしまっていた。34歳の母にせかされて、幸一は「一人で生きてきた」23年間を語り始める。

 「水平線の歩き方」はここ10年間のキャラメルボックスのオリジナル作品の中で、私が最も好きな作品です。初演時(2008年)、主人公の幸一が私自身と同じ35歳で感情移入しやすかったこともあるのですが、何よりこの作品は演劇集団キャラメルボックスの魅力が存分に楽しめる作品だと思うのです。

  • 1本60分の短編演劇(ハーフタイムシアター)
  • ミュージカルでない自然な会話で綴る演劇(ストレートプレイ)
  • 子どもから大人まで楽しめるファンタジー
  • 目一杯笑えて、唐突に泣かされる、泣き笑いが快感
  • 劇を盛り上げる体に突き刺さる大音量の名曲

 これだけの要素の詰まった作品はそうあるものではありません。
 死んだ母とのゴーストストーリー。映画ならば、ついつい感動の涙だけを目指してしまうのですが、こちらでは60分の内、40分は笑いに笑わされてしまいます
 幼い幸一と母との関係性を丁寧に、それでいて笑いに包んで描きながら、後半ではその幸一が抱える「痛み」を一気に浄化してしまいます。
 痛みを抱えた主人公と、不思議な出来事。ファンタジーでありながら、観ている誰にでも明日にでも起こってしまうような感覚を覚えさせる物語です。

 初演を観ている私は、終演後、制作総指揮の加藤昌史さん( @KatohMasafumi )さんに、「ダメです。冒頭から泣きそうになってしまいました。」とつい話してしまいました。

 再演の今回は初演後に退団された二人を除いては、初演と同キャストの構成。
 初演同様に見事なテンポで母子を演じる岡田さつきさんと岡田達也さんの安定感は当然ですが、初演の3年前とは明らかに違うのが、幸一の叔父さん役を演じた小多田直樹さん。経験というのは凄いものだなと感じさせられました。

 冒頭のダンスシーンや、小ネタやギャグがちらちらと変わっていますが、客席の盛り上がりは初演以上のように思えました。

ヒア・カムズ・ザ・サン

 児童向けの雑誌社で働く真也は30歳。
 同僚の女性に頼まれて20年ぶりに帰国する彼女の父を迎えに成田空港へ。
 ハリウッドで映画関係の仕事をしているという彼の言葉とは裏腹に、真也には彼の持ち物から違う風景が見えた。

 「ヒア・カムズ・ザ・サン」は新作です。物に残った記憶を読むという特殊な能力をもった真也が、好きな女性・カオルの父の持ち物から読み取ってしまった風景に引っ張られて、女性とその父母とのために奔走するという話。

 母子を放り出して夢と仕事を追いかけてアメリカに旅立った父親が、20年立ってどうして日本に帰国したのかと謎でグッと引き寄せて、一気に描ききってしまいます。
 前半の伏線の張り方から、夫婦の関係性、父母の関係性の微妙さを重たくなりすぎないほどにエピソードを交えて語り、決して甘くないビターテイストのストーリーに締めています。

 「水平線の歩き方」に登場するアベチカコとともに、この「ヒア・カムズ・ザ・サン」に登場するカオルは、「ハックルベリーにさよならを」という作品に登場した人物。「ハックルベリーにさよならを」は演劇集団キャラメルボックスの初期の作品で、「その後、彼女はどうなったんだろう……」と思わせる印象深い登場人物だったのですが、今回はその2年後という設定で昔からのサポーターにはたまらない作品です。

 当初は父親役は西川浩幸さん( @nishikawa0704 )が演じる予定だったのですが、急病で降板。「水平線の歩き方」で主演を務める岡田達也さんがこちらでも目一杯頑張っています。西川さんだったらどう演じただろうと思いながらも、岡田さんの演じ方にカオルと父との歪で深い関係性が透けて見えて好印象でした。

 今日は、観劇を控え、2時間の休暇をもらって行くつもりだったのですが、仕事でトラブルがあり、結局劇場についたのは開場後のこと。劇場内に入ると目の前に制作総指揮の加藤昌史さん( @KatohMasafumi )がいらっしゃいました。
 思わず両手で手を握りしめ、「ご苦労さまです。大変ですね。」と言ってしまいました。
 「この2ヶ月が2,3年のようだった。」「大阪に来て明るいと思った。」「東京ではまだ夜の電車が空いていて、エンタテイメントを楽しもうという人が少ない。」……
 短い時間の間でしたが、大阪にいるとつい忘れてしまいがちになる震災後の状況について、決して以前のようでないことを知りました。
 「冬までもう行けますか?」
 冬の公演では重松清さんの「流星ワゴン」が舞台化される予定です。これも好きな作品です。
 「いや、まだ楽観視できる状態でないです。」
 そんな言葉を聞いて、この劇団の震災後の対応を知っている私としては、どうしても応援したくなりました。

 演劇を観たことのない人、演劇なんてと思っている人にこそ観て欲しいのがキャラメルボックスの舞台です。その中でも、今回の2作品、個人的には「水平線の歩き方」は特にお薦めです。
 大阪の舞台は今度の日曜日までですが、東京は6月2日~19日。特に平日はまだまだまだ……という位、席に余裕があるようです。
 今回は、どうしてもお薦めしたいので……私が持っている「水平線の歩き方 当日券お友達ご招待」「当日券ハーフプライス」各1枚を、東京で観たいという方(できればキャラメルボックスは初めてという方)にお譲りします。
 Twitterをやっておられる方は @gar_osaka へ。facebookmixiでも結構ですし、 gar@utatane.asia (@は半角にしてね)にメールいただいても結構です。
 1作品観ていただいて、気に入っていただければぜひもう1作品も。1時間ですので、映画よりも気楽に行くことができます。興味のある方はぜひご連絡ください。

 公演情報は公式サイトで確認ください。

ABOUTこの記事をかいた人

があ

大阪生まれ・育ち・勤めの闘う(?)公務員。 一般事務職で採用されたのに、今や福祉職だと勘違いしている人が大多数。濃い顔付きから沖縄人やらアラブ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ-