東京都杉並区役所で広報専門監を務める谷浩明さんが、公務員向けの書籍「公務員のための伝わる情報発信術」を出版されました。
以前よりFacebookで繋がっており、広報に対する考え方などが私自身の考えと近いように感じていたので、改めて本書を読むと、その部分がはっきりとしてきました。
特に広報担当という訳ではなく、公務員全般におすすめできるなと感じましたのでご紹介します。
自治体に広報の研修がないのはなぜだろう
出版元の学用書房さんのnoteに、著者の谷さんのインタビューが掲載されていました。
[blogcard url=https://note.com/gakuyo313/n/n908cbab97a9a?fbclid=IwAR0_qH_wusP-4wa46k7mqKQKph1BYaISUD4T2sNKoLJ8gTGfd4D6Wh-wzpk]
その中で、こんなことが書かれています。
(谷氏)公務員って数年に部署移動があり、ジェネラリストを育成する組織であるはずなのに、重要なスキルである情報発信(広報)の研修が全くないことに驚きました。ジェネラリスト育成なら必須のスキルでしょ!って(笑)
これは、本当にその通りで、コンプライアンス研修や接遇研修といった毎年ほぼ同じ内容を繰り返す研修が山ほどある(e-ラーニングと称して資料を送りつけるものも増えている)のに、私の自治体でも広報や情報発信にかかる研修は行われていません。
任意で受けることができる研修は行われていますが、それも体系的に広報や情報発信を学ぶというものではなく、広報については各部署の広報担当にほぼ丸投げされているというのが現状です。
谷さんが話すように「ジェネラリストを育成する組織」として自治体が存在しているのであれば、全職員に必須のスキルが「情報発信」であるのは間違いありません。
体系的に「情報発信」を学ぶことができる
この本では、公務員が学ぶべき情報発信のあり方について5つのチャプターに分けて、コンパクトに分かりやすく紹介されています。
チャプター1では自治体で実際に発信された事例をカラーページで紹介しています。
このチャプターでいいなと思ったのが、実際にそのちらしを作成した「担当者の声」が掲載されていること。
中には決して「カッコいい」デザインではないちらしも含まれており、これってもっと「イイ感じ」にできるんじゃ? と思うものもあるんですが、担当者がどういう意図で作ったのかということと実際のちらしを並べていることで、このあとのチャプターで説明される内容が深く学ぶことができる構成になっています。
チャプター2から5までは、実際に自治体職員が情報発信を行うときに必要な基礎知識を、
- 情報発信する相手である「住民」に、どういう考えで広報しなきゃいけないのか(チャプター2)
- 住民に「伝わる」広報手法とはどういうものか(チャプター3)
- 具体的なデザイン手法を学ぶ(チャプター4)
- 「刺さる」言葉をどうやって盛り込んでいくか(チャプター5)
と分けてコンパクトかつ丁寧に解説しています。
全編を通して「伝える」のは、大切なことが「伝える」ではなく「伝わる」ということです。
そのために必要な考え方として、伝えることが目的化しないために、伝える相手である住民のことを知り、ターゲットを明確にして、伝えたあとの住民の行動に繋げる(行動変容)ことを中心に持っていくこと書かれています。
個人的には、「3-5 効果的なツールを選ぶ」に書かれていた、ちらし、ポスター、はがき・封書、広報紙、ホームページ、SNSそれぞれの特徴と、それが効果的なターゲットの分類は分かりやすく、これは私も伝えたいことだと思いました。
「なんか、いいよね」禁止。
「おわりに」に書かれたコピーライター・谷山雅計さんの言葉は、意外と難しいですが本質をついた言葉ですね。
「なんか、いい」じゃなくて、「なぜ、いいと思ったのか」を考えて、吸収したことをぜひ活かしていきたいです。
本の中で紹介されている「ステークホルダーシート」「情報発信整理シート」「情報発信計画シート」は学用書房のホームページからダウンロードが可能。特に、「情報発信整理シート」は実際に情報発信をする前に、どう広報すれば良いか考えを整理できるのでおすすめです。
休日に、良い勉強をさせていただきました。
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