3月末をもって広報担当から異動になりました。
自治体職員の常、異動のタイミングは選べないもの。私は自治体職員の仕事は「属人的なものを次に活かす」ことの繰り返しが、自治体の仕事をひいてはまちを良くしていくことだと思っています……ん、なんか良いこと言おうとしている??
まぁ、そういうことは別にして、単に「自分の掴んだことが、他人の役に立つのであればシェアすべき」というのが自分の考えなので、たった2年間の広報担当の経験ですが、新たに広報担当になられる方に少しでも参考になればということで少し書いてみます。
なお、私は行政区の広報担当だったので、一般的な自治体と比べても広報担当ができることはすくなかったなぁという気がしますが、何か役立つことがあれば幸いです。
広報担当として役立った本3冊
記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集
仕事で手元にいつも置いていた一冊がこれ。広報担当になってすぐに購入しました。
広報担当につく前から、ATOKの辞書として使用していて(現在は販売していません)、ブログで記事を書いているときに色々な指摘が入るのを便利に思っていました。
様々なメディアで記事が引用される共同通信社が出版されている文書表記の手引き書です。
新聞で使われている文書表記を参考にできるので、広報紙の校正、校閲をする時に悩めばすぐにこのハンドブックを引くということをしていました。
もちろん、公用文の定められた表記はあるのですが、その用字用語で足りない部分を「どう表記するのがすっきりと区民の方に読みやすいものになるのか」と考えて、特に漢字かひらがなかを「用字用語集」に頼ることができました。
私物で購入したので、今後は自宅でブログを書くときにも使いたいですね。
やってはいけないデザイン
私にとってのデザインの教科書は「ノンデザイナーズ・デザインブック」で、広報紙以外の広報物を制作するときには、この本で書かれていたデザインの4つの原則、「近接」「整列」「反復」「コントラスト」を意識してきました。
広報担当で他課のちらしやポスターに意見を入れるときに、「ノンデザイナーズ・デザインブック」で知った原則を、デザインの知識がない方にうまく伝えることができなかったので、日本で書かれた本を探していたときに見つけたのがこれ。
「やってはいけない」とダメなデザインを最初に見せて、それをどうすれば良いかと解説する形で構成されており、「原稿編」「レイアウト編」「文字・フォント編」「カラー編」「写真・イラスト編」と全ジャンルを網羅しているのもありがたかったです。
「やたらとポップ書体を使うのやめて」とか、「文章長すぎやねん」とか「誰に読んでもらうん?」とか、他課から出された原稿などをがんがんダメ出しする時に「○○だから、こうして」と言えるようになったのは、この本を読んだからかもしれません。
配色デザイン見本帳
カラーコーディネートが苦手な私。広報紙だけでなく、ポスターやちらしを自作するときに色のチョイスに悩むことが結構ありました。
色々な本を読んでみたのですが、一番使いやすかったのがこれでした。
色の仕組みや三属性、特性などすっきりとまとめてあるので、まず基本的な知識を身につけることができます。そして、様々なシチュエーションで使われている配色を商業ポスターなどを実例に紹介したうえで、配色のポイントと共に豊富なカラーチャートがRGB、CMYKの数値とともに示されているので、すぐに作業に使えます。
これも今後は自宅でデザインに使おうと思っていますが、使い勝手が良かったのかウチの職場でもこの本を新たに購入したようです。後任の係長もしっかり活用していただけるようです。
校閲記者の目
「3冊」とあげていましたがもう一冊。これは、仕事に役立つというよりは面白いのでおすすめしたい本です。
毎日新聞校閲グループがWeb、Twitterで発信していた「校閲」という仕事に関する読み物。
「超える」と「越える」の使い分けとか、「1人前」と「一人前」は意味が違うとか、駅名でつかう「か」と「ヶ」と「ケ」といった広報の仕事についていると、ついついうなずいてしまいそうなエピソードが一杯です。
「校閲」だけが自治体の広報担当の仕事ではありませんが、専門に校閲の仕事をされている方の言葉は意外と効いてきます。これを読んで私は「しっかりと校閲しないと」と思うようになりました。
毎日新聞校閲グループさんのTwitter、フォローしてますよ。
広報紙は読んでもらってなんぼ
私が担当した2年間24ヶ月の広報紙を並べてみました。
日本広告協会が主催する全国広報コンクールに大阪市は参加していないので、残念ながら評価していただく機会はなかったのですが、タブロイド判の広報紙としては「いいとこいってる」んやないかと思っています。
ウチの広報紙は前任者が担当していた平成26年5月にリニューアルして、「思わず手に取ってみたく広報紙」というコンセプトで制作しています。街角でフリーペーパーと並んでいても手に取ってもらえることって結構大事なんですよ。
だってね……役所の広報紙なんて読まないでしょ。ほんと。
自治体の広報担当は本気で考えるべきです。「読んでもらってなんぼ」って。
どんなに良い施策を行っていても、知ってもらわないことには意味がありません。ぜひ、そこに力点をおいて「読んでもらえる」広報紙、広報誌を作って欲しいなぁと思います。
私の担当した24ヶ月から、好評だったり自分が気に入っている3ヶ月をご紹介。
平成29年8月号「戦時中の動物園展」
この号は政策的な関係で戦争と平和教育について取り上げることが決まっていたので、何を題材にすれば興味を持って貰えるかと考えて決めたのが、天王寺動物園で毎年8月に行っている戦時中の動物園展、そして表紙に使おうと決めていたのがチンパンジーのリタ嬢でした。
白黒写真をあえて使ったのも狙い通り。よく目立って、駅で置いてあった広報紙はよく掃けたのを覚えています。
発行後、別の局の幹部職員がほめていたことを区長を通じて伝えていただきました。区民の方だけでなく、中からも評価をいただいたことは、面白いものを取り上げるだけでなく意図を持って伝えることが少しだけでもできたという自信になりました。
平成29年9月号「カムソン・アート」
この号は区内で活躍されている企業を取り上げるということで、区役所にマスコットキャラクターの行灯を提供いただいているカムソン・アートを取り上げました。
表紙については、NHK大河ドラマにもなった「真田丸」があったとされる三光神社にある真田幸村のねぶた風行灯にすることを決めていたのですが、カメラマンの都合がつかず私が撮影してきました。
自身の撮った写真が広報紙としてプリントされたのが嬉しかったのはもちろんなんですが、それよりも広報担当としてフットワークの軽さが必要だということを学びました。基本的にウチの広報紙は外部委託で、これまでも広報紙に掲載する写真を撮影していたんですが、この号以降、もっと積極的に素材が足りなければ自分でなんとかするということができるようになった気がします。
平成30年2月号「テンサポ」
この号は、区が進めている天王寺区サポーター制度「テンサポ」の紹介がテーマでした。
区内の企業やスポットを取り上げるのとは違って、こういう題材だと「インパクトのある表紙」を作るのは本当に難しく、デザイナーさんからも「どうしましょう?」と聞かれていたので、自身で表紙案を複数作成しアイデアの種としてデザイナーさんに提出してみました。その一つがデザイナーさんの心にひっかかって、そのまま表紙として採用していただきました。
「テンサポ」のロゴくらいしかネタがなかったので、そのロゴに描かれた風景を重ねてみるという形で四天王寺の五重塔と脇から顔を出すキリン(本当は天王寺動物園のキリンを撮影して使えればベストでしたがそこまではできずでした)。
自身の考えたデザインを採用していただいたのは嬉しかったのですが、それ以上に行政側が広報したいことを外部のデザイナーなどにどう伝えるか、私は「翻訳」といっていますが、行政の小難しさをどう一般化するのかを学んだ号でした。
広報担当でない職員は、自身の仕事で精一杯で「広報」とは何かを考えることはほとんどありません。区民、市民の方にどう伝えるか、伝えるためにどう作るかは広報担当が一所懸命考えないといけません。
SNSをどう活用するか
SNSを活用した広報、どこの自治体もそうですがなんらかの形でやっているんじゃないでしょうか?
ウチの区ではTwitter、Facebookをやっていましたが、個人的には担当になってからもその活用が不十分だと感じていました。民間企業のいわゆる「中の人」のような運用も自身のセンスもなく炎上を恐れてそこまで振り切れませんでした。役所の広報がそういう振り切れ方をできると面白いとおもうんですけどね。
ターゲットを定めた広報としてSNSをとらえるとき、私は今はLINEに力をいれるべきだと思って昨年7月からはじめました。お友だちを増やしてから色々とやってみたいこともあったのですが、お友だちを増やす段階で担当を離れることになってしまったのが残念です。リサーチとかクーポンとか使ってみたかった。
お友だちを増やす方法として、広報紙、ちらしなどの媒体で告知するのは当然なんですが、意外と役に立ったのが名刺サイズのカードによる告知。マスコットキャラクターの「ももてんちゃん」の名刺という形をとって、区公式LINEアカウントの告知をしてみました。
ちらしなどでの告知と比べてこのカードのメリットは
- ちらしと比べて圧倒的に低コスト
- 持ち帰るのに負担にならず、手に取ってもらえ捨てられない
- イベントなどに応じて裏面を変えれば、置いてもらえる
など。区役所の一階にもPOPを自作し、ショップカードのように置いていますが確実に持って帰ってもらっています。マスコットキャラクターの名刺にしているので、着ぐるみを貸し出す時にこのカードを一緒に渡してイベント時に配布してもらえれば職員を出さずに広報してもらえるという一石二鳥な形もあったりして。
名刺サイズのカードによる広報、どこの自治体でも使えると思いますよ。
広報担当をやっていて他課と話をしていると感じたのが「広報紙万能説」。広報紙に載せたら区民の皆さんへ周知されたと思い込んでいる人の多いこと多いこと。
SNSの活用を話すと「高齢者の人は使わない」と否定的な言葉を何度聞いたことか。なんでターゲットを絞って広報することを否定するんでしょうねぇ。区民全体にあまねく広報するイコール広報紙で告知するやないのにね。
新しく広報担当になった皆さん。
役所の広報は制限も多いですが、動けば動くほど役所らしくないことにチャレンジできる面白い職場です。頑張ってください、素人広報マンだった私が大阪から応援しています。
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