もう、タイトルの通りです。
私の大好きなキャラメルボックスの夏公演「スロウハイツの神様」ですが、昨日公開されたPVがツボにハマりまくったんです。
普段、このブログでは観てきたお芝居の感想をつらつらと書いています。できることならば、できる限り初日に近いところで、観てきた気持ちが拡散してしまわない内に、ブログを読んだ人がちょっとでも興味を当日券で観に行ってみようかなと思ったり、次回公演をチェックしてくれたら嬉しいな、という気持ち。
でも、今回は、今回だけは観る前に……というか、東京公演しかないのでおそらく私は観られないけど、「公演の全日程、超満員になればいい。すぐに再演が決まって、関西にも来ればいい」という気持ちで、強烈にお薦めしたいと思います。
このPVのおかげで、朝からまた「スロウハイツの神様」を読み返しちゃったんだよ……
PVからあふれ出る赤羽環のラスボス感が凄い
辻村深月さんの「スロウハイツの神様」を読んだことのある人は、まずPVを見てくださいませ。
どうですか、物語の主人公・赤羽環のラスボス感が存分に発揮されていると思いませんか?
狩野壮太とのたったワンシーンの演技なのに、ゾクゾクしてしまいました。環役を演じる原田樹里さん、昨年は劇団の代表作の一つ「嵐になるまで待って」でも主演のユーリを演じたほどの女優さんなんですが、このPVを見るまでは「ちょっと思ってる環と違うかなぁ」と思っていました。出身が大阪府池田市なので、一推しの女優さんではあったのですが。
しかし、このPVで現れる赤羽環は、私が小説を読んで思い浮かべた環そのもので、もうこれだけで泣きそうになっちゃいます。
そして、玉置玲央さんが演じる狩野壮太、劇団のベテラン・大内厚雄さんが演じるチヨダ・コーキもイイっ!
チヨダ・コーキは元々はもっと華奢で若いイメージを持っていたんですが、物語では32歳(10年前の事件時で22歳)って設定なので、この配役も納得。あぁ、他のスロウハイツの住人はどういう配役になるんだろうと期待感しかありません。
「スロウハイツの神様」は私にとって辻村深月さんのベスト作品だ
「スロウハイツの神様」は2012年に「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した辻村深月さんが2007年に書いた作品で、特に何らかの文学賞などを受賞した作品ではありません。それでも、辻村深月さんの作品の中で、この作品が一番好きです。
“口には出せないくらい好き、とか。簡単に名前が出せないくらい大事、とか。そういったことが人間にはある”
小説、脚本、映画、漫画、絵……どんな芸術にも通じる「創作、クリエイトする」ことって何なのか、それを生業にしようと心に決めた人のやっかいでありながらもキラキラと光る一瞬を小説に閉じ込めたような作品、だと私は思っています。
人気脚本家・赤羽環がオーナーの1件のアパート「スロウハイツ」、未来のクリエイターたらんとそれぞれの今を一生懸命に過ごしている環が認めた友人たち。そして、ジャンルは違っていても彼らの目標になる人気作家チヨダ・コーキ。
まるで手塚治虫を中心とした「トキワ荘」のようなアパートを舞台に繰り広げられるのは、どこまでも純粋のように見えて、闇がそこらかしこに穴を開けて待っていて、思いに真っ直ぐであるにも関わらず、それがきちんと自身が望む通過点、到着点に伸びている訳ではなくて……不器用で、自分のことと同じくらい友だちを大事にしている住人たちの群像劇です。
辻村深月さんの作品を読むと、いつも私は「痛み」を感じてしまいます。
その中でも、この作品が自分にとってベストだと思ってしまうのは、自分もかつて「小説家になりたい」と思ったことがあるからかもしれません。
単なる憧れから、夢を持って、少しだけ目指して、そして勝手に諦めて……あぁ、そうか。私はスロウハイツに住みたいけど、環には絶対に認めて貰えない人なんだ。だからこそ、この作品に登場する住民のそれぞれが愛おしくて、眩しくて、物語に痛みを感じながらも大好きなんだ。
どんなジャンルであっても、クリエイターを夢見ている人、目指している人、夢破れた人、そんな「大切に思っている」何かを心に持っている(それが飾ってあっても、片隅に投げ捨ててあっても)人に、この物語を読んでほしいなぁとそう思います。
キャラメルボックスの原作物は間違いない
好きな小説がドラマ化、映画化されると聞いて、不安に思ったり、その後出来上がった作品を見て落胆したことのある人、多くないですか?
今回は小説の舞台化ですが、キャラメルボックスを知らない人は不安に思うかもしれません。
絶対に大丈夫です。
2004年に北村薫さんの「スキップ」を舞台化してから、東野圭吾「容疑者Xの献身」、ロバート・A・ハインライン「夏への扉」、重松清「流星ワゴン」、
ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」、映画からの舞台化「鍵泥棒のメソッド」と、ことごとく私の大好きな作品が、しかもストーリーもラストも知っているのに舞台化した作品を観て大満足するというのを繰り返しています。
昨日の『スロウハイツの神様』読み合わせ前の成井豊の言葉。
「原作の素晴らしさを伝えたいから、2時間にするためにカットはしても改編は行わない。原作ものをやるときは宣伝担当になった気分で、この小説を知らない人に『芝居でこんなに面白いんだから原作を読んだらもっと大変だよ』と言いたい」。— 加藤昌史@キャラメルボックス (@KatohMasafumi) 2017年6月1日
脚本家の成井豊さんのこの言葉が、口だけではなくて本当に徹底してどの作品でも貫かれています。
原作物でありがちな「なぜそこを変えた(or削った)!」ってことが、本当に無くて、成井豊さんの原作への愛にも近い感情がいつも感じられます。
だから……原作が好きなら絶対に観るべき、原作を読んだことがなくても「創作する」ことに思いのある人は観るべき、です。
あぁ、やっぱり観に行きたいなぁ……
公演名 | 演劇集団キャラメルボックス サマープレミア「スロウハイツの神様」 |
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公演期間 | 2017年7月5日(水)~16日(日) |
場所 | サンシャイン劇場 |
サイト | 公演ページ/公式Twitter |
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