2014年の初演からたった3年で再演になった「鍵泥棒のメソッド」。
原作の映画版「鍵泥棒のメソッド」を作った内田けんじ監督も大絶賛の公演、しっかりと見てきました。
再現度が凄い
「鍵泥棒のメソッド」は内田けんじ監督で2012年に公開された映画作品。
売れない俳優の桜井を堺雅人さん、謎の多いコンドウ役を香川照之さんというゴールデンコンビで第36回日本アカデミー賞で最優秀脚本賞、主演男優・助演男優賞を受賞しました。
さらにヒロイン役の広末涼子さんも助演女優賞を受賞されてます。
そんな名作の舞台化ということで、初演時は当然に不安しかありませんでした。ところが、実際に舞台化されてみると、その再現度が凄い。
脚本の成井豊さんは原作物の舞台化させると、「原作厨のツボを決して外さない」完成度に仕上げるので、毎回毎回驚かせられるのですが、この「鍵泥棒のメソッド」でもそのツボを外さない演出は健在です。
ということで、改めて映画版の予告PVを見てほしいのですが……
何が凄いって、このPVに出てきているシーン、全て舞台の上で再現されています。そう、あの銭湯のシーンもです。映像でしか表現できないと思われるシーンが、ことごとく舞台の上で生の役者さんの動きや工夫で表現していくのは、本当に演劇の凄さを感じます。
役者さんの魅力が凄い
舞台化にあたって、桜井、コンドウ、香苗を演じる役者さんには映画版の演技を手本にとされていたそうですが、やはりこちらも素晴らしいです。
桜井を演じるのは、畑中智行さん。コンドウを演じる岡田達也さんとは、以前より劇団内の先輩後輩というよりも兄弟のような関係性が見えて、桜井のだらしなさ、コンドウの得体の知れない様子と相まって、お互いの役割が入れ替わった時の面白さという物語の肝になるところが存分に発揮されていました。
再演で一番驚いたのは香苗を演じた実川貴美子さん。眼鏡はしていますが、映画版の香苗とは違ってショートカット、見た目はほとんど似ていないはずなのに、台詞の抑揚、ちょっとした仕草が広末涼子さんが演じた香苗を意識させます。個人的には編集部での部下とのやり取りの一つ一つの間がもの凄く香苗です。
それに加えて、私が實川さんにキュンキュンくるのが、声の美しさ。ナレーションの仕事などもされているのですが、落ち着いた時の流れるような美しい声と、感情が現れる演技の時の鈴の音のように耳に届く声のどちらも大好きです。
もう一人、今回の作品で凄いなぁと思ったのはゲスト参加の文学座、石橋徹郎さん。
キャラメルボックスでは以前「無伴奏ソナタ」という作品で、ウォッチャーという圧倒的な存在感のある役を演じられていて、その時のイメージが強かったのですが、今回は映画版では荒川良々さんが演じた工藤というヤクザの親分役。あまりにものギャップに、役者って舞台の上でこんなに化けるんだということを改めて思い知りました。
やっぱり演劇って凄い
舞台を観終わったあとで、東京公演の新人抜擢ステージの終演後に行われた内田けんじ監督とのアフタートークの模様を見てみると、本当に面白い。
映画と舞台との違いは色々あるんですが、黒と白という2色を色んなところで見せていたり、舞台セットは鍵穴を象ってあったり、映画版の再現や役者さんの演技だけでは分からないことが実際の舞台を観に行くと気付くんですよ。
舞台の面白さをもっと多くの人に知って欲しいなぁ……と思う訳です。
ちなみにキャラメルボックスさん、夏は東京公演のみですが辻村深月さんの「スロウハイツの神様」を初舞台化、秋は恩田陸さんの「光の帝国」を再演と直木賞作家の原作を連続で舞台化します。どちらも間違いなく原作厨にも満足出来る舞台になると思っているので、興味のある方はぜひ。
公演名 | キャラメルボックス2017スプリングツアー「鍵泥棒のメソッド」 |
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公演期間 | [東京]2017年3月2日(木)~12日(日) [大阪]2017年3月18日(土)~20日(月・祝) |
場所 | [東京]サンシャイン劇場 [大阪]梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ |
サイト | 公演公式ページ |
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