柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活 1」読んでみた。

健康で文化的な最低限度の生活1

第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

連載開始当初から公務員クラスタ、特にウチらケースワーカーの間でかなりの話題になっていた柏木ハルコさんの「健康で文化的な最低限度の生活」の第1集が販売されましたので購入してきました。

東京都東区の東部福祉事務所に配属された新人ケースワーカー・義経えみるの奮闘を描く物語。
「これから死にます。」配属された初日の終業時間ギリギリにかかってきた一本の電話に揺れる第1話から、ケースワーカーが直面する「どうしたらええの?」をリアルに表現しています。

生活保護を題材にした漫画はこれまでにも「陽のあたる家」があるのですが、視点がケースワーカーというのは漫画ではこれが初めて(なはず)。
生活保護を巡る視点というのは、受給者を視点に受給者をバッシングするか、行政をバッシングするといったものが多く、どちらのスタンスでも現場のケースワーカーは心をすり減らされるため、いつも「キツいなぁ」と思っていたのですが、この漫画では比較的フラットにケースワーカー側、受給者(ケース)側から描かれていて好感を抱きました。
例えば、第4話で保護受給前に作った借金を保護費から返済していることを隠していたケースで、福祉事務所の窓口に行くことを「まな板の上のコイ」「ヘビににらまれたカエル」「針のむしろ」と言うのはケースワーカー側にも理解できる感覚です。

と、いいつつも……実はワタクシ、連載開始から3話まではコンビニで立ち読みしていたのですが、以降は「単行本にまとまってからでいいや」と放置してしまいました
第1集ということもあるのでしょうが、一つ一つのケースの踏み込みが浅く、「ケースワーカーあるある」に留まっている感が否めないなぁ、というのが正直な感想。それだけ、踏み込んじゃうと一話で描けないという所なのかもしれないのですが、少しずつで良いので、薄く広くでなく「ここを描きたいんだ」というのが見えてくるといいんだけどなぁ……。

かなり現実からするとマイルドになっていますが、ケースワーカーという仕事を知るにはちょうど良い一冊だと思います。
第2集も楽しみです。