演劇集団キャラメルボックスのクリスマス公演「ミスター・ムーンライト」を観てきました。
実は、今回でキャラメルボックスの公演に行くのは最後にしようと決めていました。
10月に選挙の関係で仕事が忙しく、公演チケットを買うのを忘れて、11月になってから気付いてもしばらく「どうしようかな」と購入をためらっている自分に気付いたときに、「もういいか……」ってなっちゃったんですね。
休団、そして前運営会社が倒産、その後活動再開して4年目。
仕方がないとはいえ、関西で観られる機会は年に1回かぎりぎり2回。
新しい役者さんも増えて、その役者さんの演技をいいなと思っても、関西の舞台で観る機会はまずありません
で、今回の演目は23年ぶりの再演の「ミスター・ムーンライト」
23年前は娘が生まれたばかりで、生ではなかったのですがスカパーで千穐楽の放送を観ていたので、どんな話かは知っています。
で、ちょっと重めの足取りで、久方ぶりのサンケイホールブリーゼに向かったのですが……
……うん、前言撤回。2階の最後尾(正確にはもう一列あったけど、後ろは座ってなかった)からでも、最高に楽しめました。
なので、何がそんなに良かったのか、半古参のオタクサポーターらしく早口で喋らせてくれという感じで、急ぎの仕事も抱えているのにここに書こうと思います。
役者さんのバランスと演技がとにかくよかった
とにかく、これに尽きる。
初演時は出演していないけど既に劇団員だった石川寛美さん、当時退団してしまっていたゲストの近江谷太朗さんの超ベテランから、去年・一昨年に入団したクロスキャストの4人まで年齢差も経験も幅広いのに一体感があって。
初演は配役に合わせたいわゆる「当て書き」で作られた脚本なので、主役の鹿島は上川隆也さんだし、刑事の石岡は岡田達也さんだし、図書館の館長の利根川は西川浩幸さんらしさが目一杯の話なんですが、出演された俳優さんが役のテイストは残しつつ、自身の魅力を振りまいてて最高でした。
全員が全員素晴らしかったのですが、特に
劇団の本公演は初主演の関根翔太さんは、とにかく丁寧に、まっすぐで一生懸命なキャラメルボックスといったらこういう主役を演じてて格好よかったです。かすみが入っているときと、そうでないときの姿勢が微妙に違っているように感じて、声だけでなく女性を感じられたのがとにかく素敵でした。
主人公・鹿島の友人で準主役といっても良い結城正治を演じた鍛治本大樹さんは、本当に格好いい俳優さんになったなぁと感じることしきり。感情の起伏が一番でる登場人物なんですが、本当に目が離せなくて困ります。私と同じで明日が誕生日(年齢は大きく違いますが)で、勝手に親近感を抱いているんですが、劇団が休団したときもとにかく熱い思いがSNSなどで溢れていて、もっともっと観たい俳優さんです。
今回一番びっくりしたのは、司書のあかり役を演じた山本沙羅さんです。
入団した翌年に劇団が休団になったのに、休団中に自分で企画した公演をやったりすごく前向きな姿勢にこれまた勝手に力を頂いていたんですが、今回は舞台上で最高に光っていました。
キャラメルボックスのお芝居には欠かせない物語の語り手役。初演は誰がやってはったっけと思ったら、やはりとんでもなく回しの巧い坂口理恵さんでした。遜色なかったですね。これからもたくさん舞台での演技を観てみたい俳優さんです。
……って、2,3人書こうと思ってたら、止まらないやん。
阿部丈二さんと近江谷太朗さんの掛け合いは文句なしに面白いし、気になる外部公演にいっつも出演してる生田麻里菜さんはキャラメルボックスの舞台でこんな癖のある役で魅せられる役者さんだったんだと驚きがあったし……ああ、やっぱり終わらん。これは。
あ、でももう一人だけ書かないと。
あらすじを知っているからこそ、物語の序盤から注目していた南澤さくらさんの所作が美しかったです。最後に図書館から去る前のシーンで、鹿島らを囲んで会話している中での細やかな視線や笑みが印象的でした。
話が古くさくなかった
キャラメルボックスの作品の中でも、再演を続けている作品はやっぱり印象に残るのですが、この作品は23年ぶり。
TV越しに観たときのことはあんまり覚えていなくて、主演が上川隆也さんで、しっとりとしたいい話だったくらい。
で、実際に生で観てみたら……あれ、いい話じゃなくてめっちゃええ話やん、ってなりました。
脚本の成井さんらしい、ある種幽霊話で兄弟愛の話で、人が人を思う話。
新作ですといっても別におかしくない初めて観る人にもすっと馴染む古くない話でした。
やっぱりキャラメルボックスの空間だった
活動再開後のキャラメルボックス、不満といったら語弊があるんですが、物足りなさを感じていたのは正直なところ。
古くは新幹線の車内で演劇をしたり、かなり早い時期から動画配信やポッドキャストをやったり、講演当日のチケットは半額になったり、とにかく色々と挑戦して、うまくいったりうまくいかなかったりはあったけれど見逃せない劇団でした。
開演前にマスコットキャラクターのみきまるのパンを食べたり、終演後にスタッフの方とちょっとしたお喋りしたり、とにかく楽しかった。
活動再開後はちょっと他の演劇公演とあんまり変わらなくなって、お芝居の魅力は変わらなくても、あの心地良い空間はもう味わえないのかなぁと思っていたところでした。
でも、今回は違った。
開演前には過去作で使用していた劇中曲が流れて、
ちょっとシンプルにはなっていたけれど前説に新人さんがでてきて単なる読み上げじゃない注意事項のお伝えがあって、
6年ぶりに復活したクリスマス公園千穐楽のキャラメル配りではどの俳優さんもニッコニコで配っていて、
適度にぐだっとしたカーテンコールで、〆を任された三浦剛さんが「DeNAベイスタ……」とお約束のボケをやって、
なんや、好きだった俳優さんが出演していなくても、運営が変わっても、やっぱりキャラメルボックスはキャラメルボックスやんとすっきりして、なんだかもの凄く終演後に高揚感があったんですよね。
ロビーに 出ておられた成井豊さんに「すっごく良かったです。ありがとうございます!」と訳の分からないあいさつを投げつけて、劇場を後に。
帰り道では、Spotifyで作っていたキャラメルボックスでの劇中使用曲のプレイリストを久しぶりに聞きながら、グラングリーン大阪を闊歩してしまいました。
帰宅後、23年前に録画していた初演「ミスター・ムーンライト」の東京千穐楽の映像観ました。
2001年当時の「ミスター・ムーンライト」はステージ数が56もあったと話していたり、今や劇団の中核を担う畑中智行さんが2年目で前説に出ていたり、当然ながら皆若かったりと楽しく観ました。
主演の上川隆也さんの演技もダンスも西川浩幸さんのボケにすかさずツッコむ姿は本当にすごいなぁと思いましたが、さきほど観てきた今のキャラメルボックスも本当に魅力的だったなと再確認しました。
来年は8月、今度はウキウキで劇場に向かいたいです。
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