「官民連携」
私たち、公務員の仕事ではここ十年ほど頻繁に使われる言葉ですが、その意味を分かって実際に実践できている自治体はどれくらいあるでしょうか?
予算もない、人材も足りないなか、地域課題を解決するために民間企業や地域の力を借りる……美しく見えるこの仕組みですが、そんな気持ちよく「官民連携」ができるのであれば苦労はありません。
今回、神戸市の部局横断型の「つなぐ課(現:企画調整課)」の特命係長として、多くの企業連携、地域連携の実績を積み上げた長井伸晃さんが自身の経験を共有する書籍を執筆されました。
私の勤める大阪市と同じく政令市の神戸市という大きな組織の中で、長井さんがどんなことを考えて、どんなことを実践してきたのかが分かるこの書籍を少しだけご紹介します。
長井さんの強みは巻き込み力
著者の長井伸晃さんは「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019」も受賞された「仕事がやれる(できる)公務員」
私も参加しているオンラインコミュニティ「オンライン市役所」でも運営に携わっており、その存在感から「市長」の愛称で呼ばれています。
クロスメディアイベントの078(ゼロ・ナナ・ハチ)も運営側で、その手腕を振るっています。
長井さんの魅力は色々なところにあるのですが、やはり他人を巻き込む力、巻き込み力の強さです。しかも、グイグイと来るのにもかかわらず威圧感が強すぎない。なんだか不思議な人です。
事例紹介だけに終わらない実務書
そんな長井さんが自身の仕事として取り組んだ神戸市の官民連携事例が、この本では実例として紹介されています。
社会問題化しているフードロスについて、役所では取り組みにくい部分をシェアリングサービス「TABETE」との協働ですすめた事例や、
コロナ禍で緊急事態宣言下にあった時期に素早く「UberEats」との連携を行い、その後「出前館」やキッチンカーの派遣へと繋げた事例などがコンパクトに紹介されており、一つ一つの事業の面白さと同時に、それを実現させたすごさに驚きます。
[blogcard url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000056240.html]
と、こういった事例紹介はこの書籍以外にも多数ありますが、この書籍の良いところは、長井さんの視点で事業解説とともに、その事業に至るまでの経過が「実務」として書かれていることです。
特に第3章以降は、官民連携として事業を起こしていくために何をすれば良いかをそれぞれのステップで説明しており、企画に携わる公務員であればストンと腑に落ちる内容になっています。
- 腹を割った話ができる信頼関係を築く
- できる限り不確実な要素は減らす
- やっていることは知ってもらってナンボ
- 行政側でプラットフォームをつくらない=最終的には民間ベースでのサービス提供に移行する
- 1つの施策で100%の公平性を担保するのは困難(中略)、複数の施策の組み合わせで解消
- アイデアの賞味期限は「3か月」
公務員、実務者の立場で、民間企業や地域と行政の橋渡しができる「通訳者」としての役割を果たして事業を作り上げていく面白さと同時に難しさも感じさせられます。
私自身も施策提案などでうまくいかなかったものがあって、なるほどここの部分が足りてなかったなぁと自省しました。
長井さんの経験が、この本を通じて多くの方に共有され、素敵な官民連携実例が増え、そしてそれをパクる自治体が増えると良いなと思います。
自治体職員の中で、自身に突きつけられた地域課題への取り組み方の一つとしてぜひ一読をおすすめします。
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