- 2019年6月22日
映画「クロノス・ジョウンターの伝説」不器用でまっすぐな思いが胸に突き刺さる
九条にある24席・デジタル上映のミニシアター「シネ・ヌーヴォX」へ。 本日、上映最終日の映画「クロノス・ジョウンターの伝……
演劇集団キャラメルボックス2016グリーティングシアターvol.3「嵐になるまで待って」。東京、足利、栃木、山形、春日井、三重での公演を終えてようやく大阪にやってきました。
普段、東京と関西を中心に公演を打たれているキャラメルボックスが、全国に逢いにいく秋のツアーは今回で3回目。「嵐になるまで待って」は1993年が初演で、今回が5演目という同劇団の代表作の一つです。今回は2008年から8年ぶりの再演。
声優志望のユーリは、テレビアニメのオーディションで見事、合格!
その顔合わせで、作曲家の波多野、その姉の雪絵と出会う。
波多野は、雪絵に乱暴しようとした俳優・高杉に対し、「やめろ!」と叫ぶ。
その時、ユーリの耳には、もう一つの声が聞こえた。
「死んでしまえ!」という声が。
翌日、高杉は行方不明になる。まさか、本当に死んでしまったのか……。
その夜、波多野から電話がかかってくる。
イルカのペンダントを拾ったので、取りに来てくれと。それは、元・家庭教師の幸吉にもらった物だった……。
「嵐になるまで待って」は結構怖い話です。「世にも奇妙な物語」とか、そういう感じの。
そういう訳で、高校生の時にキャラメルボックスを知って、「不思議なクリスマスのつくりかた」とか「ナツヤスミ語辞典」、「ハックルベリーにさよならを」とか、そういうすこし不思議なファンタジーに魅了されてきたウチは、この作品を初めて映像で見たときはあまり好きになれませんでした。もちろん、大好きな俳優の西川浩幸さんの登場シーンでは笑い、物語のキーにもなる雪絵さんの手話の激しさに圧倒はされましたが、物語そのものにはちょっとはまれないままでした。うーん、なんかキャラメルボックスじゃないって感じですか。
そんな印象がガラッと変わったのが、2008年の公演を実際に劇場に観に行ったこと。
その日は残暑の厳しい9月のカンカン照りの日だったんですが、劇場に入って、Nik Kershaw「The Riddle」が場内に響いた瞬間、ぞくぞくっとしました。一気に不穏な嵐の前に投げ出されたかのようになって、物語に引き込まれます。
物語が進むにつれて、波多野が持つ二つ目の声に、そしてその狂気に冷や汗をかいて、怖くて目が離せなくなります。
ラストシーンは波多野の姉の雪絵さんのメッセージが語られるのですが、そこでようやく気づくのです。「あぁ、これもキャラメルボックスの物語、『人が人を思う物語』なんだ」ってことに。
キャラメルボックスには珍しいサイコサスペンス。物語は決してハッピーエンドではありませんが、登場人物のそれぞれが誰かを「思う」ってことが描かれています。なるほど、これは劇場で観るべき作品なんだ。
今回の再演は2008年度版から西川弘幸さんが演じる広瀬教授以外は一新。
2つめの声でヒロイン達を追い詰める波多野役は、前回の公演の前年に劇団に加入した鍛治本大樹さん。
びっくりしました。2007年に神戸で「猫と針」のビデオライブで観客の誘導をしていたときに間近で見てから、ずっと失礼ながら「残念なイケメン」というイメージで見ていました。カッコいいんだけど、舞台での印象は強くない。そんなイメージだった鍛治本さんの演じる波多野は、以前に同じ役を演じた劇団の先輩らにも負けていない「怖さ」を持っていました。
姉である雪絵をまっすぐに「思う」狂気。「ユーリ」とヒロインを追い詰めるときの声は一番怖かったかも。
波多野の思いの先にある姉・雪絵を演じるのは岡内美喜子さん。2002年にはヒロインのユーリを演じていることもあって、物語の理解度は一番かと思うのですが、なにより凄いのは雪絵という役は聴覚障害者であり「一言も喋らない(喋れない)」ということ。2002年の作品では、実際に聴覚障害者の忍足亜希子が演じた難役です。
そんな雪絵役の迫力はすさまじく、
大阪初日。やっと関西のお客さまに逢えて嬉しかったです。ありがとうございました!
今日はね、弟が大事な手話を見てくれないとこあって、「ちゃんと見ろや!」ってぶっ叩いて、手話を最初からやり直してやりましたわ。ろう者としての感情がきちんと湧いてきてとても勉強になったステージでした。 pic.twitter.com/Bn6NbbE3kx— 岡内美喜子 (@okamiki1117) 2016年10月14日
なんてくらい。波多野と対峙するクライマックス、ラストシーンのメッセージは声は聞こえなくても観ている者にビンビンと伝わってきます。
ヒロインのユーリには地元の大阪出身の原田樹里さん。キャラメルボックスの作品ではボーイッシュな役を演じることも多く、物語の中で、変な声に悩むヒロインにあった女優です。声を奪われて、話せない時間が長いのですが、その間の一生懸命な演技は本当に凄いです。
そのヒロインを支える幸吉役はゲストの一色洋平さんが演じています。2008年の公演でも劇団の俳優ではなくゲストが演じていたのですが、事件に巻き込まれてユーリに振り回されながらもまっすぐに走る好青年を魅力的に演じています。
なんだかキャラメルボックスに以前からいる俳優さんのような馴染み具合で、安心してお芝居を観てられます。なんと、キャラメルボックスの次回作「ゴールデンスランバー」のオーディションにも合格して、引き続いてゲスト出演するんですよ。楽しみ。
他にもキャラメルボックスの作品に何度も登場するアベチカコを小悪魔的に演じる木村玲衣さんは相変わらず可愛さ満載ですし、2009年の「さよならノーチラス号」以来のゲスト出演になるクロムモリブデンの久保貫太郎さんは相変わらず面白すぎます。
東日本大震災がきっかけで始まったグリーティングシアター。「嵐になるまで待って」のような本格的な作品ですら、こうやって11か所もの劇場に「逢いに行く」ことができるのは本当に凄いなぁと思います。
この作品は映像で観るのと直に観るのとは、得られる印象が全く違います。テレビドラマや映画とは違う生の役者の演技の凄さや、劇場という空間から何かを体感できます。それだけに普段キャラメルボックスを観る機会がない地域の方には観て欲しいなぁと思います。
大阪公演の初日の入りは正直なところ残念な感じ。このままだと、来年以降の公演の日数はまた減っちゃうんじゃないかなぁ……心配です。大阪公演は今日が千穐楽。最後は開演時間を幸吉くんから紹介。千穐楽に行けない人もぜひクリスマス公演の「ゴールデンスランバー」へ。
明日(16日(日))の開演時間を教えちゃうよ刑事
〈早いもので明日は大阪千秋楽!!キャラメルボックス『嵐になるまで待って』駆け込みも大歓迎!是非とも大阪ラストを見届けて下さいませ…!!〉https://t.co/4cN4iHBW0i pic.twitter.com/q6l6g2FU0D
— 一色洋平 (@yohei_isshiki) 2016年10月15日
公演名 | キャラメルボックス 2016グリーティングシアター「嵐になるまで待って」 |
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公演期間 | 2016.9.21(水)~11.3(木・祝) |
場所 | [東京]かめありリリオホール [大阪]サンケイホールブリーゼ 他9会場 |
サイト | 公演公式ホームページ / 劇団公式Facebook / 劇団公式Twitter |
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