キャラメルボックスの30周年・第1弾の隠し球はなんとクロノス・シリーズの新作でした。
梶尾真治さんが書いた短編集「クロノス・ジョウンターの伝説」には含まれていない成井豊さんが書いた新作です。
住島重工の下請け会社であるP・フレックで働く笠岡光春は39歳。
研究者として大きな成果もなく、「まだ何も成し遂げていない」という焦りを感じている。そんな彼に、開発3課・課長の野方から開発中止になった後も会社に隠して開発を続けていたクロノス・ジョウンターへの搭乗を依頼される。
密かに憧れていた女性・倉敷にあっさりと振られた光春は、23年前に亡くなった尊敬する兄・秋路に会うために時を跳ぶ。
しかし、到着した瞬間、光春は通りかかった少女と衝突。少女は「リン」という名前以外の記憶を失ってしまう。
物語はクロノス・シリーズの中でもあまり語られてこなかった横須賀倉庫に移送されてからの話。P・フレックでの開発中止が決められた後も、クロノス・ジョウンターの可能性を諦めきれない野方が会社に黙って開発を続けている時代です。
今回の主人公・笠岡光春は、これまでの作品の主人公である吹原や鈴谷とは違って、取り立てて大きな目的があって過去に遡るのではありません。世界的な発明をして研究者として名を挙げることを目指していながら、39歳になってしまった「まだ何も成し遂げていない」男性。
そんな焦燥感の中、クロノス・ジョウンターで跳ぶ先は23年前、兄・秋路が生きていた時代でした。23年前に命を落とした兄は、光春にとっては自身とは違う「研究者としての将来を渇望されていた尊敬の対象」。そんな兄に会うことに何らかの意味を持って、時を跳ぶのですが……
梶尾真治さんが書いたクロノス・シリーズと、成井豊さんが舞台化したクロノス・シリーズは互いにリンクしていてそれぞれに魅力があるのですが、今回は全くの舞台版オリジナルの作品。
正直なところ、観る前はどんな感じになるんだろうなぁと思っていたんですが、観終わると全く違和感なく、梶尾真治さんの書いたクロノス・シリーズに巧くはまってしまいそうな作品でした。
キャラメルボックスらしいなぁと思うのは、他のクロノス・シリーズにはない兄弟の関係性を描いているところ。「クロノス」でも吹原と妹のさちえ、来美子と弟の頼人といった原作小説にはないキャラクターが登場して、”人を想う気持ち”が丁寧に描かれるのですが、この作品はそれがまた純粋に描かれていて気持ちが良いです。
大学生である兄・秋路を演じるのはD-BOYSの陣内将さん。昨年の「駆け抜ける風のように」で沖田総司を演じたように美男子で、しかもものすごく演技が巧み。なんだか、キャラメルボックスの俳優さんだと思ってしまいそうなくらい馴染んでいて、未来からやって来た見た目はあきらかに遙かに年上の弟・光春を演じる岡田達也さんとの絡みは楽しすぎます。
カーテンコールでは、前回の公演から行われている撮影OKタイムが。今回は、ダンスシーンの再現をしていただいているのですが、なんか途中でお茶目な所があったりして面白いですね。
……うーん、ダンスシーンはスマホでは撮影が難しい。
出演者が8人だけのお芝居ですが、内容の濃さは「クロノス」にも負けず劣らず。原作者の梶尾真治さんがシリーズ作品として認定した「パスファインダー」30周年公演らしいお遊びも含めて、東京公演での反響が楽しみです。
3月7日(土)から東京公演なので、ネタバレになりそうなことは、ちょっと間をあけて書くことにします……
公演名 | キャラメルボックス30th vol.1「パスファインダー」 |
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公演期間 | 大阪公演:平成27年2月21日(土)~25日(水) 東京公演:平成27年3月6日(金)~22日(日) |
場所 | 大阪公演:サンケイホールブリーゼ 東京公演:サンシャイン劇場 |
サイト | 公式情報サイト / Twitter / facebook |
ということで、ネタバレの私的な感想
ウチが観に行ったのは大阪公演の最後の回だったんですが、初日から「ネタバレ厳禁」という言葉が乱れ飛んでいたので何だろうと思っていたら、まさかあんなことをするとは。
ちょっとやり過ぎな位で、キャラメルボックスを観るのが今回初めてという人は、もしかしたらサポーターの雰囲気について来れないんじゃ無いかなぁと心配になってしまいました。
もちろん、知らなくても大丈夫な話の流れにはなってはいるのですが。
個人的にツボだったのは、ラストシーン。
クロノス・シリーズに限らず、タイムトラベル物って、タイムトラベルによって未来(や現代)がこのように変わったって所が一つの見せ場やないですか?
そんな中、「パスファインダー」のラストシーンは最高やと思ってて、観ている側に光春が跳んでいく未来でどうなっているかを想像の中に残しておきながら、シーンとしてはちゃんとハッピーエンドになっているという……余りにも気に入ったので終演後はスタッフの方についつい語りを入れてしまいました。
実は「クロノス」も表面的に見えるラストシーンとは違うその後の物語を想像できる余地があって大好きなんですが。
あぁ、楽しかった。クロノス・シリーズなのでDVDも買おうっと
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