きっかけは私が好きなキャラメルボックスの役者さん岡田達也さんのブログでした。
普段、舞台を中心に活躍されている方が映画に出演されたというので、「ふ~ん」と思ってリンク先を覗いてみると大阪での合評上映会のモニター募集をやっているじゃないですか。
映画に関しては本当に門外漢なので、「評価」なんてえらそうなことはできないなぁと思いつつも、今年の目標である「アウェーを楽しむ」題材に良いかなと思って申し込んでみるとすぐに招待の葉書が届いたのでした。
と、言うわけで映画の関係者などが大半の中、モニターの一人として上映会を楽しんできました。
合評上映会が行われたのは、九条にあるシネ・ヌーヴォというミニシアター。近日上映のパンフレットや近くの店舗のショップカードのようなものが並んであったりミニシアターらしい雑然とした雰囲気の中、受付を行うと立派な上映パンフレットと昨年(2010年)の作品を収録したDVDを渡して下さいました。
……いいんでしょうか、こんなに良い待遇で。
このndjc(New Directions in Japanese Cinema)は、文化庁の日本映画振興事業の一環で、2006年から行われています。
商業長編作品を撮影したことのない若手の映像作家が制作実地研修を経て、選ばれた5人が25分以上、30分以内の短編作品を作ることで若手人材育成を目指すというものです。
それぞれの監督さんは当然色々な形で映像には携わっているのですが、自身が描きたい映像を形にする、それを多くの人に見てもらうという経験は乏しい訳で、こういった機会というのは本当に大事だと思います。……どこかの首長に聞かせ……ごめん、愚痴です。
5本の作品は荒削りで、ウチの好みに合わないものもあったのですが、非常に興味深い企画でしたので、単にアンケートを書いてすませずに、ちょっとそれぞれ紹介したいと思います。
『UTAGE』/やましたつぼみ 監督 (作品紹介)
ハル(つみきみほ)が雇われ店長を務めるカフェバー宴はいつも盛況。ハルの料理を食べに常連客が楽しそうにやってくる。ある日、常連客の一人が人気のパティシエ・オノマコト(岡田達也)の元で働くことが決まったことを報告。その言葉はハルを激しく動揺させた。
監督曰く、「自身が嫌いな人をどうすれば好きな人と描けるかに挑戦した」とのこと。パティシエを目指して挫折したハルが、自身の現状を認めることができずにオノマコトの幻影に囚われるのですが、30分ではちょっと駆け足すぎる感じがしました。
料理の映像は鮮やかで美しく、食材を切るシーンなど手元のアップは印象的でしたね。
主演のつみきみほさんはほとんどのシーンがすっぴんなのですが、圧巻の演技力で圧倒されました。
この作品をみるきっかけになった岡田達也さんですが……さすが”キャラメルボックスの川越達也”でした(笑)。自身はホットケーキしか焼けないらしいとブログでは書いておられるんですが、人気のイケメンパティシエに扮してはりましたね。
『ここにいる』/七宇幸久 監督 (作品紹介)
ずっと一緒だった双子の妹・美空が姿を消した。いつも感じた妹の存在が感じられずに次第に焦りを感じる真海。
「双子は相手の考えていることやいる場所などをなんとなく察知することができる」という通説がありますが、それを題材に作られている作品。
非常に分かり安い作品で、悪く言えば予定調和で結末まで読めてしまうTVドラマ的な作品やなと感じました。もの凄く好きなんですけどね、こういうの。
主演の双子姉妹の蒼れいなさんとあんなさん、以前、テレビ番組の「ほこたて」で顔認証システムとの対決で「絶対見分けられない双子」として登場されていたので、それが気になって気になって。なんか違う部分で楽しんでしまいましたね。申し訳ありません。
『パーマネント ランド』/中江和仁 監督 (作品紹介)
幹夫の母は山間部の限界集落に近い村に一人で住んでいる。老いた母には近隣の知人が薬を運んでくれているが、体調も決して良くない。村に続く道が崩落したこともあり市役所からは移住を迫られる。しかし……
5作品の中で一番静かで、一番気に入った作品。
物語の終盤で、移住を前に「二度とこの家に戻らない」と示すために炊事場に金槌で破壊するよう市役所の職員に幹夫が迫られる(……ひどい公務員ですな……)のですが、その決断を幹夫が下すのか、母親が下すのかというところで映像を作る過程で最後まで悩んだというエピソードが興味深かったです。
監督の中江氏はCMディレクターとしてサントリーの烏龍茶など(CMに出演されている范冰冰がもの凄く美味しそうに食べはるんですよね~)を手がけておられるので、短いワンシーン、ワンシーンが心に残るものが多かったです。
母と一緒に椅子に座って生家を見るシーンが特に好きだなぁ。
『嘘々実実』/藤澤浩和 監督 (作品紹介)
就職活動で大手商社の一次面接。集団面接で他の人と同じような答えしかできないことに気付いた速水真は、とっさに「日本一周した。竹馬で!」と嘘をついてしまう。結果、二次面接に進むことになった真は、嘘を突き通すために竹馬旅行のルートや体験談を作っていく。
5作の中で唯一のコメディ作品……なんですが、肌に合わなかったなぁ。
「そんなんで面接官がだまされるかよ。」というのもあるんやけど、笑わせたいと繰り出すネタがことごとく不発に終わっているので、見ていて痛々しく感じてしまいました。
物語の落としどころは分かっているし、友人や恋人の言葉など光る部分もあるのですが、それだけに笑いのネタはもっと突き抜けた笑いを求めて欲しかったです。
『あかり』/谷本佳織 監督 (作品紹介)
結婚式を前に規制した環。環には知的障害を持つ妹・あかりがいた。
一緒に買い物に出かけ、最初は仲良くしていたのだが、無邪気に自身が着るウェディングドレスをねだるあかりについつい苛立ちを浮かべる環。そして、一瞬気を抜いたときにあかりの姿を見失ってしまう。
監督自身が抱える環境をどうしても描きたかったとのこと。思いが強い作品すぎて、どうにも駄目でした。私自身が抱える環境とオーバーラップすることもあって、素直に作品を受け取れなかったです。
5本の作品は、テーマも表現方法も違っていて本当に興味深かったです。
映画に限りませんが、なにかのきっかけがなければ新しい才能が浮かんでくるというのは難しいものです。こういう仕掛けが映画に限らず、色々な所であることが大事なんじゃないかなと思いました。
「アウェー」の場に参加して良かったです。はい。
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