写真(公演パンフ)

空晴「明日の遠まわり」

写真(公演パンフ)

写真(公演パンフ)

大阪を活動拠点にしている空晴のお芝居を観に行くと、いつも「はっこき鍋」が食べたくなります。

「はっこき鍋」って何? って思いながら検索してみるんですが、いつもしっくりとした回答が見つからず、お芝居の中で話題にされるものの、さして絶賛されるわけでもなく、謎だけがいつまでも残る、三谷幸喜さんの「赤い洗面器の男」のようなキーワード。あーー食べたい。はっこき鍋。

空晴「明日の遠まわり」を観に行ってきました。
しばらく御無沙汰していたのですが、客演される一人の俳優さんが気になったのがチケットを取る最後の一押しになりました。こういうきっかけで観に行くお芝居は当たりが多いもの。

苦さが混じる言葉が温かい

物語の舞台は小さな公園に隣接するカフェ。
近くで起きた事件の影響で、今日はお店を休みにするつもりでやってきた店長は、お店の付近で怪しい動きを見せる男に遭遇する。
まさか事件の犯人!?
バイトの女の子に、彼女に憧れる若い男、お店の昔の常連さんに、その友人はなにやら常連さんの弟と婚約していた過去があって、何やら因縁が入り交じり、すれ違いに勘違いが重なって、話はこじれるばかり。

あぁ、いつもの空晴さんのお芝居だぁという感じ。

言い間違い、勘違い、嘘やホントに見栄。機関銃のように発せられる台詞のぶつけ合いは、見ているこちらの心の内にも打ち込まれてきて、痛いなぁと思いつつも、苦さが混じるその一つ一つの言葉が本当に温かい。

人生って結局いつもうまくはいかないよね、でもね。タイトル通りのそんな「遠まわり」をそっと応援するような、相変わらず優しいなぁと癒やされます

カフェのマスターの小池裕之さんのたどたどしさ、バイトのももよ役の古谷ちささんの素朴な可愛さ、小野役の駒野侃さんの素直な笑顔、吉田役の上瀧昇一郞さんの圧倒的な存在感、そして千寿子役の岡部尚子さんのパワフルな大阪のおばちゃん感……劇団員の出演者の演技は安心して「空晴」らしさを味わえるのは当然のこと、客演の方々とのやりとりでさらに深みを増します。

特に今回は元劇団M.O.Pのかなこ役・東英世さんと千寿子・岡部尚子さんとのやりとりがすごかったなぁ。
人と人との関わりでうまくいかなかった時間って取り戻せないけれども、その経験も踏まえて関係を作っていく、感情のぶつかり合いの中に大切な物が見えてくる感じがしますね。

あと、そうそう。ラストシーンが一番分かりやすいんですが、空晴のお芝居で好きなのが「間」です。台詞と台詞の間だったり、感情の揺れの間だったり。ラストシーンなんて、大阪の人間にとってはお約束の「間」ですよ。こういうの、東京で見ている方ってどう感じてはるんやろうなぁと気になります。

太田清伸さんのこと。気になる俳優さんを観るってこと。

六条ひかる役で客演された太田清伸さんを観るために今回はチケットを取りました。

娘の友だちの女子高生から薦められて、人狼TLPTというアドリブで登場人物になりきって舞台上で人狼ゲームをするというコンテンツを知ったのが4年前。
それ以降、大阪では公演をうっていないのですが、ニコニコチャンネルで有料放送で流しているので継続して観ていました。

太田清伸さんはその人狼TLPTで、物語の最初に殺される村長役(ファーストゴーストとも)だったり、墓守フランクという役で出演されているのですが、ずっと「あぁ、なんか陽気なおじいちゃんやなぁ」と思っていたぐらいでした。
舞台上でアメリカンジョークを言ったり、洗面器とタオルで風呂上がりのように現れたり、用務員役で他の出演者にいじられたり、ゲームやお芝居よりもそういった面白さを楽しんでいた感じ。

その思いが一変したのが、3月の公演。フランクは人狼として、養女、息子を食べ、最後には人狼の中に残っていた人間だったときの心まで壊れてしまい狂った人狼として物語を締めました。
怖い怖い怖い! こんな演技をするんだ、ゲームの中のアドリブでこんな演じ方ができる太田清伸さんの演技をもっと観てみたい、なんて思ったのです。

結果、この空晴の舞台に登場した太田清伸さんを見て、うおぉと、ちょっと興奮しました。
映像で見るフランク役とは違って、六条ひかるは好青年といった感じの役回りでしたが、それを除いても映像で抱いていた太田清伸さんのイメージよりも、若々しい、台詞が聞き取りやすい、何、これかっこええ

つまりですね。何が言いたいかというと、気になる俳優さんがいるなら映像じゃなく、生で観に行こうってことです。キャラメルボックスの加藤さんがいつも言ってましたが、「映像は生の2%くらいしか魅力が引き出せない」ってこういうことだよなぁ、と。

だからね。気になる俳優さんがいたら見て欲しいし、もっと演劇に触れて欲しいなぁと勝手に思った次第。

久しぶりの空晴、本当に楽しませていただきました。

写真(空晴の大漁旗)
空晴の大漁旗、すごく格好いい
公演名 空晴第18回公演「明日の遠まわり」
公演期間 [東京]2019.7.31(水)~8.4(日)
[北九州]2019.8.24(土)・25(日)
[大阪]2019.8.29(木)~9.3(火)
[高知]2019.9.14(土)・15(日)
公演場所 [東京]下北沢 駅前劇場
[北九州]北九州芸術劇場
[大阪]HEP HALL
[高知]高知市文化プラザかるぽーと
サイト 公式サイト(公演情報) / 劇団Twitter