キャラメルボックス「光の帝国」しまったものは誰にもひびく

キャラメルボックス、春公演ぶりの関西公演は、今年で4年目になるグリーティングツアーと呼ばれる全国ツアー公演「光の帝国」です。

グリーティングツアーは2011年の東日本大震災と、その後の東北応援公演がきっかけになってできた秋の公演スタイル。普段、東京、関西(神戸や大阪)を中心に公演しているキャラメルボックスが公演できる会場を募集し、なかなか観に来られない人たちに「会いにいく」ツアーです。

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特別な力を持つということ

小学4年生の春田光紀には、読んだものを「しまう」力があった。古事記も枕草子も平家物語も、一度読んだだけで完璧に暗記できるのだ。実は、光紀の両親も、姉の記実子も、同じ能力を持っていた。が、それは家族だけの秘密。光紀には不満でならなかった。学校からの帰り道、『平家物語』を暗誦していると、一人の老人に話しかけられる。老人は猪狩義正という名の元医師で、光紀の暗誦ぶりを褒めた。が、光紀の両親は、その老人に二度と会うなと言う。光紀は激しく反発する…。

この舞台の原作は、今年、「蜜蜂と遠雷」で直木賞、本屋大賞を受賞した恩田陸さんが書いた「大きな引き出し」(集英社「光の帝国」に収録)という作品
短編集の最初の作品で、以降2冊出版されている作品と合わせて「常野物語」と呼ばれるシリーズものになっています。常野の一族はそれぞれ特殊な能力があり、この物語の主人公・春田光紀ら春田家の家族には「しまう」と呼ばれる驚異的な記憶能力を持っています。光紀はそんな「しまう」能力を「暗記できることの何が偉いのか」と反発を覚えていますが、そんな彼が老人・猪狩との短い交流の中で「ひびく」ことで「しまう」意味を知っていきます。

初演では上演時間60分(少しだけ長い作品だったようですが)の短編演劇のハーフタイムシアターというスタイルで上演されたこの作品ですが、今回は100分ほどの作品に再編集されています。おかげで、この作品だけでは分かりにくい「常野」という存在をストーリーの中で説明していたり、猪狩親子の葛藤や猪狩と光紀のエピソードが加わり丁寧に描かれており、初演よりも分かりやすい構成になったなぁと感じます。
追加された釣りなどのエピソードがきちんと終盤に訪れる光紀が「ひびく」シーンに繋がり、映写機のカタカタと響く音に涙腺が破壊されます。

原作小説を読んだ時や初演を観たときには全く気付かなかったことが一つ。この物語、常野の一族の不思議な能力を描く中で、実はそういった能力を持たない私たちにも「しまう」こと、「ひびく」ことが出来るんじゃないかと思うようになりました
普段から何かを勉強したり体験したりする「しまう」ことは普通にやっていますし、その体験が「ひびく」瞬間があることは多かれ少なかれ体験しているんじゃないでしょうか。その「ひびく」瞬間を知っていれば「しまう」ことの大切さに気づけるかもしれません。

初主演の関根翔太さん、雰囲気のある美女・森めぐみさんも初演のコンビに負けない素敵な姉弟でしたが、劇団の公演に出演するのはほぼ1年ぶりの鍛治本大樹さんがとんでもなく格好良くなっていてびっくりしました。スター・システムを取っていない劇団なので、それぞれの俳優さんが経験を積んで、色々な作品で活躍されるのがキャラメルボックスを観る楽しみの一つ。やっぱり劇団公演っていいよね。

今回のツアーはあと埼玉と新潟を残すのみ。残りの旅が素晴らしいものになりますように。

公演名 キャラメルボックス2017グリーティングツアーvol.4「光の帝国」
公演期間 2017年10月4日(水)~11月5日(日)
場所 東京(北千住)他9か所
サイト 公演サイト

ABOUTこの記事をかいた人

があ

大阪生まれ・育ち・勤めの闘う(?)公務員。
一般事務職で採用されたのに、今や福祉職だと勘違いしている人が大多数。濃い顔付きから沖縄人やらアラブ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ-