一筆「少女キネマ」夢と妄想の詰まったファンタジー

少女キネマ

一筆と書いて「にのまえ はじめ」と読む。
タイトルと装丁と、著者の名前に大好きな厨二病臭を感じたウチ。著者のことは全く知らずに、さっそく読んでみることに

読み終えてから著者のことを調べてみると、ゲームメーカー「ニトロプラス」に所属するクリエイターで、「魔法少女まどか☆マギカ」の小説版を書いた方とのこと。うーん、まどマギは言葉だけは知ってるんだけどなぁ……娘の方が詳しいかも

十倉和成。中堅おぼっちゃん大学の1年生にして、20歳。彼のボロ下宿の天袋から、絶滅危惧種の大和なでしこ“さち”がとつじょ這いおりてきたその日から、その停滞しきった生活は急転する!ノンストップ迷走系青春ミステリー!

某私大の学生寮。二浪で学生となった十倉和成の住むたった6畳の部屋の天井裏から女子高生が顔を出す。
事情があって、屋根裏に潜むことになった女子高生のさちを食べさせて、できる限り早くそんな環境から救うために十倉は少しずつ動き始める。

映像の天才だった友人の影を追って、二浪までして上京した十倉の事情と、彼の周りから彼をつつく個性的な同級生に、謎の大和撫子・さち。さちと十倉の微妙な距離感を軸に、なぜ十倉が上京したのか、なぜ映画を忌み嫌うのかを印象的なシーンと台詞回しで描きます

なんというか、かなりクセのある世界感ですが、先入観なしに気持ちよくその世界感に浸れる小説です。
著者は「このラストシーンを書けたらもう死んでも悔いはない」とまで書いていますが、ラストシーンも、その一つ前のシーンも個人的には大好きです。アニメ作品や演劇的なアプローチができる作品じゃないかなぁ。
「ありえへん」と言ってしまうと、泡のように消えてしまう世界、物語ではありますが、この世界を感じる力は大切にしたいなあと思うわけです。

あー、楽しかった。