宵野ゆめ「グイン・サーガ134 売国妃シルヴィア」時代は流れる

グインサーガ134 売国妃シルヴィア

栗本薫さんが亡くなられて亡くなられてはや5年。130巻で未完のままで中断したグイン・サーガは五代ゆうさん、宵野ゆめさんという二人の語り手によって引き継がれ、昨年から続巻が出版されるようになりました。

五代ゆうさん、宵野ゆめさんと各一冊ずつ読んでみて、もちろん栗本薫さんとは語り口は違いますが、どちらにも好印象を抱きながらも「まぁ、一冊目やしね」と斜に構えていたワタクシ。
宵野ゆめさんの2冊目、134巻「売国妃シルヴィア」、ようやく読み終えました……うん、ごめん。栗本薫さんの時のように「2か月に1巻発刊される」と決まってないので、手に入れるまで2週間くらいタイムラグあるんだ

ケイロニアの皇女シルヴィアの行方が知れなくなった。
幽閉されていた闇が丘の館が何者かに襲撃され、地下の水路深くへとその姿は消え失せてしまったのだ。そして、死霊の口が語る彼女の大罪をめぐり、シルヴィアには、≪売国妃≫の汚名が冠されることとなる。
また、大帝アキレウスの病状が思わしくなく、継承問題も持ち上がっていた。

五代ゆうさんはパロ関係、宵野ゆうさんはケイロニア関係と、現在は舞台ごとに書き分けているので、今回は一応は主人公であるグインがいるケイロニアのお話。
この書き方だと、一巻ごとに舞台が変わるので刊行間隔が開くと辛いですねぇ。一気に物語を読み進めたい時もあるんで。

ケイロニアが物語に登場したのは17巻「三人の放浪者」か18巻「サイロンの悪霊」にかけてですか。……確認すれば分かるんだけどこの辺りの巻を引っ張り出すのは結構大変。
ケイロニアにたどり着いた時は傭兵でしたが、今やケイロニア王となったグイン。ケイロニア皇帝アキレウスが死に近づくにつれて、皇位継承を望まれたり、疎まれたりするのはありがちな話。
100巻以上前の登場時からあまり良い印象を持てなかったシルヴィアはどんどんと闇へと引きずり込まれていきますし、闇の司祭は相変わらず色々と画策している様子です。

グイン・サーガはグイン英雄譚ではなく、グインがいる世界の群像劇を描いた物語なので、一人の登場人物が死を迎える、それも物語の初期に登場した人物の死となると「あぁ、また時代は流れていくんだなぁ」と感慨深く思ってしまいます。
もちろん、17巻前後でしたらウチが読んでいたのも30年近く前になる訳で、実際にも「時が流れている」んですが。

今作では、レンティアの王女・アウロラが登場しているんですが、この方、外伝25巻の「宿命の宝冠」に登場している人物なんですね……うーん、これまだ読んでないんだ……本編を中心に読んでいる人向けにもう少しフォローが欲しかったなぁ……と、いうところが唯一の不満。

全体的には、131巻以降のグイン・サーガを楽しんで読める一冊でした。ガンガンと正編を出版してください。

売国妃シルヴィア (グイン・サーガ134巻)
宵野 ゆめ
早川書房
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