キャラメルボックス「無伴奏ソナタ」嵐の中、圧巻の千秋楽

無伴奏ソナタ バナー

台風19号が列島を縦断する三連休の最終日。
朝からそわそわとしながら、空模様を眺めていました。ほぼ昼前まで青空さえ見えた大阪。もちろん、これから崩れてくるのは分かっている。
しかも、同僚は台風対応で出勤していたりする……

でも、それでも、それだからこそ、この芝居だけは観たかったのです。

キャラメルボックス「無伴奏ソナタ」。2012年の初演での圧倒的な反響に応えての再演、大阪公演の千秋楽に行ってきました。

幼児期の適性検査で職業が決められてしまう未来の世界。
「プレイヤー」バイオリン奏者の父、ピアノ奏者の母の間に生まれたクリスチャン・ハロルドセンは、検査で優れた音感と想像力を持つと認められ、音楽を生み出す「メイカー」を職業と定められる。
2歳にして、父母と引き離され、深い森の中の一軒家で、クリスチャンは既成の音楽や他人との接触を禁じられる中、優れた音楽を生み出し続ける。

ところが、30歳になったクリスチャンの前に、ある男が現れる。
彼は「リスナー」。彼の仕事はメイカーが生み出す音楽を評価するのが仕事だった。彼はクリスチャンにレコーダーを押しつけて言う。
「聞いてくれ。バッハの音楽だ。君には足りないものがある。」

映画化もされた「エンダーのゲーム」の著者、オーソン・スコット・カードが書いたたった30ページほどの短編小説。

音楽の天才が、音楽に接することが禁じられたら……という、音楽に限らずクリエイター、創作活動に一度でも携わったことがある人にはヒリヒリとする展開が続きます。

「メイカー」の仕事を追われながらも、音楽に接することをやめることができないクリスチャンの人生を、彼に接した人物を語り手にして描かれるのですが、その一幕一幕が本当に重く心に突き刺さります。

2年前の初演時、新神戸オリエンタル劇場からの帰り道、こんなツイートをしていました。
物語のラストを知っているので、初演時に受けた衝撃をそのまま感じることはできませんが、出演者が初演と全く変わっていないこともあって、「深化」の度合いが凄まじく感じました。
一人一人の俳優がそれぞれの登場人物をより深く、より熱く演じ、その熱が主演のクリスチャンの受難が強くするので、全てを奪われて、人生の終幕を迎えるクリスチャンに与えられる唯一の贈り物が際立ちます。

やはり、誇張でもなく、劇場でしか味わえない感情を味わえる舞台、でした。

そして、今日も「もう一回観たいような、この気持ちを残したままにしたいような」気分

それだけに台風の最中での千秋楽になったのが本当に残念。
座席には空席がちらほらと目立つ状態。普段の千秋楽なら、カーテンコールや恒例の役者さんの一言挨拶、芝居の余韻を感じながらのアンケートを書いたり、ロビーで友人と感想を話し合ったり……そういったことも出来ないまま、知己のスタッフの方に挨拶だけして帰宅しました。

それにしても、悪天候の中のキャラメルボックスの俳優さん、スタッフさんの対応は素晴らしかった。
昨日の段階から、様々な情報を得て、早い段階で開演することを発信し、チケットのキャンセルへの対応や交通情報も伝え、開場は予定よりも30分早めるなどばっちりの体制でお客さんを受け入れる。
終演後はカーテンコールですぐに交通情報をが伝え、普段ならアンケートのお願いをする所で「アンケートはwebでも、次回公演時にお渡し頂いても結構です」と話して早めの帰宅を促したり、さらには三方礼などのお約束をやめて、より短い時間で感謝を示すために客席を通って俳優さんたちが退場したり。
ロビーに出てみると、社長さんが率先して「今日はアンケートもグッズもいいですから気をつけてお帰りになってください」「JRは止まっていますが、地下鉄、私鉄は運行しています」と大きな声でアナウンスし続けていました。

素敵な舞台、素敵な対応ありがとうございました。

無伴奏ソナタ DVD

……で、帰ってきて、つい初演のDVDを観て感動を反芻

http://www.caramelbox.com/stage/mubansou-sonata2014/