観劇雑記:Caramelbox「キャロリング」

キャロリング

“僕は、物語のアイデア、つまり面白い物語をどう創るか、というところから入るんだけど、有川さんはキャラクターありきだとおっしゃっていて、面白い人物が出てくれば、その人物が動くことによって自然と面白い物語ができるから、まずキャラクターを徹底的に考えて、愛してあげることが大事なんだって。”
脚本・演出 成井豊さん(サポーターズクラブ会報より)

作家が役者一人一人と話をして、登場人物を生み出し芝居にすることを前提に小説を執筆。
演出家は作家ともに原案を考えた物語を芝居に創り上げていく。
役者は自身にあてがきされた人物を全力で演じる。

の今年のクリスマス公演は、人気作家の有川浩さんとのコラボレーション公演。事前に有川さんが小説を執筆した作品を舞台にしています。
昨年末に作家の有川浩さんがキャラメルボックスとコラボすることを知って、1年間楽しみに待っていた作品。クリスマスには少し早いですが、新神戸オリエンタル劇場に向かいました。

劇団キャラクターのみき丸くん

物語の舞台は東京・月島。
不況のあおりを受ける形でクリスマスをもって倒産することになった小さな子供服メーカー。
大和俊介は自身の悩み・影を背負ったまま、かつての恋人・柊子や同僚とともに淡々と残務整理を続けている。
そんななか会社が経営する学童に通う小学生・航平は、自身の家族と抱える悩みを解決するために、柊子そして大和を事件に巻き込んでいく……

有川浩さんらしい、そして脚本家の成井豊さんらしい少し……いや、ちょっとビター感が強い、それでいてスイートな物語。冒険と恋、そしていつもながらの「人が人を思いやる気持ち」を大事にした作品です。

主人公である大和と元彼女の柊子、事件の中心にいる田所親子だけでなく、端役なんじゃないの? と思えるような整骨院のオーナーやチンピラにまで一人一人に物語があり、そしてそれぞれの不幸や過去を乗り越えるためのきっかけを見つける姿は、観ている私たちをも勇気づけます。
甘い言葉や、ガラガラポンで何かが変わるかのようにごまかすんじゃなく、でも歩かないといけないんでしょ? と寄り添ってくれるような物語です。

……なんというか、やっぱり良いよね。ウチなんか……金貸し屋に涙腺崩壊させられちゃいましたよ。そのくせ、泣かせるシーンにやっぱり笑いを組み込むんで、ついつい泣き笑いになっちゃうんです。

今回は有川浩さんと役者さんたちが話して命を吹き込んでいった登場人物だけに、普段のキャラメルボックスではその役者さんでは見られないような役だったりするのも面白いところ。

主人公の大和役の阿部丈二さんは過去に傷をおった影を持った(そして普段はそれを表に出さない)青年役だったり、普段はちょっとお茶目でもしっかりとした大人の男性役の多い大内厚雄さんはなんともだらしない田所家の父親役だったりするのは意外だなぁと楽しみました。

観劇後は、友人の引き合わせで初めてお会いすることができた麺屋爽月の辻本さんとともに加藤社長にご挨拶。
終演後のお忙しい中、相手していただいてありがとうございました。

神戸公演は明後日の25日(日)まで、12月3日からはホームグラウンドの東京・池袋のサンシャイン劇場に戻って、クリスマスの12月25日まで駆け抜けます。

観劇すると有川浩さんの小説、成井豊さんの戯曲、キャラメルボックスの他の芝居が観たくなる良作です。
このお芝居を観た後の個人的なお薦めは有川浩さんが「阪急電車」、成井豊さんが「さよならノーチラス号」、キャラメルボックスの芝居は二人が携わっている「ヒア・カムズ・ザ・サン」。ウチは自宅に帰ってきて、本棚から「阪急電車」を再読しちゃいました。

さぁ、また今日から頑張るぞ~。