防災担当の使命は『大災害時に100人のLv1防災担当が生まれる仕組みを作ること』だと思う

防災担当の使命は『大災害時に100人のLv1防災担当が生まれる仕組みを作ること』だと思う

僕ら下っ端の地方公務員は、おおよそ3年に1度、ほぼほぼ転職と同じくらいの人事異動で新たな仕事につきます。4年目以降はエキストラステージ、ボーナスみたいなもんです。
だから、3年間でたった1つでも成果あげられればある意味勝ちですし、その成果を次の担当者が積み上げて、なお良い成果をあげれば大勝利、やと思うわけです、知らんけど。

今年で防災担当になって3年目になります。
今年の震災訓練を1月19日になんとか終えたので、4月以降のエキストラステージがなかった時のために、やってきたことを何回かに分けてしっかりと発信しておこうと思います。

最初は、私が作った「ミッションカード」について。

「いざ」というときに勇者は生まれてこない

防災担当になって最初の年、震災訓練を終えて、訓練に参加した職員にこんなことを言われました。

「なんで俺らだけ訓練するの? 俺らだけしんどい思いするのおかしくない?」

確かに。

その時にやっていた訓練は、区役所から比較的近くに居住している職員「緊急区本部員」に対して、発災時初動期の災害対策本部要員としてのスキルアップを目指すものでした。

大阪市では毎年、阪神淡路大震災があった1月17日(今年は17日が休日だったので19日)に、震災訓練を行っています。
平日ですので、区役所は平常業務を行っている中で、防災担当が中心になって主に地震などの災害の初期初動対応を訓練しています。

そんな中で、「区役所から近くに住んでいるだけ」の防災担当でない職員から言われた一言は、結構、私に響きました

他区や他市では、全職員を休日出勤させて訓練を行っているところもあるようです。
平日でも通常業務を止めて訓練をするところもあると聞いています。

[blogcard url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20210118-OYT1T50114/]

ですが、年に1度、全員で訓練をしたところで、その効果なんてたかがしれています
当たり前です。私は防災担当で年がら年中、防災だ予防だと考えていますが、他の課の職員は年がら年中、それぞれがついている仕事で市民に貢献することをまず考えているんです。

大災害が発生したときに必要なのは、災害対応について精通した勇者や賢者ではありません。
突然、勇者は現れないし、勇者を育て上げたとしても、そもそも勇者や賢者ですらない防災担当ですら、閉庁時に発災すれば役所にたどり着ける保証すらありません。

必要なのは、「税務担当Lv.10」「まちづくり担当Lv.7」「戸籍担当Lv.50」……そんな職員を大災害が発生した瞬間に「防災担当Lv.1」にクラスチェンジできる仕組みで、震災訓練で行うべき事は、その仕組みの検証とそれを改善するためのフィードバックを得ることだと考えました。

Lv.1の防災担当へのチュートリアルを強制ミッションで行う

Lv.1の防災担当って、どんなレベル? と聞かれると、「地震などの不測の大災害が発生したときに、災害対応の指示を受けられる」くらいのイメージでいます。

そのために必要なのは、前知識がなくても、誰でも区の災害対策本部を設置して災害対応に当たることができる準備をできるようにすることです。

あらかじめ本部の設置方法などをマニュアルに書いて用意したり、本部を設置する場所の壁にチェックリストを貼ったりしているんですが、指揮系統が混乱している災害初動期にそれではうまくいかない。

問題点

さらにやっかいなのが、平日夜間や休祭日など役所の開いていない時間。
防災担当どころか、区の職員でない他の所属の応援職員だけでもできる仕組みが必要です。

なので、発災して災害対策本部が動き出すまでの流れを整理しました。(画像は実際につくったものの簡略版)

災害時の流れ

そして、それぞれの段階で「やらなきゃいけないこと」を細分化。

と、ここまでやってて、オンライン市役所ゲーム推進課長の私、気づいてしまいました。

ん? これってゲームの導入部のチュートリアルっぽくない??
強制的にクエストが発生して、それをこなしているうちに物語が進んだり、レベルアップしちゃったりして。

ドラクエのクエストリスト
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これいいね。この仕組み導入しよう。

各段階で必要なミッションを参集した職員に付与するためのカードを作って、それを手に取らせることで強制的にイベントが発生、全てのイベントをこなすと区の災害対策本部が設置でき、職員は「地震などの不測の大災害が発生したときに、災害対応の指示を受けられる」Lv.1の防災担当にクラスチェンジ、レベルアップする。

ということで作ってみました、「ミッションカード」(今になって「ミッションカード」よりも「クエストカード」の方が良かったんじゃ……という気もしなくもない)

ミッションカードそして、ミッションカードをその段階ごとに行う場所に設置、ゲームで言うならAの町で起こるミッションとBの町で起こるミッションがあるイメージかな。

こうすれば、閉庁時にしか発生しない「宿直室」でのミッションは、開庁時にはスルーしても大丈夫だし、「宿直室」の最後のミッションに「区本部設置」に繋がるミッションを書いておけば、スムーズに移行できます。

実際のカードでは、「宿直室」のミッションカードの最後に、「●●の部屋を開けろ」と書いておいて、その部屋を開けると真正面に「災害対応でこの部屋を開けた者は↓のケースを取り出して、『区災害対策本部設置ミッション』を行え」と貼ってあり、新たなミッションカードのケースが手に入るようにしています。

「指示書」やマニュアルを置いておくのと何が違うかというと、

『ミッションカード』のPoint

  • 可能な限り1つのミッションを小さな単位
    (例:事務用品を用意する→はさみを用意する)
  • カードを持っている者が「やる」を誰もが理解
  • チェックリストにして進捗を見える化
  • 裏面に見取り図や写真を入れて分かりやすく
  • はがきサイズで持ちやすく、作業中でもチェックしやすい
  • 職員に配る必要がなく、更新時に低コストで運用が可能
  • カードの収納も100円ショップにあるような「年賀状ケース」などで可能

といったところ。

実際に訓練で使用しましたが、昨年は本部設置に精通した区職員込みで発災から区本部設置まで45分かかっていたところ、今回は区職員なしの庁舎内の配置なども知らない応援職員に「9時発災(想定)で、家を出て区役所に来てください」とだけ事前に指示をだしただけにも関わらず、同じ45分間で本部設置を完了しました。

カードの指示が不明瞭だったり、誤字があったりということもあって、ロスタイムが結構発生していたので、改良すればあと10分くらいはタイムは縮められそうです。

何よりも、『ミッションカード』を使用した訓練で良かったのが、カードを収納したケースを手にした若い女性職員が、カードを1枚1枚取り出して、「あなたコレやって」「あなたはこれ」と年上と思われる職員にドンドンと指示を出していたこと。
態勢が整うまでの初動期に必要な防災担当Lv.1の動きが誰に教わらずともできていることで、ミッションカードの有効性が確認できました。


ということで、今回は災害発生初動期の職員の動きをスムーズにする、全ての職員を瞬時にLv1防災担当にクラスチェンジするミッションカードについてまとめてみました。

民間企業と違って、役所では他の自治体はライバル企業ではないので、他の自治体の事例共有やパクるはドンドンとやればいいと思っています。もしも、このミッションカードをちゃんと見てみたいっていう防災担当の方は遠慮無くご連絡くださいませ。

書き出してみるとかなりの長文になりました。
次回は、今年度、コロナ禍で行った職員への研修、こちらはLv.1→Lv.2にするような試み(いや、『防災担当』っていう職業があることを知ってもらう感じか…)について書こうと思います。

私がこの記事を書いたよ!

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があ

大阪生まれ・育ち・勤めの雑食系公務員。 福祉職だと勘違いしている人が大多数ですが下っ端事務職。濃い顔付きから沖縄人やらトルコ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ~

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