2020年4月始動。
エンターテインメントが、失われてしまった。
コロナ禍において、観客だけでなく、役者もスタッフも劇場に行くことができない事態になりました。
Web会議ツールであるZOOMを活用して、オンラインイベントや過去の舞台作品のリーディングなどが配信されるようになり、私たちは早くまた劇場でお芝居を観たいなぁと思いつつ、そういったコンテンツを楽しんでいます。
従来の公演を劇場で観ることができるようになるかは分かりません。
制限がある中で、その制限一杯を攻めようとしているのが劇団ノーミーツです。
驚くべきことに企画から公演まで、一切スタッフと出演者、そして観客が会わずに作り上げています。なんと、出演者のオーディション、公演パンフレット(イメージ)の撮影さえも「会わず」に作っているのです。
そんな劇団ノーミーツの第2回公演「むこうのくに」をオンライン観劇してきました
これは新しい観劇体験
現実世界のつながりを絶たれた時代が終わろうとしていた。
多くの人は喜んで太陽の下へと駆け出したが、”むこうのくに”に残ることを選んだ人もいた。そこは、画面を一枚隔てれば、生まれた場所や話す言葉、ヒトかどうかさえも関係ない、現実のしがらみが無効化された世界。
その夏、ぼくは相変わらず画面の前に居て、”むこうのくに”へアクセスしようとしていた。
行方をくらませた、”ともだち”を探すために——
1億人を超えるユーザーが参加しているというオンラインサービス「Helvetica(ヘルベチカ)」
ここでは、現実社会のしがらみや悩みは無縁の「自分さしさ」を表現できるスペースがある。
マナブは、自身が作り、そして自分の前から姿を消したAIのともだちRainを探している。
オフライン(現実社会)とオンライン(Helvetica)が互いに影響し合って、マナブやそしてその周りにいる「人」にどう影響を与えていくのかというネットワーク社会での普遍的なテーマが描かれています。
通常の観劇ではその世界を俯瞰的にのぞき込むという感じですが、この「むこうのくに」では全く違った観劇体験が可能です。
物語の舞台、オンラインサービスの「Helvetica」は、まるで映画「サマーウォーズ」で登場した仮想空間「Oz」のよう。
そんな中で、リアルタイムで映像が加工され、俳優たちが物語を演じて行きます。
観客はその物語を見る「Helvetica」のユーザー。劇中の感想を書き込むチャットでの感想までもが、劇中の世界に融合されていきます。
物語はオンラインの「Helvetica」、オフラインの登場人物達の部屋、それらを繋ぐZOOMのようなオンライン通話の様子を行き来しながら進められていきます。
140分間の長編演劇。集中して見ていると、映画のような映像作品でありながら、所々に「生」のお芝居のライヴ感がにじみ出つつ、昨今のオンラインイベントの利点や厳しいところも含めて、「見るべきところ」がコロコロと変わります。
その横では、私と同じく観劇しているもののチャットが無秩序に流れ、映像に感心しながら、時にはツッコミを入れて最後まで没頭して観てしまいました。
驚くところはたくさんあるんですが、
- 登場人物の部屋のカメラワークがスゴい (家族の人がカメラ回しているの? と思うくらい)
- 映像のエフェクトがスゴい 顔のフィルターのぴったり感がもう超絶
- 俳優さんの演技がスゴい 画面越しに相手と会話しているのに、その瞬間の感情がダイレクトに伝える
- オンラインの利点を活かしたいじりがスゴい 幕間にチャットに反応してみたり、実際に投票させてみたり
まさに今までに無かった観劇体験でした。
コロナ禍の異常な状態にあるから、という訳ではなく、劇団ノーミーツのこの作品はオンライン演劇の一つの正解、スタンダードになってもおかしくない完成度の高い作品です。
それぞれの俳優さんが自身の家(じゃないところもあるかもしれないけど)で、最高の演技をして、それを画面越しにリアルタイムで観劇する。
それぞれが閉ざされた空間での体験の中、あのラスト、そして絶妙なタイミングでのエンディング曲とスタッフロールは、ちょっと卑怯ですよ。めっちゃ感動してしまいました。
あーーー、いいお芝居観た!
公演期間は明日の日曜日まで。開演直前までチケット購入できるので、今、この世界で観ることができる「むこうのくに」の観劇体験をぜひ。
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[blogcard url=https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/20200722-00189233/]
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