- 2015年1月17日
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖6」:太宰治の古書を巡る因縁話
累計600万部を超えて販売されている最近のライトノベルとしてはかなりのヒット。2013年1~3月期に剛力彩芽さんを栞子役……
異世界転生系の小説が乱造されています。
現代世界から剣と魔法のファンタジーの世界へ。私が若い頃ではそういう物語があってもなかなか受け入れられなかったように思えますが、小さな頃からドラクエにFF、ハリーポッターと多くの人が親しんで、今ではエルフだのドワーフくらいなら共通認識で話ができるという時代です。アメリカではD&Dが過去最高の売り上げをあげているとか。娘世代がうらやましいですね。
ライトノベルを中心に生まれている異世界転生系の小説やアニメ、決して嫌いじゃないのですが、現代世界で平凡な能力だった者が異世界に転生すると、チートな能力で闊歩するものが乱造されてしまってどうにも苦手で結構避けるようになってしまっていました。
そんななかでつい手を出してしまった異世界転生(正確には召還)物、さてどうなることやらと思ったら組み合わせた題材がうまく意外と面白かったのでご紹介。
魔族の進行により滅亡の危機を迎えていたサイトピア国。 天才召還師・クランエと宮廷視聴者のダマヤは、国の命運をかけて異世界からの救世主を召還するつもりが、間違えて落語家・楽々亭一福を召還してしまい… !?
この物語で、異世界に持ち込まれるのは『落語』という芸。
真打ち昇進を目前にした噺家・楽々亭一福には剣と魔法のファンタジーの世界で戦うべき術をもちません。HPとMPはともに12、戦闘には役に立ちそうもありません。 そんな彼は異世界に紛れ込んでも頭の中は落語で一杯、種族間のいざこざで酒場で争っているのをみて、その仲裁に落語を一席打つことになります。お題は「クロノ・チンチローネ(時そば)」。
「時そば」という落語を知っている人ならば一度は聞いたことがあるような有名な噺を題材に、紛れ込んだ異世界・サイトピアで理解できるような内容(=読者がよく知っているファンタジーの世界の話)に改変するという、ありそうでなかった切り口でなかなか面白いです。
私は最近発売されたコミックスから入ったのですが、「クロノ・チンチローネ(時そば)」「ニグニグ草(青菜)」「はるかなる故郷(寝床)」だけでは物足りなくなって、すぐに原作の小説版を電子書籍で購入。現在第5巻まで出版されており、「寿限無」や「初天神」「狸賽」「そば清(蛇丸草)」と私も何度となく聞いた落語が異世界風にアレンジされています。落語が好きな方にはそれだけでも面白いのですが、話が進むにつれて「○○とかけて△△ととく。そのこころは……」というなぞかけ、即興で聴衆から出された3つのお題を元に落語を作っていく「三題噺」といったところまで題材にされているので気がつくと次の噺が読みたくなってしまってたまりません。
コミックスは、一福が演じるカットとその落語に登場する人物が登場するカットが挿入され、まさに聞き手の頭に浮かんでいる落語の世界が過不足なく表現されています。
また、コミックスも小説版も一編ごとに、一福が解説をいれるページを挟んでおり、そこでは元の落語の解説に加えて、その落語を演じた落語家さんを紹介していたりするので、ついググって元の落語を見る素敵な時間を過ごしてしまいます。
楽々亭一福は江戸落語の噺家さんですが、原作の著者・朱雀新吾さんは関西大学の落研に所属されていたとのことで、上方落語にも詳しいのでそういった題材もでてくるといいなぁと思ってしまいます。
なるほどなぁ。組み合わせの妙というのは、まだまだあるものやなと感心しました。
小説版の5巻では、落語だけでなく物語もくるっと舞台を変えてしまったり、単に落語と異世界の融合だけですませていないのも好印象。興味のあるかたはコミックスの1巻だけでもぜひ。
さ、落語の動画探して見ようっと。
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