劇団レトルト内閣「エピメテウスの眼鏡」ほめ育コラボで刺さる音楽劇

劇団レトルト内閣「エピメテウスの眼鏡」ほめ育コラボで刺さる音楽劇

今年初観劇は、ほめ育コラボの音楽劇という異色作、劇団レトルト内閣の「エピメテウスの眼鏡」。
ん?「ほめ育」とコラボってどういうこと?

人間の欲と弱さと、それでも強さ

『おろかもの募集 好待遇 成功報酬あり』
ラーメン屋アルバイトの帰り、怪しい募集につられて向かった雑居ビル。
黒手袋の女が出てきて、こう言った。
「メガネを探す、簡単なお仕事です」

エピメテウスの眼鏡
それは世の権力者たちが血眼になって探している宝だという。
それを見つけるのは最も愚かな人間なのだという。

私はやがて、巨大な権力をめぐる一族の確執を知ることになる…

世界のメディア王として君臨するフジワラ大道(鈴木洋平)は、絶大な権力を持ちながらも、常に人を信じず、「世界を手にする」ためかつて歴史の権力者が持っていたとされる「エピメテウスの眼鏡」を探すことを命じる。

眼鏡探しに走らされるのはギリシャ神話の中でも「愚鈍」な神とされたエピメテウス(愚か者)の3人。ラーメン店に勤めるドジでおっちょこちょいの本田天音(伊藤卯咲)、売れないバンドのリーダー咲洲吐夢(川添公二)、引きこもりのラーメンブロガー茨木風歩(飯嶋松之助)は、眼鏡探しを通じて、互いに少しずつ自身に向き合って前を向き出していく。

家督争いなどのドロドロとした要素満載でありながら、それぞれの登場人物が繋がって、終盤に一気に物語の様相を変えてしまう展開は素敵で、気がつくと家族劇を見せられてしまうというなかなか面白いお芝居でした。
人間の欲だとか、弱さだとかをたっぷりと見せて、「ほめ育」の要素は物語ではあまり表には出さずに、2時間弱を物語でしっかりと引っ張ります。その中で、エピメテウス(愚か者)とされた3人の強さだけでなく、フジワラ大道のまわりの家族それぞれの強さもきちんと表現されていました。

特にフジワラ大道を演じた鈴木洋平さんの演技は圧巻でした。
冷酷で圧倒的な支配者でありながら、常に恐れを胸に抱え、だからこそ周囲の者に恐れている……一つ一つの台詞の重さと、あと歌う声に圧倒されました。
……ベテランの俳優さんだと思ってた。

三人のエピメテウスを演じた俳優さんたちもそれぞれ魅力的でした。
ヒロインの天音は台詞の響きが美しく、見惚れるくらいに可愛く、舞台で本当に映える女優さんでした。
吐夢はバンドのボーカルという設定もあって、歌のシーンも多かったのですが、それよりも実況動画風に言葉を発しているシーンでの振る舞いが現実味があって好きですね。
風歩は緊張すると歌ってしまうという風変わりな癖があるので、どうしてもなんじゃそれ!? と見てしまうのですが、実は3人の中で一番普通の青年だったりするので、安心して観ることができました。あ、ラーメンブロガーなので親近感を覚えますね……さすがに私はお店でPCとか出さないですが……

圧倒的な音

前作「オフィス座の怪人」で、劇団レトルト内閣のお芝居を初めて観たのですが、その時に一番圧倒されたのが、目の前でバンドが生で演奏する「音」

色々な舞台を観ていて、音にこだわっているのも色々とありますが、やはり目の前で演奏されるライブ感にはかないません

台詞のきっかけになるちょっとした音でさえも、ギター、バス、サックス、ドラムの4人が、すっと作り上げていて、そのぜいたくな「音」の使い方には感心してしまいます。

そんな生演奏にのせて、出演者たちものびのびとした声を響かせます。
フジワラDinaを演じた佐藤都輝子さんのパワフルな歌声には引き付けられました。凄い。

終演後の「ほめ育」講座

終演後には(一社)ほめ育財団の代表理事・原邦雄さんを交えてのほめ育講座。
劇中では黒ずくめの乾いた女・フジワラ白銀を演じていた福田惠さんが「劇の余韻とか大事にしたい人は帰ってもらっても」と言ってしまうくらいくだけた内容の講座でしたが、正直、「ダメ上司」の私としてはなかなか耳の痛い話でした。

お芝居の脚本を作るにあたって色々とエピソードを詰めたというのは興味深かったですね。

終演後の「ほめ育」講座も含めて、本当に素敵なお芝居でした。
次回公演は秋とのことですが、また観に行きたいなぁ……

公演名 劇団レトルト内閣 第27回本公演「エピメテウスの眼鏡」
公演期間 2018年1月26日(金)~28日(日)
場所 HEP HALL
サイト 公演案内ページ / 劇団Facebook / 劇団Twitter

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があ

大阪生まれ・育ち・勤めの雑食系公務員。 福祉職だと勘違いしている人が大多数ですが下っ端事務職。濃い顔付きから沖縄人やらトルコ人やら間違える人大多数。違う、違うんだよ~

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