訳あって今年はこの日(2月21日)が観劇始め。キャラメルボックスの「ヒトミ」です。
「ヒトミ」は1995年が初演の作品。”アコースティックシアター”と題される派手な演出は行わず登場人物の感情の動きを中心に描く、「ロック・ミュージシャンのアコースティックライヴ」(演出の成井豊さん談)のような公演です。
キャラメルボックスはどちらかというとファンタジックな作品が好きで、アコースティックシアターは苦手な私ですが、初演も再演もDVDでしか観たことがなかったので観てみたいと思い初日のサンケイホールブリーゼに行ってきました。
「ヒトミ」は、ピアノの教師のヒトミをめぐる物語。
ヒトミは交通事故で頸髄を損傷し体の自由を失い、恋人の小沢にも別れを告げる。
事故から半年したある日、大学の研究チームが開発したニューロ・ハーネスを使えば再び体を動かすことができると言われモニターとして使用することになる。
必死のリハビリで、立ち上がり、歩き、文字を書くようにまで回復するが‥
鋭い痛みを感じる物語です。
物語の着想はSFの名作「アルジャーノンに花束を」だといいます。
ヒトミは失った身体機能をハーネスによって取り戻していきますが、アルジャーノン〜とは違い、それは彼女自身がかつて持っていた能力でした。
ピアノ教師であったヒトミはハーネスで少しずつ身体を取り戻していくのですが、ピアノに触ろうとしません。そして、ハーネスに問題が発生して、彼女はその力を再び失うことが見えてきます。
そのヒトミを演じるのは實川貴美子さん。
少年少女役を演じたり、昨年の「ウルトラマリンブルー・クリスマス」では一途で芯の強い主人公の妻を演じたり、清楚で透明感のある演技が美しい女優さんです。
そんな彼女が演じるヒトミは、美しさの中に脆さが同居しており、不安、恐れ、希望…台詞に現れない感情が観ている私の心を揺さぶります。
物語の冒頭、ハーネスを着けて立ち上がるシーンから、SpiralLifeのGARDENが流れるダンスシーンは圧巻です。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=I829L5WriZE[/youtube]
そのヒトミを見つめる母親役は坂口理恵さん。坂口さんは初演のヒトミを演じており、ヒトミに注がれる感情は役を超えた何かがそこにあると感じさせてくださいます。こういうキャスティングができることが劇団を続けていることの凄さなんでしょうね。
重い題材を描いたストーリーでありながら、私が生で観て得たのは「生きろ」という強烈な感情でした。観た人一人一人に与えるものは違うかもしれませんが、絶望の中に見える希望をヒトミと自身の中に見える物を大切にしたい作品です。
サンケイホールブリーゼの公演は、もう一本の新作「あなたがここにいればよかったのに」と合わせて、2月25日まで。その後、名古屋公演を経て、3月23日まで東京のサンシャイン劇場で公開しています。
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