加藤昌史「人の前に出る仕事の人へ。」常に上機嫌であれ

人の前に出る仕事の人へ。

著者の加藤昌史さんと劇場で声を交わすようになって10年くらいになります。

上川隆也さんが以前所属していたことで有名な演劇集団キャラメルボックスの旗揚げメンで現在はプロデューサーとして活躍される加藤さんは、「上のもん出てこいっ!」と言われるよりも前に誰よりも真っ先にロビーに立ち、公演当日に台風が直撃した時には「今日は感想は書かなくて良いので気をつけてお帰りください。」と各種交通機関の運行情報と共に観客を送り出し、ホームページにTwitterにニコ生にとあらゆる手段で舞台と観客を繋ぐために走り続けている……そういう方です。

この本は、そんな加藤昌史さんがとある大学の児童教育学部の方々への講演で話した中から、「人に思いを伝え、人と気持ちを通わせるヒント」を、毎日のようにTwitterに呟いた75のツイートに解説を大幅加筆した一冊。

「常に上機嫌であれ」

の演出家・成井豊さんが劇団員にいつも話していた言葉というこの一言から、人の前に立つ人に限らず、全ての人へのエールが目一杯詰まっています。
のっけから、そんないつも上機嫌でなんかいられないよ、と言いそうになりますが「常に上機嫌であろうとし続けていること」を心がけるだけで心が軽くなるんだそうです。

取り上げられている言葉は一つ一つごく当たり前のことばかり。それでも、全部この通りにやるのは難しい。
でも、加藤さんはまえがきでこんな風に書いています。

僕は今日まで、たくさんの無茶をして、たくさんの人を傷つけ、傷つけられ、厳しい状況に置かれ、たくさんの反省をし、次に活かすべくをしながら、今日までなんとか生きてくることができました。
この本は、そんな僕の「反省文」のようなメモの中から、「人の前に出る仕事の人へ」というタイトルでツイッターに連載してきたつぶやきをまとめたものです。つまり、ここに書いていることの中には、現時点で自分でもできていないことがたくさんあります。「こうしたいと思っていること」の方が多いかもしれません。でもきっと、一生、「こうありたい」と思ったままできずに生きていくのだろうなぁ、とも思います。

いわゆる書にあたる書籍ですが、「こうあれ」ではなく「こう思って見たらどうでしょう」という視点で書かれており、読んでいるとなんとも気持ちが楽になる不思議な仕上がりの書籍です。
元になったツイートは今も連載を続けて、既に300を超える呟きをしています。その呟きをまとめたtoggeterの閲覧数は11万を超えています。

キャラメルボックスのお芝居は「人を思う気持ち」がテーマになっていますが、ロビーで働く加藤さんをはじめとするスタッフもそんな気持ちに溢れていて、職種は違っていてもいつも参考になることばかり。
もうすぐクリスマス公演が東京のサンシャイン劇場でスタートしますが、今度、関西に来られるのは年が明けてから。
早く劇場で加藤さんたちに会いたくなってきました。