「トリツカレ男」復活祭!

3月15日、待ちに待ったキャラメルボックスの2012年最初の公演「トリツカレ男」の大阪公演初日に行って参りました。
この日と昨日(3/16)は「トリツカレ男 復活祭in大阪」と題したイベントが開催されていまして……2007年の初演から4年ちょっとぶりの復活を祝うスペシャルな公演回だったわけです。

この「トリツカレ男」という作品。原作はいしいしんじさんの同名小説「トリツカレ男」なんですが、「取り憑かれ男」と書いてしまうと、どうにも、怖い小説のように思えてしまいます。ところが、実際はこの小説、とんでもなく素敵なファンタジーになっているのです。
キャラメルボックスにはお似合いのファンタジー、3月20日(祝)までの残り短い期間ですが猛烈にプッシュしたいと思います。

場所は西梅田のサンケイホールブリーゼ。思えば、昨年の春このサンケイホールブリーゼで、キャラメルボックスはロバート・A・ハインラインの名作SF「夏への扉」を世界初で舞台化していました。その後、東京公演中に東日本大震災に被災、ベテラン俳優の西川浩幸(@nishikawa0704)さんは大病を患い台詞を巧く話せない状態になってしまいました。
そんな中、劇団は被災地への公演を敢行したり必死に2011年を駆け抜けたのです。
明けて2012年、劇団が最初に選んだのがこの「トリツカレ男」でした。

ジョゼッペは、レストランのウェイター。仲間からは「トリツカレ男」と呼ばれている。彼は何かが好きになると、寝食を忘れて没頭してしまう。オペラ、探偵、昆虫採集、外国語……。次から次へと熱中し、三段跳びではなんと世界新記録を達成! そんな彼が、ある日、恋をした。相手は、外国から来た無口な少女・ペチカ。彼女は胸の中にたくさんの哀しみを抱えていた。ジュゼッペは、持てる技のすべてを駆使して、ペチカを幸せにしようとする。そして……。

2007年のクリスマスツアーとして公開されたこの作品。
一途な男ジュゼッペの恋物語なのですが、それだけではない。楽しすぎるっ! まさにお祭りのような作品です。
“やりたい作品からやる ”
震災があって、そう思うようになったとのことです。この「トリツカレ男」、そして次は東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」を再演。夏にはこれまたSFの名作「アルジャーノンに花束を」……今年もキャラメルボックスは目一杯の勢いで走り続けるようです。

さて、この日の復活祭&大阪初日。
色々なイベントがあったのですが、一番嬉しかったのは出演者からのプレゼント。
加藤タカさん(@taka_honesuta)さんが描く初演の時のパンフレットに使われていた絵(加藤さんの描く絵が好きなんですよねぇ)の栞をネズミのトト役の金子貴俊さん(@kanekotakatoshi)さんから頂きました!

残念ながら、DVDの抽選には外れてしまいましたが、初演のパンフレットを持参してトーク&フォトブックを頂いたり、終演後の客席を通っての出演者の退場など、本当に楽しませて頂きました。

初演を観ていることもあって、ストーリーは知っていますし、面白さはよく分かっているのですが、ビックリしたのがやはり客演のお二人の演技。

ネズミのトト役の金子貴俊さん。初演は劇団の看板俳優の一人岡田達也(@okadatatsuya213)さんが演じていて、「これ以上のトトはいない!」と思っていたのですが、金子貴俊さんは岡田さんの演技と共通する処は共通していながら、明らかに主人公のジュゼッペの距離感が近づいています
トトはジュゼッペの親友という位置づけなんですが、初演がちょっと生意気な飼いネズミといった感じなのに、金子さんの演じるトトは本当に親友に見えてきます。
「ぼくはね、ジュゼッペ、きみのことが大好きさ。」
そんな言葉一つでジュゼッペとの仲の良さが見えてきて、本当にスゴい! と思ってしまいました。

ヒロインのペチカ役の星野真里さん。初演はこちらも劇団でヒロイン役と言えばという女優の一人岡内美貴子(@okamiki1117)さんが演じていたんですが、岡内さんと明らかに違っていてビックリしたのが「イタリアに住んでいるイタリア語が不得意なロシア少女」の演技。
もちろん台詞は日本語で話しているのですが、「外国語を話せない」登場人物の話す片言の言葉のアプローチが違うのです。岡内さんはたどたどしさの中に明らかに間違った言葉を交ぜたりして(それが笑いにつながるようにしてたりして面白いのですが)表現していたのですが、星野さんは自然な言葉づかいなのにどう聞いても片言で話す外国人なのです。言葉が話せないが為に内気になってしまう少女。岡内さんよりも幼く見えることもあって……可愛すぎるとジュゼッペでなくともトリツカレてしまうこと請け合いです。

もちろん、主人公ジュゼッペ役の畑中智行さん、ジュゼッペの姉・アンナ役の坂口理恵さん、カフェのオーナー・フィオリーナ役の岡田さつきさん、ペチカの恩師・タタン役の西川浩幸さん、ナルシストな新聞記者・レオナルド役の三浦剛(@tsuyoshi18)さん、カフェのウェイター・マルコ役の左東広之(@sasasyu)さんなど初演と同じ役で出演される役者さんの演技はパワーアップしています。

そして、忘れてはならない1匹と1グループ(笑)

インコのニーナ役の渡邊安理(@anrin_rin)さんは、ネズミのトト役と同様に動物を演じる難しい役なんですが、もうね……賑やかで華やかなインコにしか見えないんです。
可愛くて、元気で、そしてたまにウザくて、こんなインコなら友達になって欲しい!
いや、ウチの#5girl(→こちらを参照ください)だからという訳ではなく、ダンスシーンはもう彼女に釘付けです。
でも、
「ごめんね。私、鳥類とハツカネズミ以外はお断りなの。」
なんですよねぇ。

そして最後に忘れてはならないのは、ギャングのツイスト親分とその一味。
ツイスト親分ことロミオ役の阿部丈二さんがもうやりたい放題。
子分のセルジオ役の筒井俊作(@tyuttyu221)さん、アントニオ役の小多田直樹さんは初演時も同じ役で好き放題やっていたのですが、今回は登場するだけで場内に爆笑の渦を呼んでいます。
昨年「ヒア・カムズ・ザ・サン」「流星ワゴン」の主人公役でしか阿部丈二さんの演技を観ていなければ絶対に驚くと思うと思います。
本当に今一番、注目すべき俳優さんです。

自分の好きなものについて話すとき、人は目を輝かせるということ。「○○が好きだ」という気持ちは、人を活性化する。元気にするのです。本人たちだけでなく、話を聞いている人たちまで。

「トリツカレ男」はキャラメルボックスのそんな思いが目一杯詰まった舞台です。
元気一杯のダンス、凄すぎて楽しい仮面際の大道芸、ジュゼッペの一途すぎる思い……観ればどうやっても元気になってしまう舞台です。
興味のある方はぜひ火曜日の千秋楽までに。