『生きた建築ミュージアムフェスティバル』、通称「イケフェス大阪」が3年ぶりにリアル開催(昨年、一昨年はオンラインのみ)されています。
大阪の有名な建築物を秋の週末に一度に公開して、普段は入ることができないところも見ることができる国内最大級の建築イベントです。
建築物を一般に無料公開するイベントは、1992年にロンドンで始まった『Open House London』の主催団体『Open City』を中心とした国際団体『Open House Worldwide』が世界各地で行っており、大阪は日本の都市で唯一この団体に加盟しています。
今年は、TVドラマ「名建築で昼食を」の大阪編の放送もあったこともあり、注目度もアップ。事前申込するそれぞれの建物のガイドツアーは1つを除いて外れてしまいましたが、申込無しでも観ることができる建物がいくつもあるので、今日は北浜を中心に歩いてみました。
北浜のレトロ建築から大阪中央公会堂まで
北浜レトロビルヂング
煉瓦造りの2階建て。
ブリティッシュティールームとして、いつも女性客で一杯の『北浜レトロ』。紅茶好きには知られたお店ですが、イケフェスではオープン前の9:30~10:00のみの無料公開でした。
「普段の営業時にお越しいただいた方がゆっくり観られるかも」と店員の方が言っていましたが、いやいや、お客さんが一杯でいつもは調度やトイレは写真も撮れないですからこういう機会は貴重ですよ。
可愛いと気品が同居するスペース。普段は乙女だらけの空間に、「乙女建築」を愛するおじさんたちもメロメロでした。
北浜長屋
北浜レトロに続いて、同じくオープン前のみの公開の『北浜長屋』へ。
大正元年(1912年)に建てられた2軒長屋は、大きなビルに挟まれながら平成28年(2016年)に店舗として再生されました。
現在は、カフェの『EMBANKMENT Cafe』とカレー店『OXYMORON北浜』が営業しています。
『OXYMORON北浜』の2階を見学させていただきましたが、昔の壁や屋根が残っているのか趣深いなんとも落ち着きます。
土佐堀川を望む北側の座席は、中之島のバラ園が良く見えます。
窓枠越しの風景はまるで額縁に入っているかのようで、水のある大阪の美しさを感じられます。
青山ビル
蔦で覆われた外観が特徴的な『青山ビル』
この蔦は甲子園球場から株分けされたもの。現在もテナントビルとして、オムライスで有名な『グリル北極星』などが営業しています。
螺旋階段の手すりはねじり細工でできているらしく、滑らかで美しい造形です。
ステンドグラスやガラス窓から差し込む光も柔らかく、外と中では世界が異なって見えてきます。
伏見町 旧宗田家住居
2018年に改築された古民家。現在は日本精工硝子株式会社が運営するガラス食器を扱う店舗、ギャラリーです。
母屋の地下にはかつて防空壕があったのですが、その防空壕にガラスを敷いて、和室から見られるようにしています。
ステンドグラスとガラス容器を組み合わせた装飾も素敵です。
元々の大黒柱と、改築時に繋いだ柱を綺麗に見ることができます。こういった所に気づけるのもイケフェスの楽しみ。
船場ビルディング
外観だけみると雑居ビル。中に入ると、スペインの路地に紛れ込んだかような「パティオ(中庭)」が広がる『船場ビルディング』
初めてここを訪れたとき、そんな予定は一切無いのにも関わらず、「このビルに事務所を構えてみたい、お店を出してみたい」なんて思いました。
元々はオフィスと住居を兼ね備えたビルで、玄関ホールからパティオはスロープで床には木レンガが敷き詰められています。トラックや荷馬車を引き込むときの消音効果があったとのこと。機能的なビルだったんですね。
普段は入ることができない屋上庭園は、住居として使われていたビルらしさが残っていて大好きです。
大阪市中央公会堂
この日の最後は大阪市のシンボルと言っても良い『大阪市立中央公会堂』へ。
普段はコンサートや式典などのイベントで使用されていてゆっくり見ることができない大集会室と有料ガイドツアーで見学できる特別室を見ることができます。
2002年に改修され、西日本で初めて公会堂建築物として国の重要文化財となりました。
この大集会室も含め、公会堂内の各部屋は結構格安で借りることができます。一度借りてイベントをしてみたいなぁと思っていますが、人気の施設なのでなかなか機会が訪れません。
特別室のステンドグラス。外から見るのと違って細部を近くから見られるので、本当におすすめ。
窓越しに高速道路やビルが見え、見下ろすと中之島公園と水辺の風景と対比的な都市風景の美しさを味わえます。
室内に目を移すと天井や壁に日本神話が描かれています。
豪華な調度、来賓の待合としても使われるほどこの美しさにうっとりとします。
館内でどこを切り取っても絵になる建物で、正に名建築ですね。
都市には都市の魅力が生き続ける
古い建物、リノベーションした建物は絵になります。
大阪市内でも古くに建てられた建物がリノベーションされ、カフェや雑貨店、美容室など生まれ変わっている風景が見られます。
私が暮らすまちのすぐそばにも中崎町がそんな地域になっていますが、そうやって再生した地域に人が集まり、元気な地域になっていくのは嬉しいです。
それは特別な場所、特別な風景に思えるかもしれません。
ですが、本当に注目したいのは大阪という都市が持つ豊かさです。
今日歩いた建築物は古い建物、再生した建物でした。ですが、この記事のカバーフォトにした『β本町橋』は昨年できたばかりの建物です。
『なんばパークス』『梅田スカイビル』『インテックス大阪』……平成に建てられた近代建築物も、イケフェスでは堂々と公開しています。
この『生きた建築ミュージアムフェスティバル』の面白いのは、こういった比較的新しい建物も含まれていることです。
大阪の名建築は歴史的な建物だけじゃありません。
古くなった建物は生まれ変わり、新しい建物が日々生まれています。そして、そのそれぞれが混ざり合い、ミャクミャクと今の大阪、未来の大阪を作っています。
2025年の大阪万博のテーマは「REBORN」ですが、イケフェスに参加していると、なんだ大阪ってスゴいやん、大阪という都市の魅力がこれからも生まれ続けるんだろうなぁと感じました。
さて、明日もイケフェス。明日は、少し現代的な建物を見てみようと思います。
皆さんも、ちょっと大阪の都市としての魅力を感じてみませんか。
[blogcard url=https://ikenchiku.jp/ikefes/]
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