昨年の夏、縁があって尼崎市と生駒市のサマセミで、「お役所ちらしから学ぶ、伝わるちらしづくり」という講座を行わせていただきました。
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これが思った以上に好評で、受講していただいた方からは「教えてもらったこと意識しながら作るようになった」とか、同業者以外の方でも「商店街のちらし、こんな感じで作ったんですけど」と見せていただいたりと、私自身が思っていたよりも需要があることが分かりました。
サマセミは50分という時間の中なので、どうしても「一点突破!」な内容で、細部はお伝えできないということがあったのでブログにまとめようと思っていたんですが、ちょっと延び延びになってました。
ようやくタイトルも決まり(そこかっ!ってツッコミ待ち)、連載型で記事を書いてみようと思います。
第0回は、サマセミでも取り上げた
ということ。
役所のつくるちらしは分かりにくい
私の勤める区役所には、様々な部署から送りつけられ……送ってきたちらしが所狭しと置かれています。
区民情報コーナーのちらしスタンドでは間に合わず、各課の窓口カウンターにもどっさりと。
区役所に送りつけ……送ってくるからには「市民の方に知ってもらいたい」という意図なんでしょうが、注目も浴びず、取っていかれもしないものが大半です。
送った側は、ちらしを○部作った、色んな所で配架してもらったというだけで満足かもしれませんが、取っていかれないちらしを置いている側からしたらたまったもんじゃありません。
例えば、こんなちらし。教育委員会が公立中学校のクラブ活動の指導員を募集した見ての通り手作り感満載のちらしですが、ツッコミをいれずにいられなくくらい「分かりにくい」ちらしになっています。
・文字サイズや太さ、配置がバラバラでどこから読めばよいか分からない
・同内容の不必要な繰り返し(「ホームページで確認」の表記、URLの直表記、○○で検索、QRコードなど)
・意図が感じられないいらすとやのイラストと背景の配置
デザインが苦手な職員が頑張って作った、そしてその職員が作らなきゃならなくなった事情も、こんなちらしになったことも同業者なのでなんとなく分かります。
役所のつくるちらしの原資は「税金」です。ちらしを作ることが目的ではありません。
職員が、あなたが、ちらしをデザインしなきゃいけないなら、「伝わる」ちらしを作ることができるようになることがきっと必要です。
デザインは料理
と言われても、「デザインとか専門的に学んだことがない、難しい」というかもしれません。
そんな方にお伝えしたいのが「デザインは料理」みたいなものということ。
人は食べないと生きていけません。採った野菜を丸かじりってこともあるでしょうが、食べるためには素材を料理して食べやすくして食べます。
料理しなくても良いけど、料理したらおいしく食べられます。他人に振る舞うにも料理技術は欠かせません。
ちらしに限らず「デザインする」ということは料理を作るようなものだと思っていて、そう考えるとプロの料理人じゃなくても、(そこそこ)おいしい料理を作ることはできるはず。
例えば、こんなこと考えてみませんか?
食べてもらう(=伝える)相手が違えば、料理(=デザイン)も違う
自分が辛い物が好きだからといって、彼氏・彼女が辛い物が苦手なら、辛い料理を作りません。料理(=デザイン)は食べる人にあわせないといけません。
例にあげたちらしだと、食べる相手は「中学校のクラブ活動の先生になりたい(なろうと思っている)人」です。
太字で飾り罫で囲まれた「熱意のある方をお待ちしています!」という言葉よりも、給与額や雇用条件などを知りたいのではないでしょうか?
食材(=情報)を増やせば味(=伝えること)が濁る(=伝わらない)
伝えたいことがたくさんある。分かります。
でも、ほとんどの料理にはメインになる食材があって、その食材をおいしくたべてもらうために色々な技法を用います。それにお皿(ちらしの紙面)のサイズは限られています、なんでもかんでも盛っちゃあお皿からこぼれてしまいます。
最上級のキャビア、フォアグラ、トリュフが手に入ったからといって、鍋に全部放り込んでグツグツと煮てもおいしく食べられません。闇鍋はおいしいくなるとは限りません(たまに意外な組み合わせでおいしい物ができたりするのもデザインに似てる気がします)。
もしもおいしく食べられるとしたら、その料理人(デザイナー)に確固たる調理(デザイン)技術があるからです。
「登録申請から部活動指導員採用までの流れ」をフロー図で掲載する必要はあったでしょうか?
おうち料理(=内部資料)そのままじゃ、お客は食べてくれない(=見ない)
役所にありがちなのが、国や県が作った資料や法律、条例、要綱・要領、議会への説明資料など、一度作った(作られた)言葉や言い回しをコピペして使い回すこと。
生活保護ケースワーカーだった私に「セイホ」と言えば「生活保護」ですが、一般的に思い出すのは「生命保険」じゃないでしょうか?
当たり前に使っている言葉が本当に一般的な言葉になっているか見直す。色や形、配置の仕方など見せ方にもこだわらないと、伝えたい相手に見てももらえないかもしれません。
「映え」はムダじゃないんです。
「部活動指導員」の説明をちらしにのせる必要はありますか? 「クラブの先生(部活動指導員)」で事足りませんか?
いらすとやのイラストを散らす必要は?
デザインの「クックパッド」があればいいな
料理レシピサイト「クックパッド」のような、デザインレシピサイトがあったらいいな、なんて思ったりします。
プロの料理人(デザイナー)じゃなくて、私のようなアマチュア料理人(デザイナー)がおすすめのレシピを紹介して、他の人がそれを真似して作ってみる、アレンジしてみる、おいしかったと評価してみる。
デザインテンプレートを配布しているサイトはたくさんありますが、どうやって作っているの? 自分も作ってみたい、作ってみたら自分にもできた(←ココが大事)。そんなことができたらいいなと思います。
次回からは、調理器具(ツール)、技法(テクニック)、レシピ(実際のちらし改善など)を週1くらいで書きたいです。
デザイン食堂 淀。父がやっていた大衆食堂のように、私はおいしいデザインを作れればいいな。
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